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《ドン・キングの置き土産》【キャリア・セルフドック20】

『面白いんですよ、ほんとうに。
凄くよく出来てる。偉そうに言いますけど、よく創り込まれてる。
だから、うーん、抜け目がない?
適度にかわしてるんです。避けてる、かな?』

「そうだな、上手い。
絶対的なモノでなく、相対的なモノ、流動的な、可変のモノ、という提出、提案。
でも、そうだよね、みたいな納得感」

『でも、上手くいかないんです、それが。
演繹法の好まれる世界で、疎まれる。
結論は何だ、とか、で、どうすればイイのか、提示してくれ、と』

「答えが欲しい愚かなヒト達が文句を言う」

「答えは、自分たちで創る、決める、なんです。だって、”内部統制”だから」

『外部に答えらしきモノを求めてる時点で、、、
あんまり言うとさ、無駄に影響を及ぼすんだけど、、、感覚的には、ダメだわ、無理』

「、、、僕はそれで何度も失敗してますし、もう、諦めてます。仕方ないんです。答えが欲しいんです。それで、日本人は強い。答えが、、、明確な指示や具体的な方法を与えられると、俄然、能力を発揮する。
それに沿わないヒト、つまり、、、コバヤシさんのような厄介者は隅に追いやられる、とかね」

「それは、アンタの話だろ、ヤギさん。
大変だったんだろうな。こんなコト、伝えようなんて、、、」

『お陰で、強くなれたかなぁ、、、
モノゴトを真っ直ぐに視るコトは、元々苦手でしたけど、視るコト自体の方法というか、向き合い方を学びましたね』

「、、、」

『どうしました?』

「演繹法の罠、の話はしたっけ?」

『、、、私は聞いてないですね、多分』

「オレの会社はさ、データ屋でしょ。
求められた結論を導くための情報も提供するの。
適切なデータを集めて、適切な情報に加工して、適切な説明に使ってもらう。それが仕事。
でね、ウチは優秀だから、要求があれば、それを出す。詳しく要件を設定されればされるほど、精緻な情報になる。
そして、それは高く売れる」

『、、、業務の内容は詳しく聞いてませんので分かりませんが、仕組みは分かります』

「演繹法の罠を、創ってる。
こうだから、こう。それで、こうだから、こうなって、こうなる。
三段論法とか、推理だよね。
佐久間さんみたいに、自分の会社のために、事業のために、それを使ってるのは、当たり前で。
でもさ、間違いも起こるし、、、間違った誘導も始まる。
意図してれば、まだイイ。問題は、意図しない誘導や間違い。誰も喜ばない結論が色んな場所で、大量発生してる。
それに加担してる意識はあるけど、一方で、俺も諦めてる。
だから俺の会社は高いし、誇りを持って、金銭をいただいてる」

『抽象的な話、ですね。
諦めて、事業を展開してるんですね』

「そうだね。
だから、ウチのスタッフには、感情を持ち込ませない。気持ちとか、想いとか、そういうソフトなモノは仕事に持ち込ませない」

『だから、面接、採用が大事になる』

「そう。だって、自分たちの作業やアウトプットがどう使われて、どういう影響があるとか出るとか、考えてたら仕事にならない。
目の前の数字や文字をどれだけ要求に応えるために、効率的に効果的に抽出して、加工して、提出できるか。
それだけに集中できる人材を探して、見つけて、雇って、死ぬまで離さない。
そういうコト」

『つまり、スタッフが無駄に結果責任を負わないような仕組みで、能力を最大限ハッキリしてもらう。
そういうコトですね』

「、、、ヒトはさ、感情の生き物だろ。
感情がなければ、ほんとうにツマラナイ。一喜一憂して、色んなコトを体験して、揺れ動いて、生きて、泣いて、死んでいく。
それは仕方ない。
でも、それと切り分けて、俺は仕事をさせるし、そうやって活躍してもらう。
高い給料も、長く働けるような環境も、刺激的な役割も全部、用意する。
容易なコトじゃなかったけど、ようやく回り出してる、、、と思ってた。
まだ、具体的な問題も課題もない。でも、おそらく、この先、躓く。今のやり方は続かない。続けられなくなる。
それは、分かる」

『勘、ですかね』

「そうだなぁ、勘。
説明ができないけど、なんかもう、あるんだよ」

『だから、私が呼ばれた?』

「そう。
そして、何も相談も、一言も何も言ってないけど、佐久間さんは、ヤギさんを連れてきた」

『そういうタイミングだったんですね』

「そう、そういうタイミングだった」

『そうですね。そういう丁度良いタイミングで、私が登場した。有難い話です、ほんとうに』

「佐久間の親父の置き土産だな、ヤギさんは」

『そうなりますね。
それで、、、そうですね。統制環境の話ですが、、、
先ほどの人材の話、、、原則の4と5です。それに、コバヤシさんが全員の評価をしてたり、直接の報告経路で業務を回してるのは、原則3です。
つまり、KY企画の”統制環境”は、原則通りにデザインされている、というコトになります』

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