ロールズ入門に最適そうな一冊を発見!


値段のわりに中身がある

 新書なので1000円以下だが、ロールズのコアとなる思想を感じられた気がする(『正義論』「政治的リベラリズム』の双方ともまだ原著も邦訳も未読なので、まだ気がするという段階)

 内容ついては読んでほしいので、特に詳しくは触れない。
 ただ、どういう趣旨でどういう語り口でまとめられている本かをさらっと紹介したい。



『正義論』と『政治的リベラリズム』はロールズの考えの段階的な結実にすぎない

 この本はロールズの関心のうちの変遷した部分と、変遷せずに核心的に持ち続けてきた部分を、ある程度本人&知人の本などの引用など含めて解釈していく本です。

 特に『正義論』から『政治的リベラリズム』への転換は、人によっては異常なほどに振れ幅が大きいように見えるかもしれませんが、少なくともこの本で示されている見方が本当なら、特に違和感は感じなくなるでしょう。

 この本で紹介されている、ロールズへのあるインタビューに対して彼が答えた言葉を引用すればこうです。

「立憲デモクラシーが歴史的に生き残ることに、私は関心があるのです」
「問題はこうなります。立憲デモクラシーにおいて、あらゆる種類の宗教的・世俗的教説が、理にかなった仕方で正義を実現する統治への協働に取り組むことは、いかにすれば可能になるでしょうか」

1998年 リベラルカトリック系雑誌『コモンウィール』のインタビューにて、
記者から、彼の宗教への積極的な対応が印象的だったと言われた時の返答。




つまり、『正義論』も『政治的リベラリズム』もただの手段である

 立憲デモクラシーとは何か?
 宗教的・世俗的な教説とは何か?
 理にかなった仕方とは何か?
 正義とは何か?
 統治への協働とは何か?

 このあたりの擁護の意味するところは、この本を読めば概ね分かると思うので割愛。気になる人は読んでみてほしい。

 個人的に一番意外だったのは彼の『反照的均衡』という概念である。
 私の理解では、例えばこれを原理とその実践に当てはめるとすると、
 それは原理と、それに基づく判断&実践が双方に相互参照することによって(つまり「判断プロセスやその結果などをもとに、原理を修正すると同時に、原理は原理のコンセプト通りに正しく機能しているか、あるいはコンセプトが正しく反映されているかを参照するということによって)正しい均衡地点が導き出される or その一種のスウィートスポットに安定的かつ持続的に留まり続けられる、、、 のような感じの概念である。

 そして、おそらくこの本自体が、彼の「反映的均衡」の歴史と成果(考えの変遷と、『正義論』『政治的リベラリズム』『万民の法』etc..)という目線で作られているように思われる。

 よって、読み進める中で現れる聞きなれない概念も、そこまで読んだ概念を踏まえれば、ロールズがその新しい概念を欲した理由誰にでも理解できる、ということであり非常に分かりやすい。


多数の批判へのロールズのリアクションも含まれている

 ロールズ批判の紹介に割かれた容量の割には、的確な批判がしっかりと抑えられているように感じた。気になる人はサンデルやポッゲ、アイリス・マリオン・ヤングなどの本を当たってみるといいかも知れない。(私はどこかで読みたいと感じた)

また単に紹介だけでなく、「反照的均衡」に基づき、彼がどのように持論をブラッシュアップしたかも書いてあるので、批判の紹介だけでは単に謎が放置される感覚になりそうな点も回避してある。


 ということで、ざっくりとした紹介をさせてもらった。
 「正義」とは何か? について問いたい人は、よければ読んでみると得られるものは多いように感じる。
 


 個人的なロールズの正義論の価値


 なお、ロールズの「正義」観は、晩年の主著『万民の法』にてタイトルを”諸国民”の法にしなかったことには大事な意味付けがある、とこの本に書かれているわりには、国の境目を超えようという気持ちはほとんど感じられないものになっているので(ちゃんとそれについての批判とロールズ的な応答も紹介されているが)、現状の正義論に求められる期待には応えられそうにはないように感じられる(少なくとも直接的には)

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