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【創作】はじまりのアオ

「ねぇママ。見てよ!また生まれたての赤ちゃんだよ。」

「えぇ、そうね。この辺りはまだ新しいから赤ちゃんが多いのね。」

「ボク、この子好きだなぁ。なんだかすっごくふわふわしてて素敵な子だよ。」

「ホントだねー。」
「そうだねー。」
「かわいいねー。」

兄弟姉妹たちも口々に賛同した。

「よし、決めた!ママ、ボクあの子に会いに行ってくる!」

先頭をけていたママがギョッとして振り返る。

「何を言っているの。あなただってまだまだこどもよ。置いて行けるわけないでしょう!」

ママが引き留めようとするのは分かってた。ボクがまだまだ未熟だってことも。でも、とんでもなく素敵なことが始まるっていう予感で衝動が止められないんだ。感じるんだよ、この子は特別だって。

ボクは体の芯にグッと力を込めて熱を上げると、一気に噴射して進路を変えた。

「あ、お兄ちゃん、ずるぅ〜い!」
「いっしょに行くぅぅ!」

騒ぎ立てるこどもたちをしっかりと掴まえてママが叫ぶ。

「まったく、あなたって子は!ムチャはするんじゃありませんよ。次に会いに来る時まで、健やかでいるんですよ!」

大きく美しい尾を引いて遠ざかっていくママ。急に寂しくなって涙がこぼれた。漆黒の宙を雫がキラキラときらめいて消えていく。

「ママ、ありがとう!みんなも元気で!またね〜っ!!」

ママに負けじと尾を引いて別れを告げる。でも永遠の別れじゃない。軌道に乗って翔けている限り、必ずまたここで会えるんだもの。

さぁ、いくぞ!涙を吹き飛ばし、視界に彼女を捉える。澄んだアオの光を称えた小さな小さな美しい惑星。

冷たい漆黒の宙から真っ直ぐに彼女に飛び込んだ。

大気に触れた途端、風を切る爆音と衝撃に体が燃えていく。焼けつく熱さと、切りつけるような冷たさに耐えながらようやく見つけた。彼女がその内に抱いていた生命の源。

ついに地表に落下したその衝撃は彼女を丸ごと揺らした。アオが溢れ大地を飲み込む。彼女はその衝撃に目を覚まし、大きく咆哮した。

ようやく鎮まると、彼女はゆっくりと問うた。

「せっかく気持ちよく眠っていたのに。あなた一体誰?」

「やぁ、はじめまして。ボクは宙を翔ける彗星だよ。いや、彗星だった…かな。」

「ふぅん。広い宙を思いっきり翔けることができるのに、わざわざこんなところに落っこちてくるなんて、物好きね。」

「だって、キミみたいに綺麗な子、初めて見たんだもの。それを伝えなきゃ絶対後悔すると思って、勇気を出して飛び込んでみたのさ。」

「ふぅん。」

2度目の「ふぅん。」は1度目のそれとはちょっぴり違った。


***

これがボクと彼女の出会い。

あれからママたちが何度も上空を翔け抜けていった。ママは相変わらず美しい尾を引いてボクらにウィンクしていく。

ボクはもう宙を翔けることも尾を引くこともできないけれど、大好きな彼女の一部になってこの宙にアオを放っている。彼女は本当に特別だ。この広い宙に数多あまたある惑星の中で唯一無二の存在なのだ。

彼女が抱く多様な生命の営みは美しく、儚く、逞しい。そこには語り尽くせぬほどの物語が刻まれている。

さぁ、今日はどんな物語を話そうか。キミたちにも聞かせてあげよう。

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クルクリ
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