見出し画像

『鬼谷子 中国史上最強の策謀術』高橋健太郎(2020・草思社文庫)

数多ある中国古典の中でも、異端の書として名高い『鬼谷子』。
「孫子」こと孫臏(そんぴん)に兵法を授けたとされる鬼谷(鬼谷子)の思想をまとめた、この知られざる古典は、中国の戦国時代に諸国の王たちを動かした「策謀術」であり、弁舌と頭脳で乱世を渡り歩いた遊説家の英知が結実したリアリズムの書でもある。時には道徳すら武器として用いて強者を思いのままに動かす、恐ろしくも実戦的な中国古典の真髄を解き明かす。

旅先で買った文庫。
こんな紹介文を読んじゃったら、そらもう、買わずにはいられません!

鬼谷子。

初めて耳にする〇〇子である。こんな人いたのか、知らなかった!(元々全く詳しくなどないのですが(^^ゞ)

*****

鬼谷子の本領は「絶対安全圏から他人を動かす技術」だそう。そのための奥義が『鬼谷子』という書物に書いてある。
高橋先生によればポイントは7つ。

1.「開閉」と「陰陽」
2.「象比」と「飛カン」
3.「内ケン」
4.「シマ」
5.「ゴ合」「シギ」
6.「権」
7.「本経陰符七術」
※ 漢字が出せませんでした(^^ゞ

詳しい解説は省略しますが、私が面白いなあ~~と思ったのは最初に出てくる、「開閉」「反復」「事」。

人間の口は「存在と滅びの門」。聖人は口という門の開閉を支配することで言葉を操り大衆を動かし、正しいほうへと彼らを導くのだそう。

お互いに話して自分の考えを話す(開)というのは、それ自体が相手と気持ちを同じくしているということであり、反対に黙る(閉)のはそれを異にしていることだと説きます。

心のまま、ありのまま、素直に心の内を表現しろというのではありません。開閉を調整し、己の身を危うくせぬよう、うまいこと立ち回りなさい!的な・・・(解釈違ってたらゴメンなさい!)。

「反復」は、働きかけ(反)とフィードバック(復)。反復を繰り返すことによって物事をより正確に捉えよう、と。

「事」は、なすべき「事」。『鬼谷子』の技術のすべては、この自分の「事」を実現するためのものですが、一方で相手の抱える「事」というものも非常に重視する。相手の「事」が自分の「謀」(策略)と合わなければ、相手を動かすのは無理だからです。

「反復」は絶対に大切なことだし、相手の「事」をキチンと視野におさめて物事考えるのも大事。そしてこれ。口は禍のもと! 黙ること、しゃべらずにおくことを技として使う。私に一番足りないやつです。いらんことまで全部しゃべっちゃいますからネ、私・・・。

『鬼谷子』は、人を欺くための卑怯でいやらしい技術ってわけではありません。こういうことも書いてある。↓

人に説くことは、人をたすけること。

『鬼谷子』の説く、言葉を支配し人を動かす技術は、根本的には相手自身の抱えている「事」を利用して、こちらの「謀」のために相手を動かすものです。つまり、あくまで先にあるのは相手の「〇〇したい」「〇〇しなければ」という思いであり、こちらが相手に向かって話をするのは、そうした思いを明確化し、具体化し、実現化するためなのです。

次読みたい。↓


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集