見出し画像

ヘルマン・ヘッセを再び

本箱の整理をしていて、
ヘルマン・ヘッセの本を見つけた。

『庭仕事の愉しみ』

本を開く
ヘッセの庭を描いた絵画や写真を見ていると
懐かしさと哀惜の思いがこみあげてきた。

「卒論を共同作業で書こう。
ヘッセの『デミアン』をテーマに」

一年先輩の男性に誘われた。
なぜあの時気乗りしなかったのだろう。

彼は確かに私を好きだった。
だがそのとき私は
『ウェストサイド・ストーリー』のトニーに、
主演のリチャード・ベイマーに、
憧れていた。

あの人と

いっしょに卒論を書いて、
そして結婚……
すればよかった。

しかし、
運命はそんなに単純には運ばなかった。

私は塾の講師をしたり、
調停委員をしたり
自ら自分を忙しく駆り立てた。

のんびりした人生もあっただろうに。

今も自分を自ら忙しくしている。
多分、性分なのだ。

『庭仕事の愉しみ』
をめくりながら
過ぎ去って行った日々に思いを馳せる。

静謐な時が流れる。
ヘッセの随想は
心を癒してくれる。

学生時代にヘッセを読んだが
何も分かってはいなかったのだ。
                                                              終り

                                                     





いいなと思ったら応援しよう!