10・23原子力規制委会見
原発事故の際の周辺地域における屋内退避についての中間案がまとめられたが原発災害と自然災害が同時に起こる複合災害への言及がほとんどなかった点について、原子力規制委員会の山中伸介委員長は2024年10月23日(水)に開かれた定例記者会見で「複合災害については現状の原子力災害対策指針の考え方で対応出来る」という前提での検討だったと説明した。
規制委の検討チームは事故時の屋内退避の目安を3日間とした。政府の防災基本計画で一般的に災害に対して水や食料などを最低3日分備えておくように求めているのに沿ったかたちだ。
屋内退避から退避への切り替え判断は自治体ではなく、国が自治体からの情報に基づいて行うとした。
山中委員長は「複合災害の場合、今は屋内退避の目安として3日間という継続期間を想定しているが、その期間について自然災害の発災後からの日数等を考慮しなければならないので、今後の議論になる」と話した。
自然災害を優先してから原発災害への対応を
自治体からの意見の反映について、「今回の中間とりまとめの段階で自治体の詳細な質問コメントを受け付ける手続きをしている。最終的な報告をとまとめる段階までに議論していくことになると思う」。
規制委の原子力災害対策指針では、原発事故時には5キロ圏内の住民は即30キロ圏外へ避難、5~30キロ圏内の住民は自宅や避難所などで屋内退避、放射線量が基準を超えた場合、30キロ圏外へ避難するとなっている。
今回の屋内退避の運用についての中間まとめによって規制委の原子力災害対策指針を見直すことはあるかとの質問に対して、山中委員長は「大きな影響が出るとは考えていない・・・基本的な考え方が変わるものでないし、大きな変更があるものではない」と述べた。
屋内退避が出来ないことは想定されていないのかとの質問があった。これに対して山中委員長は「想定以上の自然ハザードが生じて原子力災害が生じた場合、人の命を守ることが最も大切なので、自然ハザードから自分の身を守ってもらう行動を優先取ってもらい、その後で原子力災害への対応を考えてもらうという考えで全く問題ないと思う」と述べた。
今回の中間まとめが始まったきっかけの一つは、今年初めに発生した能登半島地震だ。この際、能登半島では地震によって道路が寸断されたりして孤立する集落が発生し、退避への問題点が明らかになった。
国際原子力機関(IAEA)の基準では屋内退避は2日間と定められていることの今回の中間まとめで示された3日間との整合性について質されて、山中委員長は「あくまでも3日間というのは目安でおおむね3日間ということで提示させてもらった。厳密に2日間と3日間との違いを議論したわけではない」として詳細な議論はこれからだとした。
女川原発の再稼働を控えて
来週にも東北電力女川原発(宮城県)が再稼働される予定となっている。これは大事故を起こした福島第一原発と同じタイプの沸騰水型軽水炉(BWR)であり、長期間の停止を経ての再稼働であることへの質問が出た。
約13年ぶりのBWRの審査となるが、「かなり大きな地震を何回か経験したサイトなのでその影響は慎重に審査した」。
「また、非常に大きな津波が発生する可能性があるサイトなので対津波についても慎重に審査したところだ」と山中委員長は説明した。
山中委員長は特に長期間のブランクを経ての再稼働で運転経験がない運転員の問題について質問を受けて「事業者との意見交換のなかで人材育成の取り組みについて詳細に確認してきた」と話した。
「長期停止したプラントをいかに再起動させて運転させていくか規制委員会としても問題意識を持っていたところで、意見交換をして事業者の取り組みを確認させてもらったところ」。
「保安規定の中でも事業者の職員の技術的能力の確認など十分に見てきたつもりだし、事業者自身も運転員の育成等を注意深く進めてきたと理解している」として不安がないとの考え方を示した。
人材だけでなくメカニック的な経年劣化の問題に関しては「特段の検査はしていない。大きな心配はしていない」と一蹴し、むしろ人材などのソフト面の対応が主になってくるとの考えを示した。
放射線影響の基礎データの積み重ねを
東京電力福島第一原発2号炉での燃料デブリの試験的取り出しに向けてトラブルがあったカメラ2台の交換が先週終わったことに関して、山中委員長は「カメラを交換して今操作の準備等を進めていると報告を受けている」。
カメラのトラブルは放射線場の影響とされているが、「今後大規模取り出しに向けて放射線場の影響は当然考えていかなければいけないので、基礎データを積み重ねて行ってほしい」。
東電は今年9月10日、試験的デブリ取り出し作業を始めたが、まずは設備の運転に関する人的ミスそして17日以降はカメラの不具合で作業は中断した。交換したカメラ2台は遠隔操作で画像が映らなかった。
福島第一原発1~3号機には2011年の事故によって溶け落ちた燃料デブリが推計で880トンあるとされる。将来的な廃炉に向けて、まずは微量なデブリの取り出して成分を分析し、大規模取り出しに備えると東電や政府は主張しているところ。
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