Vol.41 中判フィルムでポートレート
でっかいカメラはでっかいシャッター音がする。
でも、でっかいシャッター音はうるさいだけじゃない。
でっかいシャッター音は小気味良いシャッター音でもある。
小気味良いシャッター音は撮っていて気持ちが良い。
モデルさんもシャッター音が気持ちいいと気持ちが乗るらしい。
だからポートレートを撮りに行こう。
モデルのよるさんはフィルム写真が似合う。
そんなことを思いながらPENTAX645を持ち出し、フィルムを入れた。
よく透明感のあるモデルさんという表現をするけど、よるさんは芯のあるふんわりとしたモデルさん。
例えるならマシュマロや綿菓子のようなふんわり雰囲気。
よるさんの周りだけ少し時間の進みがゆっくり流れているんじゃないかと思う。
だからフィルムポートレートを撮るモデルさんとしては一番自分にとって相性がいいと思っている。
最新のミラーレスカメラを使えばピントを合わせる時間はわずか0.02秒。
でも自分の持っているPENTAX645はMFのカメラだ。
自分はそんな早く、疾く、速くピントを合わせるなんて出来ない。
ゆっくりフォーカスリングを回しながらピントを合わせる。そのわずかな時間を焦ることなく楽しめるのもよるさんのおかげなんだと思う。
フィルムカメラの中でも撮影枚数が少ない中判カメラはシャッターボタンを押すときにほんの少しだけ勇気がいる。
構図はこれでいいのか。
露出は合っているのか。
そんな迷いがあるとモデルさんも表情を作りづらい。
よるさんはそんな少しだけ勇気のいる事をちょっとだけ後押ししてくれる。
それはよるさん自身が纏う雰囲気だったり、
会話の中のほんのひと言だったり、
もちろん表情だったり。
アンニョイな雰囲気のただよう一枚でも現場はよるさんの持つ柔らかい雰囲気で撮影が進んでいく。
この雰囲気がシャッターを押すほんのわずかな後押しをしてくれる。
いつか、よるさんも学舎を飛び出し社会という暗澹迷蒙なる世界に飛び込むことになる。
そんな暗澹迷蒙な世の中にあってもよるさんはきっと自分を見失わず、一身独立のもとに自らが考え、行動し、進むべき道を歩いていくだろう。
そんなよるさんをフィルムという何年も、何十年も残る記憶媒体でもう一度撮りたいと思っている。
彼女の強さ、優しさ、芯、そして独特の雰囲気を自分なりに形に残したいと強く思う。それが写真を撮る自分の成長にも繋がるという思いがあり、そう思わせる何かがよるさんにはあると感じる。
オフショット
中判カメラに興味があるというよるさんにPENTAX645を渡してみたら自分を撮った。これが「モデル:よるさん」の中判ファーストショットなのだ。
何にでも記念はある。自分は写真を撮るくせに撮られるのは苦手で、自分の写真をSNSなどに載せるなんて全く考えたこともないがこれは記念だからと載せることにした。
そういえばフィルムカメラでモデルさんに撮られたのは初めてかもしれない。
そう思うとこれはお互いにとって初めての写真だったということか。
モデル:よるさん
Twitter:@yoru_no___
Instagram:@_yoru_no
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では、また。