【5分】元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法 要約/まとめ/感想
資産運用はギャンブルではない
こんにちは。くろです。
今回は"元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法"の要約、まとめ、感想です。
著者はタイトルの通り、大蔵省やイギリス財務省、マッキンゼーなどそうそうたるキャリアの持ち主の柴山和久さんです。
現在は資産運用のロボアドバイザーサービスのウェルスナビを手がけられています。
本書は柴山さんがこれまで携わってきた数々の資産運用から見えてきた、資産運用の基本について書いてあります。
世界の資産運用の王道
資産運用の王道とは「長期・積立・分散」です。
長期:10年以上(できれば20年)の長期投資
積立:毎月一定の金額を積み立てる投資
分散:世界中の様々な資産への分散投資
こういった投資手法は、世界最大規模の資産運用と高い運用成績で知られるノルウェー政府年金基金の手法と一致します。
ノルウェー政府年金基金は油田収入を1998年から運用しており、運用額は110兆円にものぼる巨大基金です。
ポートフォリオ(資産分配)は株式66%、債券31%、不動産3%で、72か国9146銘柄に分散して投資をしています。
この基金はリーマンショック等の金融危機に見舞われた際も、金融危機が起きた年こそマイナスリターンであったものの、翌年からプラスに転じているのです。
こうした成果から、先に挙げた資産運用の3つのポイントが明らかにるのです。
3つのポイント 長期・積立・分散
1 長期投資の重要性
過去15年で大きな金融危機は5回発生しました。
1997年のアジア通貨危機や翌年のロシアの財政危機(ルーブル危機)、2000年にはドットコム・バブルが崩壊しました。2008年にはリーマン・ショックが起こり、2012年にはギリシャの財政危機が原因のユーロ危機が起こりました。
こういった金融危機が起きると資産は一時的に減りますが、「長期・積立・分散」の資産運用を続けていればリターンはプラスです。
なぜなら、世界経済が中長期的に成長を続けているので、一時的に資産が減っても時間の経過とともに資産が回復するからです。
2 分散投資でリスクを抑える
資産運用における分散投資とは、様々な国に対して投資をし、株式や債券、不動産等の対象資産も分散させることを指します。
様々な資産を組み合わせることで、リスクを減らして安定的に資産運用ができるのです。
具体的に言えば、リーマン・ショック時に株式市場が大暴落したことは周知の事実ですが、米国債や金の価値は上昇していました。
分散投資ができていれば大きな金融危機が起こってもダメージを軽減することができます。
3 積立投資による為替リスクコントロール
我々は日本で生活をしているため、外国への投資時には為替リスクが伴います。
為替リスクとは円と外国の通貨の為替レートが変動するリスクです。
米ドルとの比較においても円高と円安が繰り返されます。
1992年は1ドル=125円だったのに対し、2017年時点では1ドル=112円となりました。
ドル建てで資産運用していただけで10%の損失がある計算です。
この損失は積立投資で解消されます。
なぜなら、円高の時に新規に積み立てた分は海外資産に割安で投資できるからです。
相場が上がったときに強気になって投資をしたり、相場が下がってパニックになって売却するといった心理的な罠を避けることも可能です。
r>g
r>gとはトマ・ピケティ教授の『21世紀の資産』で主張されている数式です。
rは投資のリターン(rate of return on capital)でgは経済成長率(rate of economic growth)です。
つまり、世界経済の成長率よりも投資のリターンの方が大きいという数式なのです。
実際に1992年からの25年間のシミュレーションでは、世界経済の成長率は3.7%/年だったのに対し、「長期・積立・分散」の資産運用のリターンは5.9%/年です。
理由は2つあります。
1つ目はリスクをとったことに対する見返り(リスク・プレミアム)です。
もちろん損失のリスクは付きまといますが、「長期・積立・分散」によりリスクを軽減できるのです。
2つ目は税制の優遇です。
日本をはじめとした先進国は投資によって得られた利益に20%前後の税金が課されますが、所得税や法人税が30~60%程度であることを考えると割安です。
世界の富裕層がrの世界に住んでいることは自明で、我々日本の労働者層は大部分がgの世界にいます。
このままではrとgの格差が開く一方です。
我々もrの世界に足を踏み入れる必要性があるのです。
日本人が資産運用できない理由
日本人には海外の方と比べて資産運用が浸透していません。
一般的な人に限らず、金融の専門家ですら自分の資産は預金中心です。
日本人が保有する金融資産のうち、51.5%が預貯金というデータもあります。
逆にアメリカの預貯金割合は13.7%、イギリスは24.1%、フランスは28.0%です。
どうしてこういった差がついたのでしょうか。
それは、老後の資金集めの方法が国によって全然違うからです。
日本は一昔前まで終身雇用が前提となっていました。
わざわざ資産運用を行わずとも年金や退職金で賄うことができました。
そのため、お金はいつでも引き出せて便利で安全な預金にゆだねておけば安心でした。
アメリカの場合はそもそも終身雇用という概念がほとんど無く、社会保障も充実していないので老後の資金は自分で調達する必要がありました。
そのため、自然に資産運用が浸透していきました。
昨今の日本の情勢がアメリカに近づいてきているのは皆さんもご存じのとおりです。
ただ、これまで日本では「長期・積立・分散」の資産運用をしてもうまくいかないケースが多かったのです。
それは「失われた20年」が原因です。
1992年に3.9兆ドルだった日本のGDPは、25年後の2017年でも4.8兆ドルにしか増えていません。
平均すると0.9%/年となります。
対して世界全体のGDPは1992年からの25年で約3倍に成長しました。
平均して4.7%/年で成長しており、日本とは対照的です。
加えて、外国人の資産運用はまずは自国の「長期・積立・分散」からスタートし、やがて世界へと投資対象を広げます。
日本はここで躓きました。
「失われた20年」が資産運用のファーストステップである国内での「長期・積立・分散」を失敗させたのです。
こういった背景から日本人は世界の経済成長によって増えたパイを分け合う「長期・積立・分散」の資産運用ではなく、お互いの富を奪い合うゼロサムゲームに参加せざるを得ませんでした。
私たちが「投資」というとFX(為替取引)や仮想通貨を連想する人も多いのではないでしょうか。
しかし欧米では為替取引は専門家が行うもので、個人投資家が行うケースは稀です。
また、日本人が行う投資信託の保有期間は平均で2.7年と短いです。
ここからも「長期・積立・分散」の資産運用からは遠いところにいることがわかります。
お互いの富を奪い合うゼロサムゲームにおいては、買った時のリターンを大きくするために値動きが大きい投資対象を選ぶ必要があります。
一人億万長者を生み出すためには、1000人が10万円負けなくてはなりません。
さらに自分の富が奪われないように常に気を配る必要があり、神経と自分の時間をすり減らし続けなければなりません。
こういった背景が、我々日本人に投資を怖がらせることになりました。
ただ、世界の経済成長がもたらす富を分け合う投資であれば、参加者全員が勝つことも可能なのです。
正しい資産運用の6ステップ
1 目標を立てる
目標を立てるメリットは2つで、長い投資期間の中で金融危機等が起こっても目の前の状況に対してパニックになりづらいこと、資産運用がどれくらい必要かが明らかになることがあります。
2 最適な資産分配(ポートフォリオ)を作る
人の最適な資産分配は投資を始める年齢、運用できる期間、投資経験の有無で変わります。
年齢が低く運用期間が長ければある程度リスクを取った投資ができ、高リスクの株式の割合を増やせます。
逆にリスクが取れないのであれば株式の割合は減らすべきです。
さらに、投資経験があれば金融危機等にもパニックになったりせずに淡々と投資を続けられます。
3 具体的な銘柄の選定
「長期・積立・分散」の資産運用では、特定の企業や特定の産業に集中せずに幅広い投資が重要です。
幸い、そういった投資信託商品は存在しています。
投資信託を選ぶ際の基準は3つです
①市場全体をカバーできているか
⇒「NYダウ」等の株価指数が市場の動きときちんと連動しているか(トラッキングエラー)
②安定した投資信託かどうか
⇒純資産総額が1000億円以下の投資信託はある日突然運用停止となるリスクがあるのでやめましょう。
③コスパが良いか
⇒①②を満たす商品の中で手数料が最も低いものを選びましょう。
4 取引前にもう一度リスク確認
「相場変動リスク」「為替変動リスク」「信用リスク」といったリスクの確認をします。
それぞれがどういったリスクなのかを確認するのはもちろんのこと、最悪のケースでは何が起きるのかを把握しておくことは資産運用を続ける上でとても重要です。
5 積立の設定
積立投資を行わない場合、投資金額を増やすためにはタイミングを見計らって投資を行う必要があります。
ただ、それは多くの場合上手くいきません。
株価が高いタイミングで強気になって買い、下落するタイミングでパニックなって売ってしまう投資家が多いことは知られています。
そうならないようにするには、株価の変動に左右されずに淡々と投資を続けることが求められます。
それには積立投資が適しているのです。
ただ、毎月の家計がひっ迫して積立を行う余裕がないときはやめましょう。
資産がマイナスに触れた際の落胆が大きいためです。
あくまで収入が増えた時、増えた分の半分くらいを積み立てるのが良いのではないでしょうか。
6 着実なリバランス
リバランスとは、最適な資産分配になるように調整することです。
具体的には「値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買う」という方法となります。
時間の経過とともに資産のバランスは崩れます。
新興国の株価が上昇すると自己資産内での割合が高くなり、その株価が大幅に下落した際に全体へのダメージが大きくなりすぎてしまいます。
それを回避するために、新興国株を売却して他資産を購入することで自己資産のバランスを担保するのです。
リバランスを行うことで中長期的な資産運用のリスクを下げつつリターンを上げることができます。
リバランスは多くても半年に1回、さらに相場に大きな動きがあって資産割合が大きく崩れた際に行います。
また、積立投資時にリバランスを行うと節税効果もあります。
新たな投資で資産分配を変えられるので、資産の売却が不要になるからです。
感想
私の考えていた投資というものがただのギャンブルであったことを知りました。
日本人が抱く幻想を言語化することができ、スッキリしています。
リバランスが割と衝撃的でした。
保有する株の価格が上がったら上がりきるまで待つのが当然だと思っていました。
とりあえずもう何冊か投資の本を読み、「長期・積立・分散」の資産運用をしてみようと思います。
最後に
お読みいただきありがとうございました!
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