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黒田研二
2023年3月31日 07:16
第3章 ゴーステスト(1)1 ひとりの青年が目を覚ました。「ここは……どこだろう?」 青年は記憶を探ろうとしたが、なにも思い出せない。 自分の名前さえも。「俺は……誰だ?」 慌てて起き上がろうとしたが、「ダメじゃ。まだ寝とったほうがええ」 そばにいた老人が声をかけてきた。 うまく焦点が合わず、老人の姿はぼんやりとしか見えない。「ここは……どこです?」「おぬしは宇宙カプセルの
2023年3月30日 07:31
第2章 思いがけない再会(3)2(承前)「テレサに会いに行こう」 真田がいった。「しかし……」 宇宙科学センターの所長が口をはさむ。「この二十年間、地球は平和すぎた。現在、ワープ航法のできる船は地球上にひとつも存在しないが」「いえ、あります!」 そう口にしたのは古代だった。「宇宙戦艦ヤマトが」「……え?」 全員の視線がヤマトに注がれる。 鉄屑同然だったヤマトはネオアルゴンの
2023年3月29日 07:03
第2章 思いがけない再会(2)1(承前) 今から遡ること数日前。 いつもと同じように、母星周辺の宇宙空間に異常がないか探索をしていたテレサは、宇宙気流にのって漂う地球人の遺体を偶然にも発見した。 すぐに地球へ報せなければ。 彼女はニューテレザート星から地球に向けて通信を送った。「私はテレサ……地球の勇者たちよ、応答願います」2 ネオアルゴンの光を浴びて若返ったかつてのヤマト乗組
2023年3月28日 06:44
第2章 思いがけない再会(1)1 沖田の遺体は宇宙空間を漂っていた。 ヤマトが爆発し、海中へ沈みかけたそのとき、波動エネルギーの余波が空に向かって放たれ、沖田を瞬時に宇宙空間へと放り出したのである。 あまりにも一瞬の出来事であったため、そのことに気づいた者はひとりもいなかった。 以来二十年間、沖田は宇宙を彷徨い続けていた。 太陽系からさほど離れていない場所にある銀河系内のとある惑星。
2023年3月27日 07:06
第1章 時の流れ(3)2(承前) 時に西暦2223年。 二十年前の戦いが嘘だったかのように、恒常的に続く平和な毎日。 地球防衛軍は解散となり、それ以来、かつての戦友たちが顔を合わせることはなかった。 古代は航空学校で教官を、ユキは救命救急センターでフライトナースとして働き、充実した日々を送っている。 ヤマトの引きあげを機に再会しないか、と提案したのは宇宙科学省に勤める真田だった。
2023年3月26日 06:44
第1章 時の流れ(2)2 宇宙科学センターの前でひとりの男が立ち止まった。 太陽の光に目を細めながら、古ぼけた建物を見上げる。「懐かしいわね、古代君」 背後から近づいてきたスーツ姿の女性が、男の肩にふれた。「なんだよ、ユキ。その呼びかたは」 古代と呼ばれた男が恥ずかしそうに笑う。 「俺たち夫婦なのに、『古代君』はないだろう?」「だって、そう呼びたくなるじゃない。あの頃みたいに」
2023年3月25日 08:01
第1章 時の流れ(1)1 無限に広がる大宇宙。 美しくきらめく星たち。 そこには無数の生命が息づいている。 物語は、宇宙の片隅に存在するとある惑星の崩壊から始まる。 揺れる大地。 噴き上がる火山。 核戦争がもたらした地殻変動は、この惑星を消滅させるに充分なパワーを持っていた。「早く逃げ……うわあああっ!」 皆を誘導していた若者が、裂けた大地にのみこまれ、瞬く間に姿を消す。
2023年3月24日 08:34
これから紹介する『宇宙戦艦ヤマト 復活編』は、2009年に公開された映画「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」とはなんの関係もありません。僕が中学三年生のとき(1983~84年)に書いた小説です。 1983年に公開された「宇宙戦艦ヤマト 完結編」の続編として描かれたこの物語は、「完結編」から20年後の西暦2223年が舞台。古代進や森雪など、おなじみのヤマト乗組員のほか、死んだと思われていたあんなキャラや