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四季折々の俳句 8




「 梅雨 」

町ぢゆうをいやさんとして大き虹

熱々の蕎麦をすすらん梅雨に入る

遠き日のわかれをおもふ梅雨の雷

逢ひたさのつのるばかりよ蛍の夜

なつの灯やふたりでつくる親子丼

寝ころびてまことすずしき畳かな

わらひつつ逃げまはる児の洗ひ髪

魂のひかりだすまでシャワー浴ぶ

天そばにこころは晴れて梅雨かな

貴族にはあらねど紅きゼリー食ふ

太陽をひとつもぎとるトマトかな

スサノオかヤマトタケルか雲の峰

晴れぞらへ背すぢのばして花菖蒲

いつ見てもうしろ姿のかきつばた

かがやいて白きのれんの鮓屋かな

飯どきのあかりに照りていなり鮓

ひとくちの幸をいただくにぎり鮓

見渡してふたたびは来ぬ鮓屋かな

ガラス器に真珠びかりのしら玉よ

ともかくも今にかんぱい生ビール

見るひとの心にも咲くあやめかな

あじさゐの青きたましひ描く画家

歳月を追うてすすむかかたつむり

子どもらのまんなかに母涼しさよ

太陽をまぶしんで飲むラムネかな

空をさすゆびより翔てりてんと虫

玉ねぎもうまいぢやないか牛丼屋

のびをしてながむる富士は五月晴

見わたして終ゆる今年の田植かな

とほき日とかはらぬ声の河鹿かな

路地奥へ冷しラーメン食ひに行こ

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