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#561 新たなモネを発見!感動! 「モネ 睡蓮のとき」展@国立西洋美術館

会社を早退して思いつきで立ち寄ったモネ展が、個人的に近年最高に心揺さぶられたので、メモ。



1、どんな企画展?

上野の国立西洋美術館で来年2月11日[火・祝]まで開催中の企画展です。
概要をモネ展のHPから転載します。

印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ(1840-1926)は、一瞬の光をとらえる鋭敏な眼によって、自然の移ろいを画布にとどめました。しかし後年になるにつれ、その芸術はより抽象的かつ内的なイメージへと変容してゆきます。
モネの晩年は、最愛の家族の死や自身の眼の病、第一次世界大戦といった多くの困難に直面した時代でもありました。そのような中で彼の最たる創造の源となったのが、ジヴェルニーの自邸の庭に造られた睡蓮の池に、周囲の木々や空、光が一体となって映し出されるその水面でした。そして、この主題を描いた巨大なカンヴァスによって部屋の壁面を覆いつくす “大装飾画”の構想が、最期のときにいたるまでモネの心を占めることになります。本展の中心となるのは、この試行錯誤の過程で生み出された、大画面の〈睡蓮〉の数々です。
このたび、パリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開となる重要作を多数含むおよそ50点が来日。さらに日本各地に所蔵される作品も加え、モネ晩年の芸術の極致を紹介します。日本では過去最大規模の〈睡蓮〉が集う貴重な機会となります。

モネ展HPより 太字は筆者による

ということで、ポイントは、モネの「晩年」の「抽象的かつ内的」な側面を紹介するところにあります。

本展覧会は、知り合いから「すごい良かった」という話を聞いて、行ってみよう、と思っていたものでした。
ただし、「土日祝日だとものすごい混んでいる」という情報も併せてもらっていて、今回、午後に仕事がぽっかり空いたところ、急に思い立って午後会社をサボって(フレックス勤務です)行ってきました。

結論から言いますと、個人的にはここ数年で最も心揺さぶられた展覧会でした。
結構美術館には行っている方だと思うのですが、面白いなぁ、と思うことがあっても、感動する、ということは(残念ながら)ほとんどないのですが、今回は強く心揺さぶられる経験をしました。


2、これまでのモネのイメージ

モネと聞いて思い浮かぶものは何でしょうか?
「睡蓮」「印象派」が多いのではないでしょうか?
私もそうです。

これまで私が見た作品としては、こんな感じ。

「睡蓮」@国立西洋美術館
「睡蓮の池」と「睡蓮」@アーティゾン美術館
「ウォータールー橋」@国立西洋美術館
「セーヌ河の朝」@国立西洋美術館
「陽を浴びるポプラ並木」@国立西洋美術館


今回の企画展は、1つの部屋を除いては全て写真撮影が禁止されています(パリのマルモッタン・モネ美術館から借りている作品がメインだからでしょう)。
ここにご紹介した作品も今回のモネ展で展示されているものがありますが、いずれも、今回ではなく、以前、撮影が許されている常設展などの際に撮影したものです。


みなさま、ざっとご覧になっていかがでしょうか?
イメージ通りのモネ、でしょうか?

実は描かれた年代で比べると、1つだけ他より10年以上遅く、1916年、76歳の時の描かれたものがあります。どれかお分かりになるでしょうか?

正解はのちほど。


3、モネの晩年=モネの執念を感じる

展示室、というかセクションは大きく5つに分かれておりました。

1、セーヌ河から睡蓮の池へ
2、水と花々の装飾
3、大装飾画への道
4、交響する色彩
5、さかさまの世界

1、で紹介されていたのが、先ほど写真をご紹介したうちの、2番目以降の作品(2枚並んだ写真のうち、「睡蓮の池」はアーティゾン美術館でお留守番でした)です。

これまでの私のイメージはまさにこれ、です。
おそらく多くのみなさまもそうだと思います。

先ほどの答えになるのですが、最初の1枚が76歳の時の作品で、「3、大装飾画への道」で紹介されていました。

同じ睡蓮ですが、2枚目の写真と比べていただけると違うのがわかると思います。その間には、13年の差があります。


とはいえ、これまで私は、1枚目の作品もモネだね、と捉えていました。
そんな意識が、「4、交響する色彩」以降の作品を見て、ぶっ飛びました。

写真撮影NGのエリアですので、言葉で説明するのは難しいのですが、HPで紹介されている画像を。

「日本の橋」1918年

いかがでしょう?
クロード・モネの作品です。えぇ。
1918年ですから78歳の時の作品です。

「日本の橋」というのは当然日本に来たわけではなく、モネが作った庭の中に作った太鼓橋のことです。そう言われてみると、中央の曲線が端に見えてきましたでしょうか?

ちなみに、ウキペディアに紹介されていた、同じ橋をモチーフにした作品をご紹介します(今回の企画展には出展されていません)。

「ジヴェルニーの日本の橋と睡蓮の池」1899年

いかがでしょう?

この絵を描いた19年後には、先ほどの絵を書いているのです。
繰り返しですが、どちらもモネ、です。

モネは1908年ごろ、つまり、68歳の頃から目の不調を感じ、1912年には白内障と診断を受けています。

つまり、視力の低下に加えて、色の識別も以前と同じようにはいかなくなっていたのです。

そんな時でも(いや、だからこそ、かもしれませんが)創作意欲を失わず、自分の庭にモチーフを求め続け、「日本の橋」や「枝垂れ柳」、「ばらの小道」、「ばらの庭から見た家」など、同じ題名の作品を執拗に描きます。

その作品群が今回の企画展の後半、「4、交響する色彩」と「5、さかさまの世界」でこれでもか、というくらい展示されているのです(ちなみに「日本の橋」は8作品)。

私が心揺さぶられたのはこの後半の展示です。

視力や色彩に異常を感じながら、それでも創作をやめようとしない、むしろ、執拗に描き続ける。。その執念をダイレクトに感じたのです。

学生時代にゴッホの絵を見たときに覚えた感覚が突然よみがえって驚きました。


4、まとめ

いかがでしたでしょうか?

生きているうちに絵が売れるようになり、理想の庭を持つ広大な屋敷に住んで、というモネに対する私の勝手なイメージがガラガラと崩れ、彼の執念を作品を通じて感じ、心を揺さぶられる経験をしました、という内容でした。

周囲の方には迷惑かとは思いましたが、平日でさほど混んでいなかったことを良いことに、最初に戻ってはじめから鑑賞し直しました。

そうするとこれまで見たことのある作品でも、違って見えるように思えてきました。人間の感覚とは全く当てにならないものですね。

ここには書ききれませんでしたが、他にも室内装飾に興味を持って描いた巨大な作品や、睡蓮に至るまでの興味の変遷、などもわかる展示となっており、大変興味深い企画展となっています。
もちろん、モネ特有の同じモチーフを繰り返し描くというのも実感できます(「睡蓮」はなんと20作品!)。

できれば、混雑状況を勘案して平日に、そして、事前にチケットを購入して(平日でしたが、チケット売り場は大変な行列でした。チケットを持っていれば、すぐに入れました)おくことを強くお勧めします。オンラインで購入可能です。

私にしては珍しくまだたっぷり会期が残っていますので、ご興味ある方はぜひ!


ついつい熱が入ってしまい、いつもより長文となってしまいました。

最後までお読みいただきありがとうございました。個人的なメモですが、どこか参考になるところがあれば嬉しいです。


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