枕草子のお正月
江戸時代までお正月は旧暦。
今年の暦では一月二十二 日が旧歴の一月一日。
というより、明治時代以前の人々は旧暦の世界で生きていたのです。
お月さまの満ち欠けを物差しに生きていたのです。
中国はじめ東南アジアの国々は今でもお正月は旧暦で祝います。
お正月だけは絶対に西洋の暦にするものか、と民衆が大変な抵抗。結局、お正月は旧暦で、となりました。
それが春節。
日本人は何の抵抗もなく、お上に従い、きれいさっぱり旧暦を捨てたのでしょうか。明治五年、突然、「太陽を基準にした西洋暦(グレゴリオ暦)に替える」と布告が出され、動転しなかったのでしょうか。
私が調べた範囲では、「旧暦を印刷したら投獄。暦に大安とか大吉とか迷信を記したら処罰」という手段をとった。これで一気に旧暦の暦は消えたのです。」
なんとタリバンな明治政府……。
それはさておき……。
古典の世界に浸るには、わたしたちはまず旧暦に頭を置き換えなければなりません。江戸時代までの人のお正月は現在の二月初旬のころなのです。今年はたまたま一月下旬に当たりましたが。
枕草子三段で清少納言は、
正月一日は、まいて空のけしきもうらうらとめづらしう、霞みこめた
るに、世にあるとある人は、みな姿、かたち心ことにつくろひ、君を
もわれをもいはひなどしたる、さまことにをかし。
新編古典文学全集・枕草子・小学館
お正月の格別感、歓び、晴れやかさが伝わってきます。
一日には「餅鏡」を飾り、元旦から三日間、餅と一緒に大根、瓜、芋、雉の肉など食べて、幼児には食べる練習をさせて、歯が丈夫になることを祈りました。当時の人も、「丈夫な歯こそ寿命なり」と知っていた……。
清少納言は冒頭、お正月の食べ物や儀式には触れず、空の景色とか人々の様子を描きました。この短文、現在の一月一日より二月にふさわしいと思いませんか。
お正月の空を見て!
うらうらと清らかで、霞がたっている~
世の中の人はみーんな、綺麗に着飾り、いつもと違う姿になってるよ!
心までいつもとは違うんだよ。
そして、お仕えする主君さまや自分のこともお祝いするんだ。
ほんとにいつもとは違う日よ~ ああ、最高~
訳 長谷川
わたしも、お正月は新しい下着を身につけるとか、お箸を新しくするとか、何かひとつはピカピカにします。
心構えを新しくしたいから。
平安時代の人は地球が太陽の周りを一周したとか、そんな知識はないけれど、お正月には「まっさらなもの」を感じたのでしょうね。
清少納言の感じた晴れやかさ、日にちはずれていても今のお正月も同じです。
清少納言さん、
明けましておめでとうございま~す
あけぼの空はまだ暗いですが、とっても清らかです
グレゴリオ暦一月二十二日
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