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10・31原子力規制委会見

 国土地理院が日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)の敷地内に活断層が通っている可能性を指摘したが、原子力規制委員会の山中伸介委員長は2024年10月31日(木)の記者会見で地震が仮に起こったとしても特段、安全上の心配はないとの認識を示した。
 「私自身の現状認識は、燃料については炉心から水プールに移送されていますし、燃料も非常に冷却された状態なので、特段、地震が起こってもリスクがある状態であるとは考えていません」。
 「二次系のナトリウムはドレンチされて固化された状態になっていますので特に現状、危険ではありません」。
 一方、一次系のナトリウムについてはまだ液体の状態だという。
 「地震で万が一建屋等が損傷して空気に触れることになり、火災が起きた場合、消化がきっちり出来るかについては、もちろん審査の中でも確認しているし、毎年行っている事業者防災訓練の中でナトリウム火災についても重点的に、規制委員会も参加して確認しているところで、現状、何か大きな課題があるとは認識していない」という。
 そのうえで山中委員長は、原子力規制委員会の中でも「状況についての確認を改めて行っていきたい。それほど時間を経ずに報告が受けられるとみています」と付け加えた。

改めての地質調査は求めず
 また、山中委員長は日本原子力研究開発機構にボーリングなどによる地質調査を改めて求める考えはないことを示した。
 ただ、現状としてもんじゅは「廃止措置中なので、もんじゅそのものに安全上の懸念があるのかどうか、きっちりクリアされないといけない一番大事な問題だと考えています」と山中委員長。
 「私自身もんじゅに何か課題があるとは考えていませんが、(原子力規制)委員会で近々議論されることになる」という。
 国土地理院が同29日公表した活断層図には、もんじゅの敷地を横切る長さ1キロの「推定活断層」が記されたが、位置は「やや不明確」とされた。
 もんじゅは、MOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)を使って、消費した量以上の燃料を生み出すことのできる「高速増殖炉」の実用化のためのものだが、度々の事故もあって、廃炉が2017年に決まっている。
 もんじゅの跡地に試験研究炉を建設する予定で申請が来年3月末までに出る見通しだが、今回の推定活断層との関連を問われて山中委員長は「新規制基準に適合しないといけないので敷地内に活断層があってはいけないので審査の中で確認していきたい」と述べた。

島根原発再稼働に向け職員の教育に重点
 中国電力島根原発2号炉が再稼働のための燃料装荷を開始したが、これはこのほど再稼働した女川原発2号炉に次ぐ沸騰水型原子炉(BWR)であるが、特に注視している点は何かとの問いが中国新聞記者からあった。
 それに対して山中委員長は「BWR、PWR(加圧水型原子炉)に関わらず審査については厳正に進めてきている。一方、BWRについては特にサイトの状況によって許可に時間がかかった発電所もある」と話した。
 BWRの稼働が13年ぶりになることから、BWRの「運転経験のない職員が多くなっているという実情を踏まえて検査の中で職員の教育訓練、起動に関する教育を重点的に見ているとの報告を受けています」とした。

燃料デブリ採取に向けての「第一歩」
 東京電力によると、福島第一原発2号炉で燃料デブリの試験的取り出しでデブリをつかむことに成功したという。
 山中委員長は「溶けた炉心、溶融物を採取して分析する工程をまず最初に経験する重要性は非常に大きいので、全体の工程の中では一歩ではあるが、その一歩が踏み出されて次の大きなステップを踏むことが出来るので、まず第一歩を踏むことが出来た」と評価した。
 福島第一原発の1号炉から3号炉までには推計で880トンの燃料デブリがあるとされる。ただ放射線量が高いために遠隔装置を用いて、一回に採取出来るデブリは極めて微量の数グラムとなる。
 試験的採取は、その性状や分布をまずは調べることが目的。

事故原因が明らかにならぬまま死去した東電元会長
 2011年3月に起きた福島第一原発事故時に東京電力会長だった勝俣恒久氏が同21日に亡くなった。
 共同通信社記者から経営面からなぜ事故が起こったのかが明らかにされないままに亡くなったたことを指摘されたが、山中委員長は「特に規制委員会としてコメントすることはありませんが、今後東京電力として廃炉を着実に進めて頂くことに尽きると思います」と述べるにとどまった。
 

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