私の納豆大革命
食べるのが無性に好きな私にも、苦手な物、食べられない物がある。むしろ、いい年をしてちょっと多めかもしれません。
そんな苦手な物の一つが、納豆。
小学生の頃、学校の給食があまり美味しく感じられず(あまりはっきりとは覚えていないけど、野菜の香りがない一方で生臭い物は生臭いまま、味にメリハリもなかったような……)、さらにアルミの食器・トレイを使っていたものだからカチャカチャ金属音がし、下手するとフォークで引っ掛けてしまいキーッとあの奥歯に響く嫌な音がして、ちょっとしんどいと思うことがしばしば。あまり美味しくないならせめて子供が食べやすいおかずを用意してくれればいいのに、ちょっとチャレンジングな料理が出てくることがありました。
そのチャレンジングな料理の中でも一際アグレッシブで今でも強烈に覚えているのが、納豆汁です。
納豆汁は、お味噌汁にひきわり納豆を加えた物。ひきわり納豆を入れひと煮立ちさせると、独特のとろみがついて冷めにくくなり身体を温めてくれる、山形や秋田等の郷土料理。きのこや豆腐などほかの具材と合わせることもあるようですが、この時給食に出た納豆汁の具材はひきわり納豆のみ。教室に届いた寸胴鍋のふたを開けた途端に、温められて一層強くなったあの納豆の発酵した臭いが立ち上がりました。締め切ったひとつの教室の中で30人以上が一斉に納豆汁を食べたら、たちまち臭いが教室に充満。食べてみたら、納豆のねばねばが完全に汁に溶け込んでいて、お汁自体が納豆になりかけているような味が。
要するに、逃げ場がなかったんです。
いや、きっと納豆汁に罪はない。元々汁に納豆を溶かし込むようにして入れるようだし。
普段から納豆汁に親しんでいたり、様々な食に触れて経験を積んだ大人になってからだったりしたらもう少し違った反応だったかもしれませんが、当時の私は嗅覚を強く刺激する物が受け付けられない子だったもので、初めて出会ったこの強烈な納豆の臭いと逃げ場がなかった体験が尾を引き、納豆が食べられなくなりました。それまでパックの納豆は難なく食べられていたのに。
そんな私も年月を重ね、いつの間にかコレステロール値が気になるお年頃に。血栓を溶かす酵素ナットウキナーゼ、女性ホルモン・エストロゲンと似た働きをする大豆イソフラボンを含み、さらには腸内環境を整え抗菌効果もあると言われ、そりゃあ年々納豆が気になってきます。食べた方が身体にはいいのはわかっている。でも口が受け付けない。
という話を知人にしたら、知人もまた納豆が苦手だったのが食べられるようになったとのこと。
その食べ方は、納豆にタレと酢をかけ、ラー油をちょっと垂らすというもの。
ポン酢ではなく、酢がいい。
ちなみにからしも食べられません。だから入れない。
物は試しと早速実践してみたら、納豆のネバネバが酢を入れると物理的にさっぱり。かき混ぜればかき混ぜるほど、洗顔フォームを泡立てたかというくらい、ネバネバがふわふわの泡状態に。かき混ぜる箸がもたつかずにすっと動く。糸を引かないから、納豆の糸が顔の周りにまとわりついていつまでも臭いがするなんて事態がない。後味もすっきり。さらに酢のおかげか口の中がまずラー油の辛みに麻痺するのか、口から鼻に抜ける臭いがだいぶ抑えられている。
すごい。
納豆から受けるダメージが、100から15くらいに減っている。
酢・ラー油にさらにすりおろしニンニク(あるいはみじん切りのニンニク)を加えてみたら、ニンニクの方が臭いが勝ち、納豆の臭いを包み隠してしまう。どうしてもパックを開け食べる準備するまでの間にダメージは食らうものの、それでもダメージは5くらいまで減ってる!
知人はご家族の方から、もはや納豆本来の味わいはなくなっていると言われたらしいけど、本来の味わいを楽しめない人間にとっては食べられるようになった、これだけでも革命なんですよ!エイドリア―――――ン!!!
酢納豆にラー油・ニンニクを加えて混ぜると、今度はクリーミーな泡立ちに。でも納豆特有の細い糸引きとは違う。
ニンニクにも殺菌効果があり血液をサラサラにしてくれる上に、酢納豆は視力回復効果があるとテレビで紹介されたとか。食べられるようになった上に健康効果が一層期待できるだなんて、万々歳です。
それにしても、学校給食は子供への影響はかなり大きいかと。ここで苦手な物ができると後々まで尾を引くし、家庭ではなかなか出ない食材や旬の物を知るいいチャンスでしょう。
今日もありがたく、いただきます。