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【一生、お湯に浸かれるオットセイ‼️】【統制環境とキャリア27】

「私、ほんとうに、サッパリ分からないの。だから、まずは直接、このタイミングで会っておきたかったのよ。
これもさっき、言ったわね。
つまり、そうね、何度も繰り返しになっちゃうけど、、、」

『そうですね。3回目ですね。
同じ話を、それだけ丁寧に、しかも、毎回、微妙にニュアンスを変えて話せるのは、才能ですよ』

「、、、それは、褒めてくださってるのかしら?」

『褒めてる?
どうでしょうね。事実、かな』

「事実、、、
ふーん、じゃあ、褒めても、まぁその、貶してもいない、と?」

『俺、あんまり、そういう形式的なコトとか、表明的な会話とか、無理なんで。だから、逆に気を遣われるとか、ホント、無駄なんで。
でね、ウチの仕事、佐久間さんも、どこまで分かってたのか、俺も分かりませんよ。だって説明してませんから、殆ど、いつも。
何がほしいのか、どういう情報がほしいのか、いつまでに、どういう形で、とオーダーがあれば、それを出します。だから、大丈夫ですよ』

「そうなの?
でも、そうかも。だから、佐久間は、なんていうんだろう、、、
コバヤシ社長に対して、絶対の信頼を置いてたんです。
アイツのやってるコトは正直、分からないけど、オーダー通りに的確な情報をくれる。それを使うだけなんだよ、とよく言ってました」

『そうね。
まぁ、その使い方が、ほんとうは大事なんだけどね。
でさ、アンタさ、社長として、どうやって佐久間さんの代わりをやろうとしてるの?』

「、、、」

『ダメじゃん。
そこは、サラッと、私は、って言えないと。
そんなんじゃ、そっちの会計士とか弁護士様の、言いなりになっちゃうよ。アイツら、自分の知識だけの世界から、アレコレと言ってくる。実際に分かってないのに、色々、細かいコトを指摘したり、ダメです、こうなってます、とか、なんで変えるんですか、やめましょう、とか平気で言ってくる。
そんな、
偉そうな外部の役員たちと、さぁ、どうやって、これから、やり合ってくの?』

「、、、ふふふ」

『何?
何か、おかしなコト、言った、俺?』

「いえ。
その言葉、今、コバヤシさんがおっしゃったコトをね、先日、他の方にも言われたんです。
そうね、表現の仕方は全く違うし、言葉遣いもハッキリ言って、コバヤシさんの言葉は社会人として不適切だけど、うん、おんなじコト。
りんごをアップルって呼ぶみたいに、熱帯雨林のコトをアマゾンって呼んじゃうみたいに。
表現は違うし、その強さも角度もそれぞれだけど、大体、同じコトを言ってる。
そうね、まだまだ私、成長できるわ」

『、、、成長、してくださいね、水嶋さん。
俺たちの会社に、ちゃんと毎月、あんだけの高額のカネを落としてくれるために』

「そうね。
でも、別にコバヤシさんじゃない別の会社で、もっと安くて、それでいて、効果的な情報をくれて、ちゃんと作業をしてくれる会社や専門家がいたら、そちらにお任せします。
ですから、これまでの通り、こちらのオーダー通りに、キチンと的確な情報を、よろしくお願いいたします、、、なんてね。
こういうコト?」

『そう、そういうコトだよ。
なんだよ、アンタ、肝が座ってるね。佐久間さんも安心だな』

「私ね、昔、専業主婦だったの。
イイ?
こんな私の過去の話、聞いてもらっちゃって?」

『大事な取引先の次期社長の過去。
聞かない理由がどこに?』

「あのね、PTAって、知ってる?
親と先生の集まりね、簡単に言えば。
その会長をやったコトがあってね。その時、凄く失敗ばかりで、だって、そんなの初めてだし、やったコトもないし。
後ろ向きでなっちゃったから、自分で立候補、したくてしたんじゃないの。表向きは、その選考会みたいな、なんて言ったかしら、、、
ゴセン、そう、ゴセン会」

『互いに選ぶ?』

「そう、それ。
その場所で、誰もがやりたがらなかったのよ、会長なんて。
別の年代では、元々リーダーみたいな方とか、頼られてる方が自然となるのよ、その互選の中で。
互選会の前にもう、決まってる場合もあるかな。
でも、私が会長になっちゃった時は、ほんとうに地獄みたいな時間が流れて、、、
で、もう、これ以上耐えられなくなって、私、やります、って、立ち上がって言っちゃったの。
もう、あんな地獄みたいな時間、逃げたしたくて」

『皆を救ったヒーローですね?』

「、、、ヒロイン、よ」

『まぁ、そこはイイじゃん』

「そうね。
で、一年間、周りに助けられて、勿論、真剣に取り組んだのよ。
一応、私、人事の人間だから、どのヒトがどんな役割に強いか、どうお願いしたら動いてくれるか、とか、こういう話し方のヒトには、どういう伝え方をすればスムーズか、とか、そんなコトばっかり考えてたから、皆にお願いばっかりして、何とかやりきったの。
そうそう、ある時ね、トラブルがあったの。
始めは誰も反対なんかしてなくて、拗れるような話じゃなかったんだけど、やっぱり学校は難しくて、教育委員会とか、校長先生とか、地域の見守り役のお偉いさんとか、全員が違うコトを求めてきて。
運動会で、子供たちが自分たちで考えた花火を打ち上げるコトになってたの。
それは、子どもたちが、自分たちの親や先生に向けて、、、実際には勿論、上に向けて、空に向かって、なんだけど」

『それは分かってますよ』

「そう、良かった。
で、直前になって、やっぱり危険だからダメって。
私たちは、PTAの役員たちは事前に聞いてたから、それが凄く面白いでしょ。
私たちも親だから、私たちにもサプライズにしなきゃならないのに。でも嬉しいじゃない、そんなの。
子供たちが自分たちで企画して、それをダメなんて、悔しいじゃない?
私は絶対にやらせたかったし、だから副校長先生と言い合いになっちゃって。
そしたら、普段、全然、発言もしないし、黙って淡々と作業をこなしてるだけの美村さんが急に、大きな声で言ったの。
危険なんて、どこにでもあるのよ、だから、それを見護るのが、大人の役目でしょ。止めるのが大人の役目なら、どうやって子供たちは失敗すればイイんですか?
私、ビックリしちゃって。
美村さんがあんなに大きな声を出すなんて、、、
でも、言ったコトは、私にも響いちゃって、凄く。
止めるタイプだったのよね、私は。
失敗をさせない親だったのよ。
ウチのオットセイ、、、夫のことね。そのオットセイは、イケイケタイプで、多少のミスとか、失敗とか、全然気にしないの。日本語も正確に話せないし、言葉をちゃんと聞き取れないのよね。
でも、私は、少し先のコトを見ちゃって、ダメそうなら、諦めさせる人間だったの。
だから、そうね。美村さんのその言葉が私の中に今も響いてるのよね、、、」

『、、、終わり?
スンゴイ長い話でしたね。
結論は?』

「結論?」

『専業主婦の話も、トラブルの話も、そのミムラさんの大きな声も、だから何?
花火は打ち上がったの?』

「あぁ、そうね。
その美村さんの大声と、その花火の色と音と匂い、ありありと感じるの。今もずっと。
だから、私は成長しますので、社長として、会社を、皆を引っ張っていきます。
よろしくお願いいたします。以上」

『、、、そのオットセイの気持ちが痛いほど、分かるし、、、いや。
分からないな。分かりたくもない。俺はゴメンだな』

「私の夫の気持ち?
教えてください、何ですか?どういう気持ち?」

『だから、分からないんだけどね、、、
うーんとね、、、
言葉も何もかも分からないフリをして、全部、マルっと包み込んでくれる、そうだな、、、
温泉は好きですか?』

「温泉?
大好きですよ。何ですか、いきなり」

『じゃあ、どのくらい、お湯に浸かります?』

「そうね、せいぜい10分とか、15分くらい?」

『熱めのお湯なら?』

「慣れてくるけど、上気せるのも早くて、そうね、温度にもよるけど、そんなに長く入っているられないわね」

『気持ち良くもならない、お湯から上がって、結局、血流も良くならないし、でも湯の温度は熱すぎたり冷たかったり。しかも効能も感じられない。そんな地獄のような温泉もどきの長風呂を喜んで、そのオットセイは、何時間でも、もしかしたら、一生、入ってられる。
そんな感じで、アンタの話を一生、聴くコトに決めたから、ずっと付き合ってくれる。
そういう奴なんだと思うよ』

「、、、もう、何?
サッパリ、スッカリ分からないわ‼️」

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