靴音

01, Dec., hyogo

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    考えていること、空想、勘違い、たまに書いていくかもしれません。22/02/01

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禅と競技かるた、雑観

その空白の一瞬に 自分の無意識を見た気がした 高校で「競技かるた」を始めて1年くらい経ったころ、ある日の放課後の試合で感じた“楽しさ”が今でも忘れられない。 試合も終盤に差し掛かり、決まり字が「o音」となった「小倉山」の札が敵陣の左上段に並ぶ。「お」の文字が詠まれる刹那、気づいたときにはもう右手は札を払っていた。自分ではないような速さで、自然で綺麗なストロークで。純粋な喜びと爽快感が全身を駆け巡る。 家に帰ってから思い出すと、なんだか身体が勝手に動いたような感覚だった。

    • 青に別れて、夏に発つ

      Aug.’24 これまでの記憶を真の意味において忘れることができたら、時の流れはどれほどゆっくりとしたものになるだろう。毎日はどれほど刺激的で鮮烈なものになるだろう。 しかし私はそれを望まない。今も絶えず一歩一歩、未知で開かれた“世界”へと歩いて行っているという認識と、全感覚をまとって毎日を新しく創作していく智慧によって、刺激的で鮮烈でかつ懐かしさを愛する毎日を、歩いて行きたいと切望する。 --- 青に別れ, 夏に発つ 二十余年 月日を重ねても 新しい花は咲く あの丘

      • 【イギリスひとり旅】Vol.12 Bush Hall 「The Petersens」

        イギリスをひとり旅すると豪語したのは数年前だけれど、この夏に行こうと決め手になってくれたのはThe Petersensのヨーロッパツアーの告知だった。 2023年の春にYoutubeでHere Comes The SunのギターTABを探していたときに流れてきたHere Comes The Sunのカバー動画に深く心を動かされる。 ブルーグラスのフィドルやマンドリンやブルースギターの音色が自分にとっては新鮮で、何より、全ての瞬間から伝わってくる音楽を自然に楽しんでる感じ。き

        • 【イギリスひとり旅】Vol.11 ユニオンチャペル Jacob Collier

          リヴァプールからロンドンに戻ってきて、 Elephant & Castle St. の近くにあるホステルへ ここでの4泊の間にも沢山出会いがあった。 夕方、ロンドン中心部より少し北にあるUnion Chapelへ向かう。立派な造りの礼拝堂に入場待ちの人の列。空いていたので2階席へ。 Jacob Collier 2022年秋に“ジェシーワールドツアー”で来日してくれたときに、大阪のBigCatのライブハウスで頭が吹き飛ばされるほどの衝撃を受けた。“生きていたいと思うために生

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          【イギリスひとり旅】Vol.10 リヴァプールは鳴り止まない

          朝になると、昨夜寝る前に寒気がして熱っぽかったのもすっかり治っていた。宿を出る前、Robが寂しいってジェスチャー混じりで言ってくれて、I miss you, too!って咄嗟に出てきた言葉を返す。最後は英国紳士風にドアマンの役を笑いながらやってくれた。またいつか会えると嬉しい。 朝露が葉について緑が光沢を帯びていた朝 Forget me notと文字が書かれたターコイズブルーのお店を過ぎて、Windermereの教会の前のベンチでしばし余韻に浸る。新しい出発の日。 電車を

          【イギリスひとり旅】Vol.10 リヴァプールは鳴り止まない

          【イギリスひとり旅】Vol.9 グラスミア湖

          Grasmere ニ階建てバスからの風景、 湖のほとりで水浴びをする人と犬 小さな湖が光を受けて細やかに輝く 木々のしなり方まで美しく感じる 緑の小道と石造りの家々 平たくて黒っぽいスレートの石材が積まれた塀が道沿いにずっと続く。山々は植物の背丈が低くて、氷河が削ったような面持ちをしている。目を凝らしてよく見ると尾根沿いに羊の柵のようなものが長く連なっている。 小鳥が鳴く公園のベンチ、 思い思いにゆったり過ごす人たち Sarah Nelsonの店で買ったジンジャーブレッド

          【イギリスひとり旅】Vol.9 グラスミア湖

          【イギリスひとり旅】Vol.8 ウィンダミアの少年

          湖水地方 ウィンダミアの図書館の傍、教会のようなつくりの建物、夕方6時過ぎの薄暗さ 街の家の屋根や塀には、薄っぺらい黒い石材(スレート)が使われていて、どの通りを切り取ってもこの街だとわかるほど。 携帯の地図を見ていると、どこからか子どもの声がする。ふと振り向くと、丸まった声で興味津々にこっちをみる瞳 “Where are you from?” スケートボードをもった青い上着の少年 後ろにもう一人、様子を伺うようにこっちを見てる弟らしき男の子 Japanと言っても、聞いたこと

          【イギリスひとり旅】Vol.8 ウィンダミアの少年

          【イギリスひとり旅】Vol.7 北上する列車

          昼前にカンタベリーを出発する。あの小さな教会に立ち寄って、街の景色を思い浮かべながらバス停へ向かう。バスで2時間ほど揺られて、ロンドンのストラトフォードへ。そこから地下鉄を使ってユーストン駅へ向かう。 切符の買い方を情け深い駅員さんに助けてもらい、迷いながらもなんとかグラスゴー行きの電車に乗り込む。国鉄で4時間弱かけて、イングランドを一気に北上する。湖水地方にあるウィンダミアという街まで。 車内はかなり混んでいて、空いている席がなかなか見つからない。通路を空けるために座った

          【イギリスひとり旅】Vol.7 北上する列車

          【イギリスひとり旅】Vol.6 ドーヴァー海峡に臨んで

          翌朝、カンタベリーで2日間ゆっくり過ごす予定を急遽変更することに。カモメの声につられて、どうしても海が見たくなった。今日もよく晴れて、水路が輝いている。 電車に乗って港町ドーヴァーへ向かう。 Ashford Internationalの駅まで戻り、乗り換えてDover Prioryの駅まで 帰りに知ったのはバスの方が早くてかなり安いということ。乗り方は一緒に並んでいる人に聞いたりして。 駅から坂がちの街並みを降りて、海辺まで歩く。 海は澄んだ水色 砂の代わりに指先ほどの

          【イギリスひとり旅】Vol.6 ドーヴァー海峡に臨んで

          【イギリスひとり旅】 Vol.5 カンタベリー大聖堂

          大聖堂へ入る門の前でひと休みしていると、 道端で青いシャツの男性がギターを弾き始める。 後から2人来て、管楽器と初めて見る打楽器の音が加わる。 穏やかでレトロな感じのするフォークソング 街並みに合う音色とbpm 動画を撮らせてもらっていると、前を横切ろうとして立ち止まったおじさんと一瞬目が合う。 君も音楽が好きなんだねと言いたげな優しい笑みを送ってくれる。 カンタベリー大聖堂 ここでは1400年以上も毎日、 祈りが続けられている 中に入って、まずその高さに圧倒される。

          【イギリスひとり旅】 Vol.5 カンタベリー大聖堂

          【イギリスひとり旅】 Vol.4 街歩き Canterbury

          あくる日、Sainsburyのスーパーで朝食を買って、カンタベリーの街を探検することにした。 古い石壁、斜めに傾いた作りの家、お菓子屋さんの鮮やかなショーウィンドウ、中古ゲーム屋さんのニンテンドーソフト、Yu-Gi-Ohカード、ポケカ、野外の果物市、大聖堂から聴こえてくる鐘の音、 澄んだ水路には水草がゆらめいていて、ときおり小舟が通っていく。カモメが鳴く朝、海が近い。 辺りを見ながら歩いていると、 ふと小さな教会が目に入る。 かなり古そうな石造りの建物 手前には緑の広場、真

          【イギリスひとり旅】 Vol.4 街歩き Canterbury

          【イギリスひとり旅】 Vol.3 旅とポケモン

          ロンドンからカンタベリーへ向かう電車に乗る。 かなり混んでいたので、窓際の二人席に座っていた男性に後ろから声をかける。 "Would you mind if I sit in here?“ さっきキングスクロス駅のベンチで盗み聞いたセリフをさっそく使ってみる。 快くいいよって言ってくれて、なんだか目がキラキラした方だなあと思う。5つくらい歳上に見えるその男性は、しばらくずっとスマホをいじっていたのだが、ちらっと目に入った画面に釘付けになった。ポケモンをやってる!! 携帯の上半

          【イギリスひとり旅】 Vol.3 旅とポケモン

          【イギリスひとり旅】 Vol.2 想像の外側を歩くこと

          どうしてか、 一人旅というものに強い憧れをもっていた。 初めて訪れる街を自分の足で歩く。その街で出会った人と話して、感じて、自分の街とはどこか違うその街の日常に触れる。身に起こるすべては、まるっきり想像の外側である。別れ道は気の向いた方へ進み、ふと心惹かれた店に入ると、居合わせた人と“どこから来たの”って自然と会話が始まったりして、別れて、また新しい出会いや発見があって、そうこう練り歩いている内に、その街の地図がだんだん頭の中に描かれてゆく。その過程を楽しむ。 “場所を変

          【イギリスひとり旅】 Vol.2 想像の外側を歩くこと

          【イギリスひとり旅】 Vol.1 旅の終わりに

          昼過ぎ 帰りの飛行機でこれを書いている。 今朝、まだ薄暗い中ふと目が覚めた。 アールズコートの斜めの天井の窓が 少しずつ白んでいく。 ピョョルルリ!鳥が窓際で歌っている。 Blackbird singing in the dead of night, You’re only waiting for this moment to arise. ベッドのはしごを伝って降りて、顔を洗って支度をする。良い表情をしている。昨日仲良くなったDanielにありがとうとメモを残して

          【イギリスひとり旅】 Vol.1 旅の終わりに

          【イギリスひとり旅】 Vol. 0

          辺りは光が差し込んだ朝靄の淡い色をしていて、目の前に川が横たわっている。こちら側の世界から淡く光る粒子が集まって言葉を形づくる。それが川を渡って向こう岸に届く。いつかこんな絵を描いてみたいと思う。 帰ってしばらくは写真を見返すのが怖かった。とにかく夢中だった。ずっと旅をしていたような気がする。目で見た風景が、静止した写真に上書きされることが苦しくて、溢れる記憶を言葉にしてしまうことがしばらくは恐ろしかった。ひと月ほど経って、ようやく心の根っこまで感覚が届いたような気がして、

          【イギリスひとり旅】 Vol. 0

          憧れで雑記

          「憧れ」について書きたくなったので筆をとる。 あなたは何かに憧れていますか? 小さい頃の「将来の夢」なんかは自分の未来像に憧れたもので、初恋は、自分とは違う美しさをもった誰かへの強い憧れで、いまだに僕は、そういった感情に導かれて生きている。私は憧れへの流れである。どれだけ絶望的な世界に見えても、絶えず美しい方へ向かっていこうとする流れとしての今が自分であると思っている。 “アイデンティティ”という言葉があるが、そもそも自分とは何なのか どこまでが自分で、どこからが自分以

          憧れで雑記