あの日、彼女と出会った。
やぁ、いらっしゃい。今週もお疲れ様。
金曜日ということで、あっという間だね。
これから年末に向けて一気に進むよー。
1日たりとも無駄には出来ないね。
崩壊。
あの日、絶望を知ることになる。
元々、小さな企業で色んな縁があり、
細々と定期業務をこなしていた。
クライアントは色々。
主に小さな事業者が多く、僅かに大きな案件。
特に一つ。
売上の大半を占める案件を抱えていた。
いかにクオリティを下げず、
工程数を減らしていくか。
かなりリソースを回しつつも、
徐々に利益率を高めることに今年成功。
そこに関わらず、単価の高い小規模な
事業者もそこそこいたので、非常に安定していた。
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当時の心境を振り返ると、
随分と余裕を持っていた記憶がある。
というよりは、慢心してしまっていた。
業務は忙しかったし神経を使う。
それ以上に売上の担保は大きい。
コロナ禍もあり、かつていた社員も
辞めるか独立するかでコンパクトな会社となる。
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いつもPCの前で隙あらば動画やネットを楽しむ。
そんな時、一通のチャットワークが入る。
「弊社代表が代わりまして、一度打ち合わせ出来ますか?」
誰それ・・・。
何となく嫌な予感がする。
元々5年ほどの付き合いで、
よく今後の打ち合わせをしてきた相手。
でも、不穏な直感は拭えない。
そして、予想の通り崩壊した。
不測の事態。
フラフラと視点が定まらない。
ぼーっとしながら、車に戻る。
一番の大きな案件が消える。
売上の半分が消えるということさ。
意識を失いそうな足取りで、
車の運転席にもたれかかる。
ふとスマホを見るとチャットワークが数件。
「契約を終了しようと思います」
「今月でやめるつもりです」
「他者にお願いをする予定です」
は・・・?
今、終わったばっかしじゃん。
なんで・・・?
嫌な予感すらすることなく、
契約終了の波に襲われる。
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定期業務というだけあって、
記事の発信やサイトメンテなどは
割と長い付き合いになるケースが多い。
ただ有限であって、無限じゃない。
そんな事は分かっている。
でも、今来るのか…。
こんな連続して起こるなんて人生で初。
一つずつ対応しながら、
ダメなものはダメ。
せめて1か月でも引き伸ばすように、
お願いするようじゃお終いさ。
あっという間に、売上が3割まで落ち込む。
『どうして、私が何かしたの・・・』
拭えない絶望。
『ダメ、全然足んないよ・・・』
売上が落ちるものの、原価も落ちる。
ここで痛かったのが利益率を上げるための施策。
個別で依頼するより、
まとまって定期で外注化。
その分、期間的な縛りが発生する。
それが出来た途端に続いていた契約が飛ぶ。
丸々固定費も無駄になる。
可能性はあったが、そんなすぐに起きるなんて。
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新規で受注を取ることも考える。
ただ、メインは小さな事業者。
急に70%も吹き飛んで、すぐに動けない。
というより残りの30%だって分からない。
逆算する、私はいつまで持つのだろう・・・。
『病む、意味が分かんない』
どれくらいの時間だろう。
事務所の椅子に座ってうつむく。
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きっと状況は変わらない。
少しずつ、時間とともに諦めていく。
無情にも、この間に追加で
解約の問い合わせがくる。
無表情、
『もう消えていけ』
涙が止まらない。
心が壊れていきそうになる。
たった、半日のことなのに、
老け込むほどに、重い時間。
生きる意味。
無意識に考える。
何度かいい案はないものか。
起死回生はないものか。
考えれば考えるほど、
絶望を繰り返す。溢れ返るため息。
『生きてても仕方ないかな』
取引先の電話がかかる。
無視、もう心に入ってこないで。
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目をつぶって、机に伏す。
このまま眠って一生起きなければいいな。
・・・
・・・
・・・
眠れる訳はない。
ずっとぐるぐる頭は回る。
どれくらい時間が経ったのかな。
1時間、2時間?覚えてない。
ずっと目をつぶって同じ姿勢。
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想像していた。
脳裏に映る「橋」のようなイメージ。
先はよく見えない。
見に行こうと歩き出す。
明らかにやばい雰囲気を感じる。
暗く、おぞましい、形容しがたい雰囲気。
それでもいい、もう行ってしまえ。
どうなるか何となく分かっていた。
でももういいんだ、楽になるならそれでもいい。
「どこ行くの?その先は危険だよ?」
橋の隣に座っている。
よく見えない人のような。
『え?誰?』
「誰だっていいじゃん、どこ行くの?」
『この先に・・・』
「なんで?」
『もう嫌になって・・・』
「ふーーん」
『ふーーんって・・・もういいでしょ?』
「じゃあ、嫌にならなきゃいいじゃん」
『いや、他人事だと思って』
「思ってないって、全部知ってるから」
『は?』
「全部変えてやればいい」
『変えてやればって・・・』
「まだ終わってない、これからだよ」
『あんた、誰?』
「私はね」
目が覚める。
ハッ、と目を覚ます。
机の上、あのまま寝ていたのか。
想像していたのか。
派手な考え方、あんな人に私もなりたい。
まだ終わってない?
『note書こう・・・』
2023年6月27日。
目が覚めた後に、記事を書く。
深い絶望を感じると人間、現実逃避する。
あの日、確かに一度諦めたんだよね。
少し時間が経てば冷静になる。
人間適応の生き物さ。
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家に帰る。状況は変わってないけど。
少しだけ気分はマシになっていた。
家には猫さんが一匹いる。
捨て猫で6年。早いもので一緒にいるよ。
帰ってくればいつも寄ってきてくれる。
感謝しかないよ。
「へぇ、この猫さんかわいいじゃん」
『え?』
「あんたが死んだら、この子どうなんの?」
『それは・・・』
「ってことさ、この子にも働いてもらいなよ」
『どういうこと?』
「その内わかるよ、しみったれたあんたよりいい仕事すんじゃない?」
『意味分かんない』
これから。
少しだけ、物語風に。
あの「橋」の前で会ったような記憶。
夢か想像か分からないけど、今も覚えてる。
何者でもない、からこそ誰よりも早く。
行動して「橋」で会ったあの人のようになる。
何て思いながら、半年弱。
少しは近づけたのかしら。
そう言えばあの時、かかってきた電話。
折り返すと、旧知の顧客の救いだった。
全然状況はまだまだ。
でも、人生心まで腐ったら終わりさ。
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私は厨二の妄想癖がある訳でも、
何か幻覚が見える危ないやつでもない。
ただ絶望の中で、
奇跡みたいな出来事を感じただけ。
もし、想像して出てきてくれるんなら
厨ニでも幻覚でもいいけどね。
現実は甘くない、
変わらないなら変えるしかない。
今「橋」の前にいるんなら、
言ってあげるよ。
『どこ行くの?その先は危険だよ?』
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