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《余儀なくよぎる考えに》【統制環境とキャリア⑪】

『フレームワークというのは、厄介ですね。凄く、伝えるのが難しい。誤解を与える前提で話しますね』

その専門家は、そういう前置きで語り始めた。

『捉え方とか、考え方を、一般的には指すんです。でも、ビジネスの話の時は、戦略とか手法を、フレームワークと呼んだりするんです。だから、ただの枠組みであるはずの考え方まで、そういう見え方がするんですね。一部の方には、また新しい手法だな、みたいに、映るのも仕方ありません』

諦めてるんですか、と問うてみた。

『いえ、そうではないんです。ただ、そうだな、諦めというよりも、覚悟、ですね。思うように伝わらず、意図しない形で受け取られるコトもあるけど、それはそれでイイ、と割り切ってます。
こんちくしょー、とか胸の内に隠しながらね。それも、私の”内部統制”ですよ』

ジョークかな?

『以前、といっても、だいぶ前のコトです。息子とね、話したコトがあって。フレームワークについて。その時、行き詰まってたんで、何かキッカケが欲しくて。それで、息子、何歳だったかな。コトバがまだ、上手く扱えない頃です。やっぱり難しいんですよ。概念というのは、コトバで構成されていて、そのコトバが足りないと上手く表現できないし、使えないんですね、概念が。だから、認識もできないし、当然、理解できない。相手も、相手の難しさも。どこが難しいのか、どうやって伝えればイイのか、分からない。
でもね、面白いんです。凄く面白い。その辺りを探るのは、ワクワクします』

難しさを楽しんでるんですか、とまた問うてみた。

『そうなりますね。娯楽の領域かもしれません。私にとっては、困難は機会です。チャンス。未知との遭遇みたいに、分からないコトがあると、興奮しちゃうんです。加えて、話してる相手が、私の言ってるコトを分からない、という状況も、刺激的なんですよ。何故だろう、なんで分からないんだろう、という、どう言えばイイのかな、うーん、、、』

少し考えるのかな、と待とうとしたら、すぐ答えが出たらしい。

『もう既に自分の手にある何かが、また輝き出すんです。また、違うモノになった感じで。違うモノ、新しいモノに変わる気がして。で、また自分の手から離れるんです。持ってなんか、ないんだ。また捕まえなきゃ、掴まなきゃ、って気合いが入るというか、、、
分かりますか⁉️』

サッパリ分からない、と言おうとしたが、ふと、それはまた、この専門家の思う壺なのだ、という考えが余儀なく、よぎった。

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