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観る!やる!世界が広がる!ブラインドサッカー「LIGA.i」がキッズ・レジャーとしても楽しめる理由

面白さを探さなくても、面白い。

スポーツに限らず、何か初めての体験をするときには、これがその後の興味を左右すると思います。
そこに縁を感じるというか、出会いがあるというか。
子どもが体験するものなら、なおさら。

今のところとりたてて障害のない自分にとって、
パラスポーツや障害者スポーツの面白さを知るには、
想像力を働かせる必要があったりします。ちょっとアタマを使う。
そこが妙味であり、人によってはハードルになることもあるのでは、と。

しかし。
ブラインドサッカーのトップリーグ「LIGA.i」は、まったく違いました。

エゲツないほどの肉弾戦で、興奮必死の試合観戦。
プレーがどれだけ超人技なのか、身を持って知れる体験教室。
それらを通して、競技の面白さと選手の凄さ、
そして自分の知らない「見えない世界」を、
直感的に、しかも楽しく体験することができる。
結果、さらに競技が面白く見えてくる。

観る、やる、世界が広がる。
そんな相乗効果を生み出す仕掛けが、「LIGA.i」にはあったのです。
実際に会場におもむき、これがとんでもなく面白かったので、ここに書き留めたいと思います。

想像を遥かに超えてた!ブラインドサッカー・トップリーグ「LIGA.i」の盛り上がり

日本に、ブラインドサッカーのトップリーグがあるのをご存じですか?
はい。私は知りませんでした。
その名もLIGA.i。ブラインドサッカーのクラブチーム日本一を決めるリーグです。

LIGA.i、どうやら今年から発足してたみたいなんですが、ネットニュースかなにかで目にしてから、ずっと気になってたんですよね。
「ブラインドサッカーにトップリーグ?人来るの?」
「そもそも、そんなにチーム数あるの?選手いるの?」
と。

熱狂的に盛り上がっているストリートコンテンツ的なものを感じて、とても興味がありました。
大成功といわれるロンドンパラ2012ですら、その後あまりパラスポーツ人気が定着したとは聞こえてきません(勉強してないだけかもですが)。
パラリンピック2020以降、日本のパラスポーツはどういう道を進むのか。
気になっていた、というのもあります。

ということで9月23日(金)、LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2022の第三節を観戦してきました。
会場は東京・墨田区の、フクシ・エンタープライズ墨田フィールド。

会場に入った瞬間から、自らの浅学を恥じたわけです。
すげー人いんじゃん!
どこがストリートコンテンツなんだと。

確かに、最寄りの駅から、
「なんか同じ方向に歩いていく人多いな」
とは思ってたんですが、みんなこれを観にきていたとは。祭か何かだと思っていたら、この会場への観客でした。
私、完全にナメてました。

指定席エリアもほぼ満席。当日は雨だったことを考えると、脅威的とも言えるのではないでしょうか。

自分だけが注目してたわけじゃない、と。
思い上がりも甚だしい、と。
まざまざと思い知らされたわけです。

もちろんチケットはSOLD OUT続出。良い席からバンバン埋まってました。
チケット予約して行ってほんとよかった。あっぶねー。

会場はきれい。芝生も美しい。
スポーツカルチャーを堪能するには文句のつけようがない環境。グッドバイブス!

スタッフ多い。規模デカい。運営もばっちりで、体制に安心感があります。
チケット入場口で私のチケットQRコードが表示されないというトラブルがあったのですが、
スタッフの方は親切かつ柔軟に対応してくださり、問題なく試合に間に合いました。

私、サッカーを生で観戦するのは、中学生のときに行ったJリーグ初シーズンの決勝戦以来。
もうここで、アドレナリンがドバドバ。
非日常のワクワク感に満たされました。

ゴッ!グフッ!生々しい衝突音は静寂のサッカーならでは。リーグ初代王者は埼玉T.Wings

これが当日の試合スケジュール。4チームが出場するので、初代王者決定戦と二位決定戦の2試合が予定されていました。

試合前や試合と試合の合間には、日本チアダンス協会のチアダンスオールスターチーム「Team JCDA」によるパフォーマンスも。
さすがオールスターチームのみなさん。観客の盛り上げすごくうまい。
オジサンたちを躊躇なく煽ります。
私も、否応なく盛り上げられ。振り付けつきで歓声を送りました。

第1試合 埼玉T.Wings vs buen cambio yokohama

埼玉T.Wingsは、ブラサカ界のダンタジスタ・菊島宙選手が所属している強豪チーム。
かたやbuen cambio yokohamaは本リーグでまだ未得点。
これはワンウェイか、という素人予想に反して一進一退の攻防でした。

あらためて感じたのは、やはり選手の動きの凄さ。
凄さを通り越して、不思議でしょうがないのです。
「本当に見えないんですか?」
と。

ボールがある場所、チームメイトや相手選手がいる地点へ正確に行く、というのは、我が目を疑いつつも、なんとか理解はできます。

でも。
信じられないのは、ボールが転がるであろう地点、相手選手が走っていくであろう地点にも、選手は走っていくのです。
まっすぐ迷わず、最短距離で。
どうやって???
見えていても難しいことを、視覚がない状態で実現している。
ただただ口あんぐりです。
これだけでも、試合から目が離せなくなります。
ずっと
「はぁ〜」
とか
「えぇ〜!」
とか口から漏れてしまいますが。

試合後、菊島選手はメディアのインタビューでこう答えていました。
「ボールが足に当たった感触、どこに当たったか。それを感じながら、ボールの行き先をイメージして走っていく」
と。
おっしゃってることはわかるんですけどね。
それをどう実現しているのか、想像もつかない。
もはやイリュージョンです。

埼玉T.Wingsには、視覚障害を持たない、つまり”見える”選手も所属。
見えない人も、見える人も、目を隠せば条件は一緒。ごっちゃになってプレーできる。
それもまたブラインドサッカーの大きな魅力の一つではないでしょうか。

試合の結果は埼玉T.Wings​ 2-0 buen cambio yokohamaで、埼玉T.Wings​の勝利。
この時点で、埼玉T.Wings​が初代王者に決定しました。


第2試合 free bird mejirodai vs パペレシアル品川

続いての第二試合。これは二位決定戦でもありました。
free bird mejirodaiパペレシアル品川、いずれのチームも日本選手権大会で好成績を残している強豪です。
この試合が、とにかく肉弾戦でした。

相手選手とぶつかる。チームメイト同士でぶつかる。ボールも顔面にぶつかる。
つまりピッチの衝突事故、連発。
(結構、選手の顔面に入るんですよね。相手の頭が)

選手と選手の激しい攻防は、ブラインドサッカーの大きな見どころだと思っています。
サッカーの試合だったらファイルなプレイも、ブラインドサッカーならあり。
この点、格闘技にも通じるものがあります。

ブラインドサッカーは、言わずもがな音を頼りにプレーするスポーツ。
ボールに仕込まれた鈴、コーラーやキーパーの指示、選手の「VOY!」という掛け声などを邪魔しないように、試合中は静寂が観戦マナーです。

なのですが、この静寂は、観戦の興奮を盛り上げるのにも一役買っています。
というのも
「ゴッ!」
「ガキッ!」
「グフッ・・・」
そう。選手同士がぶつかる音が、如実に聞こえてくるのです。
衝突音といいましょうか、肉弾音といいましょうか。
もう相撲の立ち会いのような、骨と骨がぶつかる音が。
かなり離れたスタンド席まで。

そりゃね、血沸き肉踊りますよ、本能的に。

試合後、パペレシアル品川の選手がメディアの取材にこう答えていました。「試合が終わって、ふくらはぎに相手の爪先が入ってるのに気づくことがあります」
つまさきがふくらはぎに入ってるってなんだよ!
別の選手は顔面をアイシングしていました。
「鼻に(相手選手の頭が)入っちゃって・・・」
もはやボクシングです。

(選手同士がちゃんと謝るところも印象的でした。というか、謝る相手のところにスムーズに行ける、というのにも驚きました)

目を塞がれた状態で全力疾走しろ。
そう言われても、私はできる自信がありません。
でもブラインドサッカーは、その先に相手選手がいる、ゴールポールがある、サイドパネルがある。当然ボールも飛んでくる。
選手はそれを承知で、猛ダッシュしていくのです。

これ、どんなにフィジカルを鍛えても、そうそうできることではないと思うのです。
ブラインドサッカーはある意味、マインドスポーツでもあるのかもしれません。
勇気を競う競技。

試合は、free bird mejirodai、パペレシアル品川ともに無得点のままPK戦に突入。
結果、
free bird mejirodai 2-0パペレシアル品川​(PK)
free bird mejirodaiが準優勝に輝きました。

表彰式。埼玉T.Wingsが初代王者に。

第三節を終え、LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2022は
優勝:埼玉T.Wings​
2位:free bird mejirodai
3位:パペレシアル品川
4位:buen cambio yokohama​ ​
という結果に。

初代王者に輝いたのは、埼玉T.Wingsでした。

菊島宙選手は、得点王と最優秀選手賞を獲得。
ブラインドサッカーは男女混合というのも魅力ですね。
女性選手が男性選手を軽妙に抜く、あるいは力強く跳ね飛ばすシーンは、
なぜか胸のすく思いがします。
「いけー!ぶっとばせー!」
歓声としては出せませんが、観客の多くは心の中で、そう興奮していたと思います。私だけですかね、そんな野蛮な見方・・・。

観戦を2倍面白くする、ブラサカ体験とホスピタリティ。子どもが多いのも納得

ブラインドサッカーの魅力に加えて、「LIGA.i」というイベントそのものにも、とても多くの魅力がありました。
それは、体験とホスピタリティです。

会場に入るとすぐに、ブラインドサッカー体験会の案内が。チケットを見せる入場口よりも手前にあるのです。

そして足元には、ブラインドサッカーで使われる、鈴入りのボールも。
私がしげしげと写真を撮っていると
「蹴ってみてください。こんな機会、なかなかないですよ」
とスタッフの方が。

実際に蹴らせてもらいました。
固い。硬い。堅い。
想像以上にハードコアな感触。
鈍器を思わせる存在感でした(軽いんですけどね)。

これ、飛んでくるのか・・・。目隠しして・・・。マジか・・・こ、怖い・・・。

会場の近くには飲食店は一切なし。
そこに配慮してか、会場にはキッチンカーも3台。
この日は、ロコモコなどのハワイ系料理と、ベトナム風サンドイッチバインミー、ケバブのお店。
私は右のお店のケバブをいただきました。「おつまみケバブ」。炭水化物入ってないやつ。観客席で美味しくいただきました。

無料でラジオも貸してもらえます。
試合中は実況の声がプレーの妨げになります。なので、ラジオ。
チームや選手の情報をきけると、観戦体験も充実したものになるのは間違いありません。
実況がちょいちょい間違えるのが、愛嬌があって微笑ましかったです。
めくじら立てないおおらかさ大事。

会場では、キッズの姿も目立ちました。たくさんの来場です。
感覚的には1割くらいは児童だったのではと。
ブラインドサッカーを観たり体験したりしようと、親御さんと一緒に来ていました。
白杖をもった子だけではなく、”見える子”たちも元気に来場していたのが印象的です。

それもそのはず。
試合と試合の合間に、子ども向けのブラインドサッカー体験教室も開催されるのです。
どうやら予約は埋まっていたみたい。それくらい人気。
目の見えない子も見える子も、目を隠せばハンデなし。
子どもたちはキャーキャーいいながらボールを回していました。
この体験、きっとこの子たちに強烈な何かを残すのではと。

「観る」と「やる」の相乗効果。その先にある「知らない世界への学び」。

初代王者決定の歴史的な瞬間に立ち会いながら、思ったことがあります。

ブラインドサッカーの観戦は
「あれ、(見えないのに)どうやってるの?」
という好奇心を必ず刺激する。
しかも、その好奇心を満たす体験が、すぐそこに用意されている。
体験すれば、観戦は必ず数倍面白くなる。
観戦(観る)と体験(やる)の相乗効果が、そこにはしっかりとありました。

そしてそれは、子どもにとっては「見えない」という知らない世界を知るきっかけにもなる。
これは、スポーツ観戦という枠組みに止まらない、認知や思考の次元を少し上げる体験になると思うのです。

「ブラインドサッカーでは、共通言語がありません。相手の立場になって声をかけあわないとピッチでは通用しないのです」
埼玉T.Wingsの加藤キャプテンの言葉です。
これを心と体とアタマで体験できる。しかもワクワクドキドキ楽しみながら。
それがLIGA.iの試合会場でした。
子どもと行かない手はない。そう思えるレジャーだと言い切れます。

そしてもう一つ印象的だったのが、運営スタッフのみなさんの明るさというか、とにかく楽しそうなのです。
機嫌がいい。今や機嫌のいい大人は絶滅危惧種です。

大人がDIYで、ごきげんな顔で、好きなことに取り組んでいる風景。
たとえそれが、まだまだ黎明期のスポーツだとしても。
いやだからこそ、好きなことがある尊さのようなものが、ここにはありました。
その姿勢もまた、子どもに見せたい大人の在り方だと感じました。

どうやら2022年12月には、日本選手権があるみたいです。
第20回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権 予選ラウンド
LIGA.iが初開催だったのに対し、こちらは第20回。歴史がありますね。
(どうやら今後、日本のブラインドサッカーは、LIGA.iと日本選手権のW体制で活動するみたいですね)。

ぜひこちらも行ってみようと思いました。
でも、成田か。ちょっと遠いかな。。。2023年2月の町田まで待つかな。

終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。



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