3行日記 #144(ピアノ、ついに目撃、上弦の月)
二月十七日(土)、くもりのち晴れ
午前、出町から高野へ川沿いを歩く。自転車を引いて歩くおばあちゃん。黒いリュックサックから長ねぎが飛びだし、余ったビニール袋がカサカサと風に揺れていた。原稿のひとつを送る。
午後、一乗寺の古本屋で棚を眺めていると、どこからか、ピアノの音が聞こえてくる。覚えのあるメロディ。ビートルズのOb-La-Di, Ob-La-Da。はじめは店でかかっている曲かと思ったが、ところどころリズムのスピードに波がある。隣からだ。隣は飲食店なのだが、店先にアンティークのピアノが置いてあり、自由に弾けるようになっていた。見ると、日本人の男性と海外の女性が歩き去るのが見えた。どちらかが弾いてたみたいだ。一乗寺の喫茶店で原稿。
夕方、西の空、灰色の雲の底が焼けている。一乗寺から出町まで歩く。ついに見た。あの元田中の金網にいろんなものが縛り付けているところ。正体は白髪の老人だった。灰色のダウンに黒のキャップ。隣の椅子に腰掛けて、何かを結んでいる。日没のあとでくっきりとは見えないが、黒いまるい何かを縛りつけていた。
夜、野菜スープ、苺。チャックの散歩、京阪の踏切をまたいで、図書館の手前の空地に落ちていたやわらかいボールをひろった。区役所をかすめて南へ。公園に入ると、前にいちど遊んだような、大きくてやわらかいゴムボールが転がっている。チャックと遊んだ。さらに、先ほどひろった小さいボールでも遊んだ。二種類のボールで遊んで大満足のチャック。商店街を抜けて帰った。西の空に上弦の月が見えた。雲間から月も星も明るくくっきり見えた。