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3行日記(落とし物、凧をあげる、じゃんけん)
一月二日(火)、晴れ
箱根駅伝を見て、散歩に出かける。足羽川の堤防の東屋でサンドウィッチを食べた。川沿いを歩いたところにある商業施設へ。凧を買った。家に戻って、南瓜が入ったぜんざいを食べてから、再び足羽川の堤防へ。出発するときに、正ちゃん帽が見当たらなかった。落としたとしたら先ほどの東屋だろうと考えすぐにむかったが、東屋のテーブルには見当たらない。だが、少し離れたところにある切り株のような椅子の上に何かがある。近づいてみると、緑色の頭に白いふさふさが着いた私の正ちゃん帽だった。誰かが置いておいてくれたようだ。
足羽川の堤防で凧をあげた。もっとドタバタ走りながらあげるものだと思っていたが、風があれば走らなくても簡単に空高くあがった。調子に乗って、するするするすると凧糸を繰り出していたら、気づけば、凧糸ぜんぶを伸ばし切ってしまった。凧ははるか高くを泳いでいた。風を掴んで勢いのある凧を引っ張って抑えこむ確かな手応えがあるうちはいいのだが、そのうち風が心もとなくなり、凧糸の張力が鈍くなると不安がざわめく。そうして凧が川のほうから私のいる堤防の頭上にやってくると、いよいよ保っている均衡が崩れ、落下してしまうのではないかというイメージがよぎる。凧揚げをした堤防の先、おじいちゃんがおもむろに自転車を停め、太陽のほうに手を合わせてお経を唱えだした。
その後、三十分ほどふらふらと歩いて辿り着いた公園のベンチで一休みしようと思ったのだが、妻が険しい表情をしている。凧を折りたたんでしまった袋のなかに凧糸がない。どこかに落としてしまったかも。仕方なく歩いてきた道を戻りながら凧糸を捜す。すると、大通りの道端になにか白いものが落ちている。凧糸を救出した。はじめてのおつかいみたいな展開だった。
夕方、妻がおばあちゃんとじゃんけんをした。じゃん、けん、ぽん。妻がだしたチョキは、おばあちゃんのむくんだ掌に優しく包まれた。この日はじゃんけんにならなかったが、次の日は、おばあちゃんもチョキやパーを出していた。遅だしで負けていた。