《俺たちの話は長くて意味がある》【統制環境とキャリア31】
『だから、アンタのその言い方だと、よく分かんなくなるの、むしろ。
あのね、人的資本、なんて、そんなの、当たり前すぎて、こっちが恥ずかしくなるようなコト、偉そうに言うのが腹立つ、、、
そういう偉そうに言うのが原辰徳、なんつって?』
「、、、そうですよね。そうなんです。
最後のは余計でしたけど、そんな、会社として当たり前すぎて、経営者とか人事とか、そんな当然のコトを、これまでやってこなかったの、というくらいに恥ずかしくなるコトを、今、国を挙げて施策としてやろうとしてるんです。
おっしゃる通りなんですよ、ほんとうに」
『おいおい、なんだよ、素直じゃねぇか』
「素直?
素直、って他者を馬鹿にしてるコトバ、ですよね。相手が自分の言うコトを、そのまま採れば、素直、そうじゃなければ、素直じゃない。
そりゃ、素直がイイに決まってます。自分に自信のないヒトは」
『、、、素直じゃないなぁ、アンタも』
「そうですね。私は素直、ではないですし、そんなのになりたくないですね。
言われた通りになんて僕は、できませんし、やりたくないんですよ、納得できないコトは。
目的が明確なら、それは僕自身のではなく、相手の目的や組織ので構わないんです、、、
むしろ、自分の目的なんて殆どないんで、誰かの目的を達成するためになら、僕の頭で考えて、最適な方法を提案したり、すぐに動きます」
『だから、アンタは誤解されるし、疎まれる。
疎まれてきたし、、、常に横道に逸れて、逸れて、ここまで来ちゃった』
「、、、そうですよ。
そんな横道、横道の選択の連続で、こんな、会社兼自宅のマンションの一室まで、辿り着いちゃいましたよ」
『良かったね。ここに来れて』
「、、、それはどうかな?
良かった、なんて、簡単に判断できないし、すぐにそんなの変わるし、、、
むしろ、コバヤシさんのような社長は、面倒すぎて、手に負えない」
『そう。だから、アンタみたいな変態じゃなきゃ、ここまで、来れない。
この部屋まで辿り着けるのは、、、
この社長室に入れるのは、相当な厄介者か、物好きか、空気を読めない奴だけ。
そう、アンタは合格だよ』
「、、、あんまり嬉しくない合格。
私はこれまでの人生で、様々な合格を得てきましたけど、そんな合格は誰も興味がないでしょうね」
『だから、イイんだよ。
俺の許可という、俺だけが与えられる合格だから、意味がある。狭き門だよ』
「全く表情のない門番もいますしね」
『そう。先生がまず通さないから。でも、辺な奴ばっかり通す。変な奴で、端っこにいるような、隅っこに潜んでるような、そんな辺の奴ばっかり。
ヤギさんみたいな、空気なんて、どうでも良くて、それこそ、目的のためなら手段を、厳選に厳選を重ねて、結果、相手の望むモノをハズすような馬鹿な奴しか、入れない』
「、、、」
『話がやたら長くて、変な喩えとかバンバン出てきて、説明が回りくどくて、途中で皆が興味をなくすくらいだけど、ちゃんと聴いてないと、、、
積極的に耳を傾けてないと、ドンドン振り落とすような、そういう話し方は、俺好みだね』
「、、、ありがとうございます」
『褒めてないよ。むしろ、貶してるし、やめた方がアンタのためだし、これはダメ出し。
ダメ押し、かな?
俺が許しても、世間は許さないからね、そんなの』
「、、、だいぶ、許されてきませんでしたね」
『そうだろ。俺は特殊なんだよ。話が長いのとかイライラするし。
そうだ、アンタも世話になってる、、、アンタも世話してる、の方が適切かな、、、水嶋さんもそう。
話が長くて、何を言いたいのか、本人も分からなくなって、突然終わる。
公開当時はあんまりヒットしなくて、後々、時間が経って絶賛されるような名作映画みたいな話し方。味わい、とか、雰囲気、なんだろうな。
分かりやすいメッセージとか、とっつきやすいキャッチーなキャラクターとか、そういうのはなくて。
背景にある想いみたいなモノを、俺は聴くからね』
「コバヤシさんは、そういう映画が好きなんですか?」
『全然。映画はハリウッドが最高だよ。トップガンが去年の一番だったよ。小難しいヨーロッパの映画とか、すぐ寝ちゃうし。
あくまで、俺が好きなのは、ヒトの、沢山の想いが詰まって、その想いのせいでコトバも重くなって、だから、全然先に進まなかったり、脱線したりして、長くなっちゃうヒトの話』