さようなら原発全国集会
「さようなら原発全国集会」が2024年9月16日(月・祝)に代々木公園で開かれ、およそ5000人が参加し、各原発の地元で活動している市民グループの代表らからの報告を聞いた。
主催は「「さようなら原発」一千万署名 市民の会」。
オープニング前から会場にはRCサクセションの「カバーズ」などからの曲が流れて忌野清志郎さんの歌声が響き渡っていた。
午後1時、シンガーソングライターの片平里菜さんによるオープニングステージが始まり、ボブ・ディランの反戦ソング「風に吹かれて」の日本語版を含めて5曲を披露した。
続いてはメインステージで、司会をピースボートの畠山澄子さんが務めた。まずは呼びかけ人の一人で評論家の佐高信さん。
佐高さんは以前から福島県富岡町の人たちと親しくしてきたが、驚かされたのは3.11の後で聞かされたことだ。東日本大震災の当日、東京電力の社員や家族には避難指示が出ていたということだった。
「住民を置き去りにして自分たちだけ逃げちゃった。特権を持っている人たちが私たちの人権を踏みにじったということだと思います」。
話は現在行われている自民党総裁選のことになり、佐高さんは「あの中に一人でも原発を止めるという人がいない。一番ふざけているのが河野太郎で、脱原発を言っていたのが今は逆になっている」と話した。
「我々は人権をもって特権を討つ、その闘いを止めるわけにはいきません」と佐高さんは話を締めくくった。
次に登壇したのは、「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」の多々良哲さん。東北電力女川原発への核燃料の装荷が終わり、11月にも再稼働されようとしているタイミングだ。
2011年3月の東電福島第一原発の大事故以来初めて東日本で原発が再稼働されようとしている。そのうえ、女川原発は3.11の時に事故を起こした沸騰水型原子炉(BWR)と同じ型なのだ。
「極めて旧いBWRのMark1で苛酷事故に耐えられないのではないかという欠陥が指摘されています。また福島の事故原因が明らかになっていないのに、同じ型の原発を再稼働しようなんておかしい」と多々良さんは指摘。
今年初めに能登半島地震が起きて万が一の原発事故時の際の避難の困難さが浮き彫りになったが、女川原発も同じく半島に位置しており、「このような状況で再稼働を強行させるわけにはいきません」。
「宮城県民の間にある反原発世論を、被災した東北のど真ん中で再稼働をすることで、つぶそうとしています。民意を押しつぶそうとしているのです。今大切なのは黙らないことです」と多々良さんは力を込めた。
続いて挨拶に立ったのは「これ以上海を汚すな!市民会議」の織田千代さん。福島県いわき市からの参加で、主に一年前から始まった福島第一原発から出た処理汚染水の問題を訴えた。
「漁業者たちとの約束を反故にしてまで進めている。差し止め訴訟も起こされています。いったいなぜ他の手段ではなく海洋放出だったのでしょう」と織田さんは疑問を投げかけた。
「地元では魚屋が減って、スーパーでは他県からの魚が並んでいます」。
「地元漁業の現場には重たい悲壮感が漂っています」。
汚染水を、いわゆるALPS処理しても放射性物質のトリチウムは完全には取り切れない。織田さんは「トリチウムの危険性についてきちんと説明されていません」と話した。「そのうえ、廃炉に欠かせないとされるデブリの取り出しものっけからつまづいています」。
「復興のために廃炉が必要で、そのためにデブリを取り出す必要がある」と繰り返し聞かされてきたが、「そんな危険なデブリの取り出しが可能なのか?取り出したデブリをどうするのか?」と問いかけた。
「国と東電のとてもいびつなやり方が通ってしまっている。人々の平穏な暮らしを差し置いて進めてしまっている」。
汚染水の海洋放出に対しては太平洋諸国からも抗議の声が上がっていることを指摘して、織田さんは云った「海はいったい誰のものなのでしょう?漁業者のものでも、国や東電のものでも、人間だけのものでもないのです」。
さらに「3・11甲状腺がん子ども支援ネットワーク」の阿部ゆりかさんから報告があった。甲状腺がん裁判は来年、証人尋問が行われることになり新たなるフェーズを迎えるという。
「しかし、裁判が続いている間にも、再転移が起きたり、肺への転移が起きたりしています」。
「原告はがんの苦しみだけでなく、大学を中退せざるを得なくなるなど学業や就職の問題など困難を抱えています」。
阿部さんによると、小児甲状腺がんは100万人に一人といわれていますが、福島県の調査では382人の子どもが甲状腺がんだという。
しかし、被告側は子どもたちはわずかな被爆しかしていないと主張しているのですと阿部さんはいう。
次回の期日は今年12月11日(水)東京地裁となっている。
阿部さんは「私は原告ではありませんが、自分自身の裁判だと思って支援を続けていきたいと思います」と述べた
続いて話をしたのは「東海第二原発運転差し止め訴訟原告団」の相楽衛さん。日本原子力発電東海第二原発(茨城県)は当初、今年9月までに工事を完了させるといっていたが、昨年3月に防潮堤の不良工事についての内部告発がなされて、基礎部の不適切な工事が明らかになった。
現在、原子力規制委員会から日本原電は再説明を求められている。
相楽さんはいう「審査がまだだというのに、日本原電は2026年10月までにと発表したのです。こんな日本原電を信じてはいけません」。
日本原電の隠ぺい体質を指摘したうえで、「重要な工事なのに下請けに丸投げし、しかも現場を見ていない。今の検査制度はザルです。工事は中止し、廃炉しかありません」と述べた。
敦賀原発2号炉が活断層の有無の判断をめぐって原子力規制員会から再稼働に対して事実上のノーを突きつけられたので、日本原電としては東海第二を再稼働させようと必死なのだという。
避難計画を急いで策定しているがこれがお粗末だという。「昨年12月27日、東海村が広域避難計画を策定したと発表しましたが、それからわずか5日後に能登半島地震が起こりました。まさに自然からの警告です」。
ここで再び主催者からの挨拶となり、呼びかけ人であり作家の落合恵子さんが話をした。「歳を重ねて学んだことがあります。それは決してあきらめないということです。あののび太も言っていたように「あきらめないということがすべての答え」なのです。正義は打ち勝つものだと信じています」。
ここで話は自民党総裁選という「祭り」に移り、「冗談じゃないですよ、表紙を代えて、刷新ってどこが刷新?原発についてもあえて触れない。メディアもだらしないです。とても大切なことなのに聞かないなんてジャーナリズムじゃないでしょ」と落合さんはいう。
また、自民党総裁選の直接のきっかけは「特定の宗教団体との癒着」と「裏金問題」なのに、それもはっきりさせていないと指摘した。
続けては若者たちからの声だ。「Fridays for Future Tokyo」から二本木葦智さんと中村千博さんの二人がステージに上がった。
中村さんは「tipping point」つまり転換点あるいは臨界点の話をした。「ある時点を過ぎてしまうと取り戻しがきかなくなる、そういうポイントのことをいうのです。気候変動が止まらなくなる。そのことを知って、活動するようになりました」と話した。
中村さんは大学3年生。続く二本木さんは大学1年生だ。
二本木さんはまず、1950年生まれの人と2020年生まれの人とではどちらが気候変動の被害を大きく受けているかという話から入った。地球の温度が上がって大規模災害の数なども増えてきており、答えは2020年生まれだという。「私も2020年生まれに近い立ち位置なんです」。
「非現実的で不可能な原発再稼働は気候変動対策にもならないし気候正義にも反しています。私たちは自由で、力があって、声を出して・・・今動くことは出来るからこそ明日を変えられる」。
若者たちの後、「核の中間貯蔵施設はいらない!下北の会」の栗橋伸夫さんがステージで話をした。現在、東電柏崎刈羽原発からの使用済み核燃料が12トン、搬入される予定になっているという。
中間というものの「最終的な貯蔵施設になってしまう可能性が高いとして、一貫して反対運動に取り組んでいます」と栗橋さん。
青森県という場所は核施設がオンパレードで、それによって生活をしている人たちがいるのも事実だと栗橋さんはいう。「リスクがあることを住民は承知していても声に出せない。それが下北半島の現実なのです」。
むつで「50年貯蔵したら本当に出ていくのか?どこに出ていくのか?全く明示されていない。東電と日本原電がやっており、国は単なる立会人にすぎません」と栗橋さんは憤る。
同じく青森県の六ケ所村で建設が進められている、日本原燃の核燃料再処理工場の完成が27回目の延期になろうとしており、「もはやむつ市の中間貯蔵施設の後に六ケ所村の再処理工場を考えることは不可能だ」とした。
続けて再稼働が間近に迫っているとされる東電柏崎刈羽原発(新潟県)について「新潟平和運動センター」の有田純也さんが報告した。
核燃料の装填が終わり、もう再稼働出来る状況だという。「来週にも使用済み核燃料をむつに運ぼうとしている」。
「あとは県知事と県議会です。自民党県議の大半は今まで反対か慎重な姿勢だったのですが、道路建設の予算と引き換えに賛成に転じようとしています。最初から道路を作ることが目的なんです」と有田さんはいう。
「県民の信を問うといっていますが、方法が明らかにされていません。県知事選挙あるいは県民投票だと思うのです」。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉を有田さんは紹介して、「経験から学ぶことが出来ない自民党は愚か者じゃないですか」。
そして呼びかけ人でルポライター鎌田慧さんから閉会挨拶があった。
「自民党の公約って軍備や原発の増強ってことばかりで、下々の生活を全く無視している。河野さんも(原発)反対から撤退してしまった」。
鎌田さんはいう「原発自体がカネが儲かる魔の装置なんです。自然エネルギーを邪魔してどんどんストップさせてゆく。世界史に逆行するような政策を日本の政府はやってきた」。
「もうお前の顔なんて見たくない!さようならを宣言したいと思います」と鎌田さんがいうと大きな拍手が起こった。
なお、会場横にはおよそ30のブースが並んだ。
主な出展者は次の通りーー上関どうするネット、生活クラブでんき、大間原発建設反対あさこはうす応援隊、週刊金曜日、肉球新党、生活協同組合パルシステム東京、福島原発訴訟かながわ原告団、東海第二原発差し止め訴訟原告団、原子力情報資料室&アトミックカフェ、Green People's Power、地球救出アクション、いわき雑魚塾、あけび書房、あかつき印刷、首都圏なかまユニオン、原発関連労働者ユニオン、ふくしま共同診療所医師連絡会、経産省前テントひろば、たんぽぽ舎、津島原発訴訟、市民電力連絡会、さようなら原発1000人アクション、高校生1万人署名活動東京支部。
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