たぶん分かり易い!気候変動に関する政府間パネルIPCC第5次評価報告書の超要約版(12)最終回(まとめ、あと書き)
分かり易くと思いつつなかなか出来なかったと思い、最後に簡潔にまとめます。これが本当の超要約版です!
【まとめ】
産業革命(18世紀中頃)以降、大気中の二酸化炭素濃度は増加し続け、280ppmから408ppm(2018年)まで増加した(特に、1950年以降急増)。また、温室効果ガスであるメタン、一酸化二窒素の濃度も増加している。
人為起源二酸化炭素の累積排出量の増加に比例して地上気温が上昇している。1880年〜2012年の132年間に気温が0.85℃[0.65〜1.06℃]上昇している。[ ]は90%信頼区間
気温上昇量の精度に関する課題はあるものの、海水温の上昇、北極・南極圏の氷床面積の減少、春季の積雪面積の減少等も観測されていることから、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの増加により地球が温暖化していることは確かである。
将来の気候変動をシミュレーションするために、4つのシナリオが評価されている。RCP2.6はIPCCが目標とする「1880年から2100年の温度上昇量を2℃未満とする」ためのシナリオで、2020年頃から世界全体の二酸化炭素排出量を低減させ、2070年頃に排出量を実質ゼロにするというものである。RCP8.5は何も対策を実施しない場合のシナリオで、2100年までの温度上昇量がRCP2.6に比べ2〜3℃高くなる。RCP4.5とRCP6.0はそれらの中間的なシナリオである。※RCPについては超要約版(8)を参照下さい。
地球の温暖化による海水温の上昇、氷床の融解等により海面水位は上昇しており、何も対策を実施しない場合、2100年までに80cm程度の水位上昇が予測されている。また、大気中の二酸化炭素濃度の上昇につれ、海洋中の二酸化炭素溶存濃度も上昇しており、海洋の酸性化が進行している。現状のpHは約8.10であるが、2100年のpHは、シナリオRCP2.6の場合が8.05程度、シナリオRCP8.5の場合が7.75〜7.80程度と予測されている(pHは7が中性、8はアルカリ性で酸性化が進むと数値が下がる)。
気候に関する極端現象としては、冬の最低気温上昇、夏の最高気温上昇、極端な大雨の増加、干ばつの増加等が今後更に顕著となる予測である。更に北極圏や海をはじめとして生態系への影響も懸念されている。
【あと書き】
私が子供の頃に比べると、今は空も川も海もきれいになりました。昔は工場や車両からの排気ガス、工場排水等の公害があり、人への健康被害、自然や生態系の破壊等の問題が顕在化し、全ての人が公害という問題を認識していたと思います。
当時の公害と比べると、地球温暖化という問題は一般の人には見え難く、地球規模の大きな問題で対策も容易ではありません。もともと変動している気候と、人為起源温暖化の影響を明確に区別することの難しさもあり、現状でも不確かな部分が多く残っているように感じます。
しかし、正確なことが分からなくてもリスクが存在しているということは明確だと思います。リスクが存在するならば、しっかりと現状を把握して対策を取るしか選択肢はありません。
多くの人は、「地球温暖化という問題があることは知っているが、詳しいことは知りません」、という認識度ではないかと思います。先ずは、地球温暖化に関する分かり易い情報を発信することが必要と思い、「IPCC第5次評価報告書 超要約版」をまとめました。
必要なことを簡潔に分かり易くを目指しましたが、分かり易くというのは難しいものですね。少しでも多くの人に必要なことが伝われば幸いです。
【目次】IPCC第五次評価報告書超要約版(1)〜(12)
*興味のある記事をお読みください。
(1)イントロ、目次
(2)科学的根拠の結論
(3)観測事実(世界の平均気温)
(4)観測事実(海洋の状況)
(5)観測事実(降水、雪氷圏の状況)
(6)観測事実(温室効果ガスの状況)
(7)観測事実(気候の極端現象)
(8)将来予測(気温、降水)
(9)将来予測(海、雪氷圏の予測)
(10)将来予測(気候の極端現象)
(11)将来予測(炭素循環の変化、天候安定化)
(12)最終回(まとめ、あと書き)