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背水の陣のスパイスカレー

背水の陣スパイスカレー



何度も何度もトライしてははいまいちのスパイスカレーを作り続けること数年。お店で食べた感動を家で体感したいという執念実らず。レシピ本を買っては、試してみた。まあまあ美味しい、、、か?ってカレーはできるものの、何かが違う。結局いまいちのカレー。感想は「コクがない。薄い。スープというかお湯?火が通りきってない。スパイスが主張してるだけで美味しくない」等の結果が続く。最悪焦げている味に至ってはどうしようもない。本当に何何度も失敗した。結局のところ味が足りないと感じビビり追加の市販のルー。なんとも中途半端なスパイスカレーもどきが幾度か。「美味しいんだけど、、厳密にいうと、、なんか違うのよね、、あの玉ねぎを炒める作業の労力、、、、見合ってない」自分で食べてもわかる。美味しいとは程遠い。何かが足りない。ボヤけている。もう美味しいスパイスカレーを作るのは労力もお金も無理なのか、、、と封印していたが、やはりどこからかムクムクと食べたいのと作りたい欲求が出てくるものだからしゃーない。やっぱり自分で作りたい。


インド細密画


府中で「インド細密画」展がやっていた。閉館30分前に到着し、、どうせなら行こうと走ってみて回った。もう少し細かいところまで見たいし知りたいと思って図録を買おうとした隣に見つけた。「チキンカレーultimate21+の攻略法」エリックサウス稲田さんのレシピ本。図録を買う代わりにこの本を買っておいた。

石ころの本も衝動買い

事細かく1g単位で記載されている。トマトも、玉ねぎもスパイスも全部gで表示されている。デジタルスケールで加えていくレシピ。もうこれをそのままつくって不味かったら(本当の本当の本当の)引退だ覚悟で臨もうと決めて本棚に入れておいた。チキンを大量に購入したのもあり、スパイスカレーつくってみるかと控えめに二人分だけ作ることにした。(いつも多く作り過ぎてしまうので)晩御飯のメニューとは別にスケールで測りながら作ること1時間。気づいたことがある。「ニンニク、生姜の量、、結構入れるんだ」いつも少量とかヒトカケ書いてあると自分の目分量で入れるのであるが、少なかったようだ。結構入れる。書いてあるとおり指示通り入れると「あ。こんなに入れるんだね」と自分のイメージを超えた量が入る。時間もきっちり弱火で15分という工程を重ねていくと、玉ねぎからの匂いがいつもより違って感じる。香る。玉ねぎを炒める工程でのパチパチ感とねっとり感が違う。(あ、、この状態のことだったのか)と知る。粘土で言うとこね方が足りなかったようだ。蓋を開けてみると、生姜とニンニクがいつもより元気に香ってくる。店でしか嗅いだ事ない匂いがするような気がする。何となく私のカレー作りのフェーズが変わった匂いがした。


調子に乗る事なく最後まで指示通りに作り続ける。この行程は、本当に無駄がなく、そこにまだ工夫を乗せる実力はない。レシピをこのまま再現するということはこういうことか、、とわかるくらいにミラーリングした。「ああ、これは、、美味い味であってくれ」頼む。俺の味覚。


春菊のサラダとともに

完成したものを食べた。「美味しい」この感覚は初めてのことだ。美味しいの向こうの感動。念願のスパイスカレーを家でつくるという、、長い長い挑戦のようやく入り口に立てたような気がした。遠回りをしまくった気もする。「いや、ちゃんと読んでなかったからやん」と言われればその通りだが、、恐るべしレシピ本、、ありがとうレシピ本。こんな細かく指定してあるレシピ本は初めてだった。一皮剥けたような気もします。何度失敗したことか。またクミンの味を、早く口に入れたい。


振り返ってみると、今まで作っていたものは、雰囲気でつくっていたとも言える。適当に入れても「これくらい大丈夫でしょう」と大まかな分量を入れていたのでボヤけていたのは当然だ。肉じゃがとか、ポテトサラダとか、唐揚げとか、パスタとか、もうレシピを見ないでも大体イメージ通りに美味しいものはつくれる自負はあるが、スパイスカレーだけは作れなかった。それが作れたような(レシピに忠実に真似しただけだけど)気がしてとても嬉しくなった。


エッセンスは細部にある。レシピを忠実に再現するのは、小説に例えると行間を読むこと。自分の経験が入り込めば、どうやると美味しくなるってのがだんだんわかってくる。ずっと不甲斐ないカレーを作り出してきたので、何だか嬉しい日になりました。他のレシピももう一度、読んでみようと思う日でした。


レシピ本

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黒岡まさひろ
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