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【読書メモ】人新世の「資本論」(斎藤幸平)【#10】

すごく難しいので、簡単に要約して書きます。なので、こぼれ落ちた詳細は本書を読むことで補ってください。

まず、SDGsは「大衆のアヘン」である。という一言から始まります。冷静な感覚を持って世界を見ている人からすれば、SDGsが温暖化や環境破壊を防いで、持続可能な世界を作ることができるなんていうのは胡散臭いというか、そんな簡単なことじゃないだろうと思っていたと思います。どうして急にこんなにメディアがSDGs、SDGs言い出したのかというのも気持ち悪く感じていたと思います。そんな違和感について、しっかりと説明してくれます。

さらに、前半では地球温暖化、つまり気候危機は資本主義が原因で起きていることを説明しています。従って、SDGsやグリーン・ニューディールなどのどんな対策をしても、資本主義という根本原因を温存したままでは解決することはできないと説いています。気候危機を解決するには、気候危機の原因である資本主義そのものを徹底的に批判するしかないということです。

後半では、マルクスが晩年に辿り着いたという「脱成長コミュニズム」という考え方について書いてあります。脱成長コミュニズムには5つの柱があります。

1. 使用価値経済への転換:「使用価値」に重きを置いた経済に転換して、大量生産・大量消費から脱却する
2. 労働時間の短縮:労働時間を削減して、生活の質を向上させる
3. 画一的な分業の廃止:画一的な労働をもたらす分業を廃止して、労働の創造性を回復させる
4. 生産過程の民主化:生産のプロセスの民主化を進めて、経済を減速させる
5. エッセンシャル・ワークの重視:使用価値経済に転換し、労働集約型のエッセンシャル・ワークの重視を

ざっくり言うと、私的所有でもなく、国有でもない、生産手段の水平的共同管理、つまり市民による自治がコミュニズムの基本になります。ただし、これは国家を否定してるわけではありません。国家がないとアナーキズムという無秩序な野蛮な状態になってしまうからです。一方で、国家の力が強すぎると気候毛沢東主義という状態になってしまいます。その中間(?)であるコミュニズムが唯一の選択肢になります。キーワードは協同組合や<市民>営化で、それには信頼と相互扶助が基礎になります。信頼と相互扶助がないと、非民主的なトップダウン型の解決策、専門家や政治家による統治になってしまう危険性があるということです。

最後まで読むと「持続可能で公正な社会」を実現するための、唯一の選択肢は「脱成長コミュニズム」だということに納得できました。稀少性により欠乏をもたらす資本主義ではなく、人間的で潤沢な暮らしを取り戻せる脱成長コミュニズムについて考えていきたいと思います。

あとがき的なところに書かれていた、

ハーヴァード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの研究によると、「三・五%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わるというのである。

とありました。この「三・五%」という数字の実現は難しいようにも思いますが、SNSが発達した現在では難しい数字ではないようにも感じ、とても希望を持てたことも最後に書いておきます。

終わり


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クロネコ@太極拳から学ぶ会
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