星を掬う(町田そのこ)
町田そのこさんの新作『星を掬う』を読んだ。
元夫のDVに苦しむ千鶴は、ある日ラジオに、小学生のときに母から捨てられた過去を投稿したことをきっかけに、元夫から逃げるように、母たちと暮らすことになる。
認知症を患った母、両親のいない恵真、娘に捨てられた彩子と暮らすうちに、千鶴は自分の中に変化を感じる。
母は千鶴を捨てたときにどういう想いを抱えていたのか。
ああ、またこの設定か、読んでいて苦しいしイライラする。町田そのこさんは、どうしてこんなにもクズなキャラを登場させるのか。
そんなキャラを目の前に、心がすさんでいる主人公。
そんな主人公の、可哀想という言葉が嫌いというセリフ。勝手に自己満足で善意を与えておいて、感謝を強いるなよ、と。
これには刺さった。
帯の「辛かった、哀しかった、寂しかった。痛みを理由にするのは楽だった。でも―。」が核を物語っている。
まさに「帯買い」した作品。
母親に捨てられたから今の自分があるのではなく、今の自分をつくったのは自分自身だと気付くことで、新しい自分を見つめ直せるようになる。
その先の関係性は暖かいものがあった。
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』や『52ヘルツのクジラたち』などで描いた息苦しさを、また違う視点から描いている。
チョコレートグラミーなどの短編集を書いていたからか、各々のキャラクターの過去もぐっとくるものがある。