野党の真の復活は、安倍政権の成果を認めるところから始まると思う
日本の政治レベルが低いのは、自民党が悪いから、ではなく野党がアホ過ぎるからだと思っている。真に強い野党の存在こそが、緊張感を持った政治に繋がり、それが日本の政治レベル全体を引き上げていく役割も担う。
日本の野党のレベルは、先進国の民主主義国家の中で、最も低いのではないだろうか。コロナが流行しはじめたころも、桜を見る会の追求ばかりしていたことは忘れない。何でも反対、不祥事の追求ばかりをするというのは、何も学ぶことをせずとも、起こった結果に脊髄反射で反応するだけだから、とても楽なのである。その体質が、日本の政治を駄目にしている。
しかし、批判するだけでは今の野党と同じなので、「じゃあ、どうすれば良いのか?」ということを考えてみたいと思う。ちなみに、筆者は別に熱烈な安倍さんファンでも、自民党支持者でもない。日本の国益の為に、健全な野党が存在することを願って記事を記す。
野党復活の第一歩は、安倍政権の良かったところを認めるところからはじまる
朝日新聞の調査で、安倍政権を評価すると答えたのが何と71%という衝撃的な数字だった。安倍政権にとってはアウェーの新聞社の世論調査であるにも関わらずである。つまり、安倍政権を全否定することは、そもそもこの71%の票を無視していることに他ならない。
安倍政権には当然、駄目だったところもある。けれども、駄目だったことを追求ばかりしているだけでは成長はない。
「安倍政権の良かったところはどこか」
を総括して、学ぶべきところは学ぶ、吸収するべきところは吸収するという姿勢を示すべきだ。そのうえで、
「安倍政権の悪かったところに対しては、我々ならばこうする!」
という提案を行っていくことが重要ではないだろうか。
例えば、
悔しいところではあるが、安倍政権の外交は良かったと思う。辞任に際して、世界中から多くの声が寄せられたことがその証左であろう。我々も、安倍外交に学ぶべきところは学ぶ必要があると思うし、安倍総理に敬意も表する。一方で、アメリカや中国に、もっと言うべきところを言っていく必要は、あったのではないだろうか。我々野党は、そういう問題意識をもって今後も政権の外交姿勢を厳しく見ていきたい。
などと言えば、安倍政権を評価する71%の何割かは「おっ!?」と思うだろう。あるいは、
アベノミクスにより、失業率は過去最低となり、日経平均は3倍になるなど、一定の成果はあったと思う。しかし、これは本来民主党政権が与党時代に成すべきことであった。そのことは真摯に受け止めたい。一方で、アベノミクスの成果が、日本中の津々浦々まで十分に浸透したとは言い難いという厳然たる事実も存在する。我々はそんな地方の声、弱者の声を拾い上げて、政権の経済政策を正していきたい。
と言えば、アベノミクスは失敗だった!という極論に走るよりも説得力があるのではないだろうか。
批判がありつつも史上最長政権を成しえた安倍さんから、学ぶべきは学ぶ、批判するべきは批判する。この姿勢こそが、政治家の成長に必要なのではないだろうか。
影の内閣を作って一人一殺で自民党に対峙せよ
史上最長政権であった安倍政権から吸収するべきところは吸収した上で、次に野党が行うべきは、「影の内閣」を作って独自の政策論議をすることである。
「影の厚生労働大臣」とコロナワーキンググループを作って、それぞれの局面で政策提言を行っていく、「影の財務大臣」「影の経済産業大臣」を作って、コロナ禍での経済対策を打ち出していく、「影の外務大臣」と野党外交チームを作って独自に海外の人脈造りをしていく、などなど。そして国会では、政権の実際の担当大臣とサシで国会論戦を行うのである。そうすれば与党にも緊張感が生まれるし、野党も国民に”前向きな”アピールができるというものだ。
これこそが、野党の政権担当能力を磨くための具体的な手法ではないだろうか。(旧民主党時代に形だけはやっていたが、実際に政権を担うとてんで駄目だたので、やり方はもう少し工夫が必要だろう)
安倍政権の良かったところも吸収しない、政策提言能力も磨かない・独自の人脈造りもしない、という野党に存在価値はあるのだろうか?なんでも反対の「確かな野党」は少数であればいてもいいかも知れないが、そんなのばっかりというのは国民にとって不幸である。
現時点で可能性を感じる野党
野党が真に実力をつけることが、ひいては日本国を強くしていくという思いであるが、その一翼を担う可能性が現時点であるとするならば、日本維新の会と玉木代表率いる国民民主党だろう。
日本維新の会は「是々非々」で自民党にも協力することから、「自民党の一派」と悪意を持って言われることもあるが、良い所は協力する・悪い所は反対するというのは建設的野党にとって当然のことだ。
本記事で述べた強い野党を作るための第一の条件「安倍政権の良い所は吸収する」というのは、恐らく満たしているだろう。第二の条件「影の内閣」については、残念ながらそれほどの勢力がないことから現時点では困難だとは思う。
問題点は、まだ地域政党が母体であることからやむを得ない部分はあるものの、日本の国家観や外交上の大戦略について確かなものが見えないというところである。今後勢力を拡大していくのであれば、早いうちから適切なブレーンを作って、どうせならば自民党にすらないレベルの「国際的リアリズム」を学んでいって欲しいと思う。
個人的に考えを取り入れて欲しいと思うのは、アメリカの大戦略家エドワード・ルトワック氏や、「同盟のある国は栄え、同盟のない国は亡びる」が持論のマティス前国防長官などである。歴史研究を通して世界を見る目を持つ大物の言葉は重いと思う。日本維新の会もいずれ二大政党の一翼を担うつもりがあるならば、それくらいまでガチンコで力をつけて欲しい。
一方、玉木さん率いる国民民主党は、名前は上げたものの維新ほどの存在になる可能性は低いと思っている。あまり好きではなかったが、立憲民主党との合流に応じなかったのについては評価をする(評価するべきは評価しなければならない)。現実野党として生き残れるかどうか、これからが正念場だろう。維新との連携に一筋の希望があるが、労働組合を支援団体に持つ国民民主が、改革派の維新と組めるのかにも疑問がある。
自民党に代わりうる、「リアリズムのある野党」の出現を期待している。