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現代語俳句への旅 17


「たどりつく海」
~現代語俳句集~

果てのないそらがあるだけ立冬よ

ぼうぜんとふる里に立つすすき原

生きてゆく音たてながら落葉踏む

ほかはみな風にきえたかのこる虫

もより駅すこしはなれて熱燗酌む

湯どうふのむこうにゆれる歳月よ

湯ざめして星がかがやきだす故郷

しろえらぶおとこは詩人冬の薔薇

あかえらぶおとこは画人冬の薔薇

平和とは燃えやすいもの聖樹立つ

焼き鳥屋笑いそのものではないか

日向ぼこ天にあそべということか

寒ざむとのぼる俳句という富士よ

芭蕉読んでたどりつくのは冬の海

鹿鳴いて奈良はしずかよ神の留守

おおかみの記憶ばかりがのこる山

寒つばき紅いってんのまぶしさよ

親ふたり亡くしたおとこ燗酒くむ

くじら汁こころがたどりつく海よ

風邪に寝て時がとまったままの夜

からす飛ぶ果てまでもビル冬夕焼

ここもまたそらかもしれず春の丘