障害福祉支援員が『ウ・ヨンウ』を見た感想
Netflixで公開中の韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」を第6話まで見た。(普段ドラマを観るペースが遅いもんで….ちなみに現在12話まで公開中)
私は普段福祉系の企業で障害のある方の支援の仕事をしているので、「自閉症スペクトラムの主人公」という設定には、はいネトフリ最高!ついに時代が追いついた!と思った。
日本だと発達障害をオープンにしている主人公ってほぼ見たことなかったので。(『僕と彼女と彼女の生きる道』の草彅くんの役が自閉症だったかも….)
6話までの感想としては、まず「ウ・ヨンウ役のパク・ウンビンちゃん、自閉症スペクトラムの人にみられる身振りをめちゃめちゃ勉強したんじゃないか」と思った。
目線の持って行き方、抑揚をつけずフラットな話し方、クジラの話になると途端にキラキラする目…どの部分を見ても特徴をよく押さえているなあと思う。(※自閉症スペクトラムの全ての方に当てはまるわけではありません)
そしたら彼女、こう語っていました。
自閉症スペクトラムの特性について
ヨンウにも見られる特徴は「視線が合いづらい」「身振りをまねする」「おうむ返し」「感情の共有が苦手」「こだわりが強い」という点。
クジラが大好きなヨンウはハンバダ(職場)で唯一クジラの話を聞いてくれるイ・ジュノに懐くんだけど、これ割とあるあるかもしれない。
好きなことへの熱量が強いあまりに超特急で話す人が多くて、職場だと煙たがられる場合もある。だからニコニコ聞いてくれる人の存在って貴重。
ハンバダにはジュノや大学から同期のスヨンも居て、ここに就職できてヨンウ本当に良かったよね…
スヨンはヨンウが苦手としている部分を自然にサポートしてくれる存在。大学の休講情報を教えてくれたり、お弁当箱を開けてくれたり。
支援者の立場からすると、家族以外で本人の特性を理解して(義務感からではなく)自然にフォローしてくれる存在ほどありがたいものはないです。
障害者を取り巻く現実
第3話(『ペンスでいきます』)では自閉症スペクトラムの男性が兄を殺害した事件を担当したヨンウ。
この話では障害者差別の現実を突きつけられて、観るのを一旦休止したほど辛かったです…
この事件がネットニュースに掲載され、コメント(日本で言うヤフコメ)に「なんで優秀な兄が殺されて障害者が生き残っているんだ」「こいつが死ねばよかったのに」と血も涙もない書き込み。それを見てしまったヨンウの気持ちを想像すると胃がギリギリ痛む。
自閉症スペクトラムを含む発達障害って生来のもので、その人自身がずっと付き合っていく特性なんです。
例えば私は生まれつきくせ毛なんだけど、「なんでくせ毛が生き残ってて直毛が死なないといけないんだ」って言われてるようなもの。明らかな差別なんですよね。
仕事で関わる人は障害に理解のある人がほとんどだから忘れがちになるんだけど、未だに現実ってこうなんだよねえと再認識。命の重さに差はないよ。
優秀でなくてもいい
ウ・ヨンウはロースクールを首席で卒業→司法試験満点合格という夢のような実績の持ち主。幼い頃から法律の条文を暗唱していたとなれば、そりゃあ弁護士目指しますよね。
もちろん彼女は優秀ですが、「優秀な当事者しか社会でうまくやっていけないのか」という疑問があり。
「そりゃドラマだから優秀な人を描くでしょ」と言われればそれまでなんですが、現実には平凡に生きている当事者もいるわけで。そんな彼らも例外なく、存在を肯定されるべき人たち。(もちろん、障害をもたない人たちも)
このドラマが描いたことは画期的だけど、さらに先へ進んで「平凡な発達当事者が特に何を成し遂げるでもなくただ生活をするドラマ」が出来たらもっと嬉しい。それ面白いのか?という突っ込みはさておき。
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