石原図について
1921年から2002年度まで学校用色覚異常検査表として使用されてきた「石原式検査表」(医師の石原忍が徴兵検査用に1916年製作)を参照しつつ、私の身近な風景である無数の石が転がる磯と重ね合わせることを試みた。
石ころのような楕円形を私が近しいと感じる色の領域内でひとつも同じ色にならないようパレット、または画面内で調色しながら描いていった。
色の問題を扱っているので余計な質をできるだけ排除しつつも、石ころであることも意識に留めながら描画を行った。
主に黄緑/オレンジ、焦茶/深緑を軸にしているが、
この2つはどちらも私の混同色であり、異なる色というよりはどちらにも転び得るような、同じ色のグループに存在する色だ。
混同色を多用し、見分けを困難にすることによって「この色は〇〇色だ」というような先入観(色名)から自分を解放することを目指した。
本来の「石原表」はこういった混同色を利用して「正常」と「異常」を見分けるが、「石原図」には見分けるべき対象(数字やカタカナのような)が存在しないため、混同色が色覚によって異なるとしてもそこに「検査性」はなく、ただ色の斑点のつながりや色の浮き沈み方が異なって見えるだけだ。
つまり、「石原図」の鑑賞においては「正常」も「異常」といった優劣が存在しないため、「色弱」にとってはある種トラウマのようなこのイメージにようやくひとりの人間として向き合うことができる。