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葛布の帯地の年間生産量について

繊維を取るための葛は乾燥させ保管するということができず、採ってからすぐにその後の工程に移らねばなりません。そのため、一度に大量に取ることはせず、葛の生える場所と川とを行き来し必要な量になるまで一連の作業を繰り返します。

葛の繊維の取れる時期は札幌の場合で6月末〜8月のごく初めまでで、私の場合、一回につき葛の蔓を60本ほど×20回が目標。これは、葛と時間と自分の体力から割り出された量で、これ以上は出来ません。取れる繊維の量は全部合わせて1キロにちょっと満たないくらいです。

一方 織りはというと、八寸帯地を織り上げるのに私の場合で大体1ヶ月半〜2ヶ月かかります。半幅帯地、角帯地は使う糸も長さも少し短いのでかかる期間もそれより少し短いですが、織る作業は同じなので極端に違うわけでもありません。
それで大体年間7本。
これまで効率化、生産量増加を目指して色々やってみましたが 劇的に変わることはなく、どうしても何をしても7本に留まります。
手と身体が慣れるにつれ少しは速くなりましたが、それも全体からすれば微々たるものです。

これではいつまでたっても生活していけない、もっと織らねば、と、自分にプレッシャーを与えていた時期もありましたが、不思議なことに一年で取れる繊維はその7本でほぼ使い切ります。
一年の繊維採取量と帯の生産量が不思議と一致する訳です。

偶然そうなったのか、無意識にそうなるようにしているのか、分かりませんが、いづれにしても、それが、札幌に住む私と札幌に生きる葛との間での 取り決めというか、ごく自然なペースなのだと思います。ですから、それ以上の生産を目指すことはどこかに無理が来る、自分を苦しめるだけでなく自然をむさぼることになるのだろうと思い、止めました。

思えば、古くからある色々の単位や基準は、そうした自然と人との間の取り決めのようなもので自然と決まってきたものなのかもしれません。

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(更新履歴)
2024.9.26 状況が変わりましたので、同じタイトルで新しく記事を書き直しました。


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雪草 葛布帯 | Sessou Kudzufu-obi
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