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【読書メモ】仏教の冷たさキリスト教の危うさ(ネルケ無方)【#54】
ドイツ人で、曹洞宗の禅僧であるネルケ無方(むほう)さんが書いた、仏教とキリスト教についての本です。
ネルケさんは、お父さんがキリスト教の牧師で、ベルリン自由大学の日本学科・哲学科修士課程を終了後、日本で仏教の修行して、出家得度して曹洞宗の住職をしています。
宗教に興味があった上に、ネルケさんの経歴に興味出たので読んでみました。
「家族を捨て、悟りを開いたブッダは、実は冷たい人だったのではないか?」
「愛を説くキリスト教徒は、なぜ戦争ばかりしているのか?」
仏教は冷たすぎるし、キリスト教は危なすぎるーーー。
これらの疑問に何かを感じた人は、この本を読んでみると目から鱗が落ちると思います。
序章では、「テロと一神教」と題して、我々日本人が理解できない一神教の考え方特徴から始まり、同じ神様を拝んでいるのにキリスト教徒とイスラム教徒が同じ国で暮らすことの難しさなどが書かれています。
第1章では仏教とキリスト教の比較、第2章ではイエスの「愛」とブッダの「慈悲」について書かれています。
欧米人には、いつも「あなたの失った片割れを見つけなさい」と、愛の神エロスのささやき声が聞こえている。欧米人が「マイ・ベター・ハーフ」という言葉をよく口にするのも、そのためだ。
このような文化的というか、欧米人の本質的な価値観にもキリスト教が深く関わっていることを初めて知りました。確かに、「マイ・ベター・ハーフ」と言っているのを聞いたことがありますが、単にロマンチックな言い方なのだと思っていました。
第3章では、仏教とキリスト教の成立と発展について、第4章では仏教の本質について、第5章ではキリスト教の本質について書かれています。
終章は、ドイツから日本に来たネルケさんだからこそ書ける内容です。「宗教のニオイ」をマイルドにする、日本人の智恵について次のように書かれています。
古くから日本人はアク抜きの技術を伝えて来たが、肉食が中心の西洋では「アクを抜く」という発想そのものがなかったようだ。西洋人は食べたいものがあれば「畑を作り、自分の都合のいいように品種改良すればいい」という考え方をする。
一方、日本人は自分の都合のいいように作るのではなく、自然からいただいたものがアクが強かったら、「アク抜きをしていただく」という考え方をする。
それを宗教においてもできるのが日本人だと思う。海外から来た宗教も排除せず、ありがたくいただいて、でもアク抜きはしておく。
いわゆる、よくあるような、日本すごい!という本ではありません。
一神教の特徴、仏教の特徴、日本人の特徴が分析されていて、だからこそ日本人の文化的な特徴が一神教の頑なさというか、排他的な感じというか、争いやテロに繋がる部分を薄めることができる可能性があるという希望的な結論になっています。
おわり
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