「若年層は感染しない」はウソでしょう。

「休校」の措置を政府が発表したことについて議論が起きています。よく見かける論調は「コロナウイルスの重症例・死亡例は高齢者に集中している。子供の重症例は少ない。それなら学校を休校するのは意味がないだろう」というもの。

日本感染症学会のウェブサイト 
ここにある資料では、中国での症例データが紹介されており、たしかに死亡者は60歳以上に偏っているのがわかる。

一方で、厚生労働省が公開している発生状況の情報を見ると、20代以下の感染者の事例がいくつも記載されている。

(厚労省の発表を見るまでもなく、すでに10代の感染者の事例はメディアでも多数報道されています、北海道では小学生の感染事例もある)https://www.hokkaido-np.co.jp/article/395398
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200218/k10012290631000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200228/k10012307151000.html

事実として、10代、20代の子供・若者も新型コロナウイルスに感染しているんです。

そして、厚労省が専門家会議の見解としてウェブサイトで発信しているのは、症状が軽くて感染に気付いていない若年層の感染者がウイルスを広めている可能性がある、ということです。

そもそも、PCR検査法などにより実施されている日本のウイルス検査は1回の検査に時間がかかるため、検査の実施数はあまり多くないのが実情です。さらに現状のウイルス検査は、はっきりした症状(新型コロナウイルスが原因とみられる肺炎などの症状)が出ている人を優先的に検査しているでしょうから、自覚症状のない若年層の感染者はますます見過ごされます

検査の実施状況 地域によって大きな開き 新型コロナウイルス

若年層の感染者は、自覚症状がないために検査を受けることもなく、本人は体調不良もあまり感じていないので外出してしまい、気付かないうちにウイルスを拡散させてしまう、ということになるのです。

これを受けて、北海道では下記のような呼びかけも広がっています

大学生にも協力要請 「人混みなど避けて…」若年層の"隠れ感染者"対策で 札幌市が市内17大学に

"新型コロナ"緊急事態宣言中の北海道「感染源は軽症者の若者」何思う? フィットネスジムも客減少し困惑

北海道に限らず、日本各地で大学なども卒業式などを中止する動きが広がっていますが、これは感染拡大を防ぐ対策として一定の効果があるものと考えます。

専門家会議の見解を引用します。

北海道の皆様ができること
できる限り多くの人々に、次のような行動をとっていただきたいと考えています。
(1)軽い風邪症状(のどの痛みだけ、咳だけ、発熱だけなど)でも外出を控えること
(2)規模の大小に関わらず、風通しの悪い空間で人と人が至近距離で会話する場所やイベントにできるだけ行かないこと(例えば、ライブハウス、カラオケボックス、クラブ、立食パーティー、自宅での大人数での飲み会など
全国の若者の皆さんへのお願い
10代、20代、30代の皆さん。
若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いです。
でも、このウイルスの特徴のせいで、こうした症状の軽い人が、
重症化するリスクの高い人に感染を広めてしまう可能性があります。
皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、
多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。

日本の学校には「学級閉鎖」という措置が昔からあり、これは学校保健安全法を根拠として実施されるものです。感染症(よくあるのはインフルエンザ)が流行した際に学級閉鎖の措置がとられるというのは、多くの日本人にとって経験のあることで、わりと理解できる措置ではないでしょうか。

学級閉鎖をせずに授業を続けたとしても、熱が出ている生徒は学校に来られないのでどちらにしろ授業を受けられない。また、生徒から教師へ感染が広がった場合も、結局は生徒が授業を受けるのが難しくなってきますよね。

にもかかわらず、日本の学校教育はどうのこうのという珍妙な自説を展開したNewsweekのコラムニストがおりました…
「日本は終わりだー」とかなんとか、そんな大衆の不安だけを煽るような言い方をして屁理屈を語ったら、反感を買うのは当然かなという気がします。

また、朝日新聞は「小学生からの投書」と称する怪文書を掲載しておりますが、これがまた誤認識を広めそうな内容。
なぜ休校、ぼくは学校に行きたい
オリンピックは実施するのに、なぜ学校は閉鎖するのか?という文章ですが、このタイミングで休校の措置をとる意味は、まだ感染者が少ない今の段階で感染拡大の封じ込めをはかることにあります。

何もせず感染拡大を許していれば、教師や生徒、その家族に感染が広がり、重症化しやすい年齢層の人たちが感染リスクにさらされ、日本の教育システムを運営している人たちの健康も脅かされる可能性があります。そうなってしまったら、結局は子供たちが教育を受ける機会がもっと損なわれてしまうことになりますね。

あまり目先のことに惑わされず、長い目で見て対応を考えていく必要があるのかなと思います。