【イギリスひとり旅】 Vol.5 カンタベリー大聖堂
大聖堂へ入る門の前でひと休みしていると、
道端で青いシャツの男性がギターを弾き始める。
後から2人来て、管楽器と初めて見る打楽器の音が加わる。
穏やかでレトロな感じのするフォークソング
街並みに合う音色とbpm
動画を撮らせてもらっていると、前を横切ろうとして立ち止まったおじさんと一瞬目が合う。
君も音楽が好きなんだねと言いたげな優しい笑みを送ってくれる。
カンタベリー大聖堂
ここでは1400年以上も毎日、
祈りが続けられている
中に入って、まずその高さに圧倒される。
美しいアーチ状の石造りの建物に、赤緑青黄のステンドグラスの光、物語を建物にしたような彫刻や壁の装飾。長崎の教会で見た赤い絨毯に落ちるステンドグラスの鮮やかな光を思い出す。木漏れ日のよう。
中庭を囲む通路のアーチも差し込む光が合わさってどこを切り取っても綺麗
外に出て青空を見上げると絹みたいな雲が流れていた。
霧のような時雨が日に照らされて肌に注ぐ。
観光客の連れた白黒の大型犬2匹と何度かすれ違う。
大聖堂の地下は薄暗く、教室のような小さな部屋がいくつもある。中心には椅子がたくさん並べられた円形の空間があって、その奥の暗闇に聖母像をみとめる。人は疎で、目を瞑っている人やじっと奥を見ている人がいて、
宗教にはほとんど無知なのだが、
自分も椅子に座らせてもらう。
蝋燭が揺れるのをゆっくりと見つめる
神様ってどんなのだろうと、考えていた
まったく嘘をつく必要のない存在なんだろう
明け透けに、もっとも正直にすべてを見通しているような
自分の中の自分に耳を澄ませてみる
大聖堂の外にあるベンチで横に座っていた日本人の留学生と話したり、ノートに絵を描いてみたり
夕方の5時になって、カンタベリー大聖堂の”even song”に参加するため再び中へ入る。
ミサの衣服をまとった女性が穏やかな笑顔で迎えてくれる。
そのときに聴いた”Good evening”が今でも忘れられない。夜の静けさに沁み入るように優しく美しい響きをしていた。
その日の目次が書かれた紙を受け取って、奥の広い部屋へ。聖歌隊のすぐ横、一列目の席に座る。
聖歌隊のうねるように上がってゆくハーモニー
ひとりが同じトーンで歌ったあと(お経に近いような)、5声に分かれた20人くらいの聖歌隊の歌声が一斉に綺麗に重なって展開していく。
アーチ状の高い天井まで空間全体が響いて揺れるその瞬間に鳥肌が立つ。夢がひとつ叶った瞬間だった。
ちょっと大きめの赤いバイブルを、今日はこのページだよって貸してくれた後ろの席の陽気なおじさん。帰り際にちょっと話して、またおいでと言ってくれた。
その日は大聖堂の近くのtamagoという日本料理屋さんで豚骨ラーメンを食べた。オーナーの女性は確か7年前にこっちに移ってお店をしてると言っていた。近くの席で、たこ焼きを絶賛する声が上がる。