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妻の「食べたことない」が料理の楽しみ
「そんなの食べたことない」と妻が言うんですね。
たとえば私の母方の、兵庫県は加古川市のご当地グルメ「かつめし」だと作るこちらもマイナーは承知と出す料理もあります。
が、パエリアだったりラザニアなんてサイゼリヤにでも行ったことがあれば食べる機会もあるはずの料理でも口にすることがあります。
むしろ食べたことのある料理にこそ言うのかも?
妻のそれは、つまり「おうちごはんで」なんですね。
これを聞くたびに、私はちょっと楽しくなっていたりします。
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料理は好きなほうだったんです。
はじめて作ったのは鮭のムニエルでした。
家庭科の授業で。
それから数年して、自宅の押し入れで年代物の辞典を見つけたのが本格的な切っ掛けと言えばそうだったのかも。
知ったのは後になってからですが、本格フランス料理の指導に力を注いだという田中徳三郎なる料理人の方が書いた、かなり年代物の辞典でした。
辞典なので、読むというより調べるためのもの。
ただ、どうしてなのか私には面白く読めてしまう本でもありました。
料理名から調理法まで、よくわからないながらも読んでしまうというか。
よく知らない言葉を調べるうちに単語から単語を数珠つなぎで調べて時間を忘れてしまうような感覚で、つい読み耽っていました。
それから数年して、活字だった知識が像を結ぶことになります。
『SMAP×SMAP』という番組の料理コーナーで、舌平目を知ってフランベをする様を学んで添えるガルニチュールの彩りを見るわけ。
活字が映像になる感動というか、そんなのも相まって夢中で見てました。
その影響か、いまもオープンキッチンの店が好きなんですね。
活字だった工程が目の前で再現されるのを見るのが好きというか。
そのあと舌にのせて、過程と結果を腹におさめる楽しさ。
そんな奇妙な方法で調理を覚えたせいか、まったく本来ではないレシピから出来上がる料理も多かったりして。
そんな1つが、このチリコンカルネです。
タマネギもセロリも入りません。
そもそも包丁つかいません。
ニンニクは押しつぶして、合挽き肉をABCサンバルアスリで炒めます。
で、トマトピューレと鷹の爪を入れてひと煮立ちさせます。
汁気が落ち着いてきたらミックスビーンズを入れて、もうひと煮立ち。
ずっと強火。
味が馴染むように、小一時間ほど放っておけば出来上がり。
もしクックオフに出ようものなら、鼻で笑われるようなレシピでしょうね。
誰が作っても間違いなくチリコンカルネになるのだけが自慢。
ただ焦がさないように混ぜ続けるのがポイントで、そこそこ体力勝負。
サンバルアスリには何が入っていて、チリコンカルネに必要な材料は何か。
きっと辞典には載ってなかったと思うけど、組み立ての基礎になる部分には辞典で読んで目で見て舌で覚えた成果があるんだと思います。
きれいな赤の表紙に、金の箔押しで「西洋料理事典」の文字。
外箱があるらしいと知ったのは後のことで、私は見たことありません。
あの辞典があったから料理の楽しさが知れたのは間違いないかな。
妻の「そんなの食べたことない」を聞くたび、そう思います。
そう、料理ってのは楽しいのだ!
Webメディア「アイスム」のお題企画の向けて、過去のnoteに加筆修正。