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四季折々の俳句 29
「 詩集より蝶 」
春一番目をみひらいて吹かれけり
わらうては春のひかりをはなつ君
蝶よりもかろやかに人ゆく野かな
富士といふにつぽんいちの山笑ふ
手にすくふ水やはらかき春ならん
早わらびや来てはすぎゆく人の声
東京をとほくはなれてのどかなり
一人住む庭はたんぽぽばかりかな
につぽんといふ国一つおぼろなり
☆
ほほ笑んで平和な世なり雛まつり
踏んづけしひとつぶは花雛あられ
手をはなれそれつきりなり流し雛
いちばんに土筆の出でし荒野かな
ときに嵐ときに春かぜギターの音
ホワイトデーいよいよ近き放心す
卒業ののちのじんせいかたらふ夜
大き手で団扇をつくるさびしさよ
晩酌に酔ふほどにわれおぼろなり
☆
たがやしてつくる故郷の歴史かな
野にひらく詩集より蝶舞ひあがる
ならびゆくはなうたのひと春日傘
どかと居る兜太そのものわらふ山
そのなかを白き龍ゆくかすみかな
真向かうて夕日に染まる遍路かな
しづまれる池の底より初蛙
いまにしておもへばこの世朧かな
たましひの話しとなりぬおぼろ月