【読書メモ】蒼天航路(王欣太, 李學仁) 【#53】
三国志というと、長年、横山光輝の『三国志』でした。小学生の時に、誕生日とかに2冊、3冊と買ってくれて、結局20巻くらいまでしか読みませんでしたが、この本から入りました。主人公は劉備玄徳で、仁義を大切にするというイメージでした。
一方で、『蒼天航路』の主人公は曹操孟徳です。なので、横山光輝の『三国志』とは全く違う方向から世界を見ています。全く逆からと言ってもいいと思います。
個人的には、もともと劉備玄徳って胡散臭いなと思っていましたし、儒教の忠孝とかも道徳くさくて嫌だな、なんか支配者に利用されてる気がするなと思っていたので、曹操孟徳の法家思想についてはすごく共感していました。
キングダムでも、始皇帝は中華統一後は法律で治めると言っています。現代の中国まで連綿と続く、思想の最初が秦の中華統一になります。今は韓非子やマキャベリの君主論を読んでいるのもあって、法家思想が非常によく分かって面白いです。
法家思想で一番重要なのが儒教との争いです。血縁にとらわれない、縁故採用を排した自由な人材登用を掲げるために、秦でももちろんありましたが、四百年以上経った三国志の時代にも曹操孟徳は儒教と戦うことになります。そのあたりのエピソードも、しっかり描かれていて、とても読み応えがあります。
作画も、墨絵のような部分があったり、カラーのページも綺麗で、ストーリーだけでなく絵の美しさも楽しめます。どのキャラクターも魅力的なのですが、主人公の曹操孟徳がとにかくカッコいいのもオススメポイントです。逆に、劉備玄徳がこれでもかというくらいダメ人間に描かれているのも面白いです。
さらに、三国志の時代の話だけでなく、このキャラクターの子孫がこういう形で現代の文化に関わっているとか、こういうところに名前が残っっているとか、歴史的な部分も色々興味深く読めます。
まだ三国志を読んだことないけど、ちょっと興味あるな〜って人は『蒼天航路』から入ることをオススメします。
おわり