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仏教福祉 各論 5.原始仏教の福祉思想

原始仏教とは、おおむね仏教の開祖ブッダの生きた時代及び直弟子たちの活躍した時期の仏教であり、仏教の最も根本的な思想が展開されていたと考えられる。ブッダが説いた教えは文献がないため確定は難しいが、『中道』『縁起』『慈悲』『四諦八正道』を中心としてると考えられる。

仏教の福祉思想は東洋社会思想の柱であり、その思想は慈善、あるいは社会事業では律しきれない。福祉思想とでも呼ばないと収まらないものである。
その特徴は……
⑴慈悲ー菩薩行
⑵縁起ー相関関係
⑶否定→肯定→否定
⑷修行・戒律
⑸衆生・世間・僧伽
⑹国家・社会
⑺福祉関連事項

中でも『福祉関連事項』は、次のように解説できる。
他者を救う働きの中に、自己が救われるとする仏教福祉は基本は『布施』である。布施には衣食を与える①財施、教えを与える②法施、おそれを取り除いてやる③無畏施がある。施しを与える者、受ける者の上下関係など取り除かれた『無我』の実践である。
『四無量心』は慈、悲、喜、捨の4つの計り知れない利他行である。
『四摂事』は布施、愛語(慈愛の言葉)、利行(他者のためになる行為)、同事(他者と協力する)。
この『四無量心』『四摂事』は早くから仏典に現れ原始仏教の2大福祉項目である。『四無量心』は慈悲を基本として展開された考え方である。基となった『慈悲』は仏教の代表的教義で「一切衆生(すべての命ある存在)」を生死輪廻の苦しみから抜け出させ、悟りへの道を歩ませようとする仏の思いやりのことを言う。慈悲を展開したものが『四無量心』であり、その内容は次のようにまとめられる。

⑴「慈無量心」
多くの人びとに対して友愛の心を無量におこす。他者に対して同じ仲間という意識を持つこと。

⑵「悲無量心」
多くの人たちの苦悩に同感共苦する心を無量におこすこと。

⑶「喜無量心」
多くの人たちの喜びを自己のものとして喜ぶ心を無量におこすこと。

⑷「捨無量心」
すべての執着を捨てさろうとする心を無量におこすこと。

このように『四無量心』は行為、心の働きを示す概念である。即ち、自分も他人も平等の認識に立ちつつ自己の欲望を制御し、他人の有様をあたかも自分の状況のように共感同感していくと言う利他を目的とする。

原始仏教は仏教の基本的な思想を多く説いているが、福祉的思想としては
『慈悲の精神』及びその展開として『四無量心』があげられる。これらを仏教福祉の立場からみるならば現代社会の私たちの他者への認識や、置かれている状況、また他者への関わり方を考える上で重要な思想が展開されている。

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