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そんなことまで言っていいの!? #3 冷凍少女はアイドルの夢を見続けられるか?(ウサギノヴィッチ)

 来る11月22日に、文学フリマ東京が行われます。
 自分の主宰する「崩れる本棚」もサークル誌「崩れる本No.9.0」という新刊を携えて出店いたします。
 ブースNo.はオー27です。

 今回はそれを宣伝するべく「崩れる本棚No.9.0」に収録されている作品の批評みたいな感想みたいなことを書いていきたいと思います。
 順番は収録順です。短編なので、ネタバレもしてしまう可能性がありますが、それは本誌を読んでいただいて「ウサギノヴィッチの書いてあること違うじゃねーかよ」と感じていただいて大丈夫です。
 
 まずは、そにっくなーすさんの『冷凍睡眠』です。

 内容は、パトロンの養子になることで、義理の姉妹になり、アイドルユニットとして活動する瑠璃と莉緒。瑠璃には人を魅了する華はあるけど、それ以外にない。莉緒はそれ以外をカバーして、ライブをしていたが、自分には人気がないことがコンプレックスだった。あるライブ終わりの夜に、初めてファンになった人からDMが来る。その男を無碍にしたくない莉緒は、ファンの誘いに乗り、家に行き一夜を共にする。ただ、それは彼女に色々と傷を負わせアイドル活動ができなくなるはめになる。

 と、あらすじはここまで。
 
 じゃあ、タイトルの『冷凍睡眠』はどこにかかっているかだが、それは最後に関係してくる。ただ、ネタバレをしないために、ここまでにしておく。

 この小説はSFチックな部分もありながら、現代の地下アイドルの現状が書かれている。そして、努力型と天才型の対立というのも組み込まれている。それぞれの展開を含めて非常に読みやすい作品になっている。努力している側から書かれる、天才型の憧れと嫉妬が共感できてしまう。それを気にして自分は身体を張らないとファンを獲得できない。自分の逆境っぷりが物語を不安な方向にさせてしまう。
 ちなみにこの小説はアンチクライマックス的に書かれているので、終わりは最初の続きみたいなものになっている。
 色々なことがさらっと書かれているが、もっと同じ内容でボリュームのある描写で読みたいと思った。あと、アイドルの目線で書かれているので、実際に地下アイドルはこんなものなのかと思って読んだ。欲を言えばそこも色濃く書いてほしかった。
 あと、二人は、所詮は血のつながっていない他人なので、瑠璃に対する不信感は実の姉妹より憎いのではないだろうか。いや、それは違うかもしれないが、最後の方に瑠璃を叩いてしまう表現がある。それが、実の姉妹ならできるのだろうかと考えてしまう。物語が終わるときに、莉緒を一時的に失うことによって見せる涙には本当の家族より家族だったのだろうか。自分が一人でアイドル活動ができなくなることを不安に思っているのではないだろうか。瑠璃の自分本位の描写が多い中で、莉緒を失うということは、自分の踏み台になる人間がいなくなってしまうことにつながっているのではないだろうか。
 性悪説で最後は書いたが、莉緒が望むものが瑠璃にあって、自分はどこか下にいるような気がするというルサンチマン的な発想が僕には湧いた。ただ、これが必ずしもハッピーエンドではないことは断言できる。


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