11:夜に紛れた声は、きっとあなたに届いてしまった。
「眠いね、」
彼がそう言ったから、この更ける夜になら本当のことを言ってもいいような気がした。
そんなときはいつも、言い留まって、言わないでおくのだけど。
彼は最近、大学四年を卒業し、院生になった。
一応のお祝いで、ささやかなプレゼントを。と、
重いプレゼントにしたくなかったから、Amazonでインスタントコーヒーとおすすめの本を買って梱包して渡した。
とても喜んでくれた。
本はその日のうちに読み切って、感想を言いたいと言ってくれた。
すごく嬉しかった。
彼とは浮気のような関係がここ3ヶ月ずっと続いている。
彼には実際、遠距離の彼女がいるし、私は彼のことを好きではない。ただの"友達"という体だけれど。
夜な夜な電話をかけ、甘い言葉を囁き、愚痴を言いあい、笑い、励まし合う関係。
月に何度もない休みを合わせ、いつでも会えて癒しをくれる関係。
彼は私のことを彼女にしたいと思っていないけれど、
私は彼のことが好きだと思う。
それは恋愛感情でも、友情でもある。
どちらかは分からない、ただ、一日のなかで彼のことを思う時間は少なくない。
2週間ほど前、彼に酔ってキスされたことをきっかけに私は、
もし今後、彼に誘われたら多分断れないという事、
まぐわいの後には好きになってしまう事、を確信した。
彼にこんなことを言ったらどう思われるか、、
セフレになってもいいから振り向いて。と言っているようなものだ。
私は言ってしまった。
眠い、と彼が言ったから、
寝ぼけているうちに聞いていないふりができるうちに。
この静かな深い夜になら、暗さが優しく私の言葉を包んでくれると思った。
それもこれも全部、彼がこんな話を始めたからだ。
あなたは他の子とは何か違うんだよ。
誘ってみたいとも思うし、誘いたくは無いとも思う。
でも関係が壊れちゃうのが嫌だから、
きっとこれからも誘わないと思う。
寝ぼけながら彼はそう話した
だから私もちゃんと言った。
ちゃんと寝ぼけながら。
彼が本当は起きている事を、知ることの無いように。
「誘われても断る自信が無いけど、したら好きになっちゃう気がするから嫌だよ、」
夜に縋って、そう言った。
私はまだ、彼のことを好きじゃない。
そう言い聞かせるように。
そういえば最近、「友達って強調して言うのやめな?言い聞かせてるみたいだよ。」
と、からかって彼が言う。
言い聞かせても、その通りになるとは限らないのに、私は無意識に自分にそうしているのか。
"好きじゃない。好きじゃない。やっぱり好きかもしれない。好きじゃない。嫌いじゃない。好きかもしれない。いや、好きじゃない。"
恋は盲目、いつ冷めるか分からない。
私は恋愛体質、彼は浮気体質。
平気でいられるわけない。
私は自分を騙してでも、彼を好きになってはいけないんだから。
そう言い聞かせても終わりが見えない。
いつまで私はこんなことを続けているんだろうか。
Ckw.
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?