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原発事故時の屋内退避

 2025年2月5日(水)、原子力規制委員会の検討チームは、原発事故時に住民被ばくを出来るだけ防いで低減させるための「屋内退避の在り方についての最終報告書案」を公表した。
 同日の検討チームの会合では原発が立地する宮城県や福井県の担当者からも同案についての意見や質問が出た。
 それらも踏まえ、さらに自然災害と原子力災害が同時に起きる「複合災害」に対する防護措置についても議論を深めていき、今年3月にも最終的に報告書がまとめられることになった。
 最終報告書案によると、退避期間の目安を3日間とし、水や食料が供給出来れば継続する場合があるという。また、生活が維持できなくなった場合には30キロ圏外への避難に切り替えるとしている。
 また、屋内退避中であっても、生活物資の調達や通院などのために一時的な外出は可能だと同案では記述されている。

宮城県からの声
 宮城県の担当者は避難をどのような単位で実施してゆくのかを問い、同県の場合は「行政区単位で、放射線モニタリングの結果によって各行政区ごとに避難をすることになる」と話した。
 そのうえで食料やインフラの問題があり、「食料はどこでも同じようにしてなくなってくるわけで、その場合は(地域単位というよりは)全域での避難を考えなければいかないと思っている」。
 これに対して原子力規制庁は避難単位をどう考えるかは難しい問題だと認めたうえで、「屋内退避が開始された段階において、各地域で生活物資の供給を様々な形で実施していただく。それでも足りないところについては避難に切り替えざるをえないのかもしれません」という。

地域を特定しての避難は難しいのでは?
 宮城県には東北電力女川原発があり、昨年10月に2号機が東日本大震災以来の稼働をしたところだ。女川原発は東日本大震災の際に被災し経た経験があり、地形的にも避難が困難になることも指摘されている。
 物資の供給に関しては「屋内退避が開始された段階で国や地方自治体がきちんと対応していく。それでも足りずに生活の維持、生命の維持が極めて難しいとなる場合はその地域を特定して避難に切り替える判断をしていく」と原子力規制庁の担当者は説明した。
 宮城県の担当者は住民感情を考えると、特定の地域だけを限定してそこだけの避難というのは「なかなか厳しいのではないかと思っている」という。
 避難単位を考える理由の一つとしては一斉に避難するとなると避難経路が混雑したり混乱が生じることが予想されるからだ。
 原子力規制庁は「なぜ避難に切り替えるのか」という判断の説明責任は「判断の主体である国と関連する自治体とで果たしてゆくことが必要だと思っているところだ」とした。
 これに関してはのちに自治体に丸投げではないかとの声も聞かれた。

屋内退避は避難への準備?
 福井県敦賀市の担当者は、住民と民間事業者の外出をはじめ「物資の供給体制の実効性の向上、人的資源の提供など自治体が対応に迷わないように屋内退避の運用に関して継続的に検討してい頂きたい」と国に要望した。
 屋内退避の継続期間は3日間という目安を示すことが「原子力災害時の防護措置は退避が前提で屋内退避はその準備であるかのようなメッセージにならないようにしてゆくべきだ」と原子力規制庁。
 外出時の服装や外出時間などに関しても分かりやすい説明をいただきたいと敦賀市の担当者から要望があった。
 原子力規制庁からは、屋内退避の目的や効果も含めて、改めて分かりやすい広報を行う必要があると考えているとの発言があった。

避難ではなく屋内退避がデフォルト
 また、屋内退避と避難のどちらがデフォルトなのかといえば屋内退避がデフォルトであると原子力規制庁から説明があった。
 一方で放射線被ばくのリスクを防ぐことと命を守ることのバランスの話があって、それと似通った議論がコロナの際にもあったとして、バランスを考えつつ命と生活を守る大切さへの言及が福島大学の専門家からあった。
 福井県敦賀市には日本原子力発電の敦賀原発があり、再稼働を目指すものの敷地内断層の評価を巡り申請が退けられたところだ。
 
 国の原子力災害対策指針(原災指針)は、原発事故時に5キロ圏内の住民はすぐに30キロ圏外に避難し、5~30キロ圏内の住民は屋内退避をし、放射線量が基準を超えた場合は30キロ圏外に避難すると定めている。
 昨年元旦に起こった能登半島地震の後、北陸電力志賀原発ではトラブルが続出し、地域住民も道路が寸断されたりして避難所へも行けなかったり、集落が孤立したりした。それらの事象も踏まえたうえで、検討チームは議論を進めて、昨年10月に中間まとめを公表していた。
 

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