現代語俳句への旅 17
「たどりつく海」
~現代語俳句集~
果てのないそらがあるだけ立冬よ
ぼうぜんとふる里に立つすすき原
生きてゆく音たてながら落葉踏む
ほかはみな風にきえたかのこる虫
もより駅すこしはなれて熱燗酌む
湯どうふのむこうにゆれる歳月よ
湯ざめして星がかがやきだす故郷
しろえらぶおとこは詩人冬の薔薇
あかえらぶおとこは画人冬の薔薇
平和とは燃えやすいもの聖樹立つ
焼き鳥屋笑いそのものではないか
◇
日向ぼこ天にあそべということか
寒ざむとのぼる俳句という富士よ
芭蕉読んでたどりつくのは冬の海
鹿鳴いて奈良はしずかよ神の留守
おおかみの記憶ばかりがのこる山
寒つばき紅いってんのまぶしさよ
親ふたり亡くしたおとこ燗酒くむ
くじら汁こころがたどりつく海よ
風邪に寝て時がとまったままの夜
からす飛ぶ果てまでもビル冬夕焼
ここもまたそらかもしれず春の丘