国際バカロレアって?ケン先生インタビュー(3)
先日、札幌開成中等教育学校の教員である弟ケンにラジオ番組に出てもらってインタビューしました。本エントリーはそのインタビューから抜粋&再編集したものです。
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▼「信じること」の大切さを改めて伝えたい
リエ:最後に伝えたい、大切なことはありますか?
ケ:そうですね。すごく大事で、かつこれからのキーワードだなと思うことがあって。
それは「信じること」なんです。
子どもや生徒を信じる。地域を信じる。環境を信じる。信じて、委ねて、そこで起こることをしっかり見届ける。それができる教育はとても力強いと思います。
大人ができないと思っちゃったことは、子どもはやっぱりできなくなっちゃうんです。子どもたちがやる、やりたいって言ったことを本当に、心底、応援する。かつ、子どもたちが素直に「やりたい」と言える現場になるのも大事。IBの中でも、「StudentVOICE」というのがあって「子どもたちの声をちゃんと拾ってますか」ということが大事な評価基準の一つになってるんだよね。
子どもたちが本当にやりたいことを、自ら声を上げて挑戦できる場所であること。先生や大人が「大丈夫!できるよ!」と子どもの力を心から信じていること。これが大事かなと思います。
リエ:ほんとうにそうだよね。信じ切って、やらせてみて、失敗したときに、そこからどうリカバリーするかを考えればいいんだよね。失敗したらどうするかと、失敗しないようにするというのではまったく違うよね。
ケン:おかしいよね。失敗していいよ、といっている大人たちが失敗したくなくてしょうがなくて。特に教育は失敗が許されない、というプレッシャーもあって。そこは矛盾しているんだよね。失敗が当たり前な場所になれるように、失敗できる挑戦をみんなで考えたり用意できることが大事なのかな。
課題探求的な学習の大事さってそこにあるんだと思います。
正解があると失敗がイヤになるけど、正解を知らなかったら、それは失敗じゃなくてただのプロセス。だれも正解を知らないから、うまくいかなかったら「じゃあ次どうする?」とみんなで話し合える場になる。
こういう場を、生徒も先生も地域もみんなでつくっていくのが大事なのだと思います。
▼編集後記
「歴史学者には認められないような方法で過去の出来事を解釈する自由が芸術家にあるのであれば、これは過去の理解に対する財産なのか、それとも障害なのか」
IBのコア科目と呼ばれる「知の理論」で、出されるテーマの中の一つだそうです。生徒はここから論文を書くとのこと。
こんなの誰も答えなんて持っていないし、大人でもワクワクして、ドキドキしながらもなにか発話したくなる問い。なんてステキなんだろう。
(この問いにワクワクできなかったとしたら、「思考する」という行為を忘れているか放棄しているか、疲れているか、この問いに自分は値しないと自分を卑下しているか、のどれかだと思う)
こういう問いについて、子どもも大人も年代も性別も国籍もなにもかも越えて、わからないなりに、それぞれの経験を基に考えて、それを誰かと共有できたら、なんて豊かなんだろう。
「国際バカロレア」と聞くと、そのキラキラバリバリしたイケてる感じに、日本の片田舎で育った人間にはとても遠い存在・・・みたいな気持ちになってしまうけど、実はそうではなく、人間にとって大切な、深いところにある柔らかいものを取り扱うプログラムなのだなぁと思いました。
そして、それを取り扱える人が、世界で活躍しているのだと思います。
グローバル人材とはなにか、というと、英語がどうこうではなく、クリエイティビティがどうこうでもなく、自分と他人の存在を愛し、さまざまな人や事象の背景を想像できること。こういうことなのかもしれないですね。
それにしても、IBの教育プログラムはすごいなぁと、話しを聞く度に思います。またラジオに出てもらおうっと。
おわり
▼話し手・聞き手紹介
話し手:黒井憲(札幌開成中等教育学校教諭 IBDPコーディネーター)
◎最近のケン
「Next Education Award」(活育教育財団)特別賞受賞
◎ちょっと前のケン
札幌人図鑑(2017年収録)
聞き手:黒井理恵(名寄市高校魅力化コーディネーター)
◎最近のリエ
NoMaps 人口減少下の高校存続最前線
◎ちょっと前のリエ
私だってでてるもんね札幌人図鑑(2016年収録)