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ヨコスカアートセンターが夜の谷戸におりなした空間を体感
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ヨコスカアートセンター
神奈川県横須賀市で地域における芸術での交流を目指して開設されました。多様な芸術と接する場として展覧会、ワークショップなどが開催さています。
(公式HPより)
ヨコスカアートセンターという場をご存知だろうか?
筆者は、申し訳ないが横須賀に住んでいながら存じ上げていなかった。
上記の通り、横須賀という場で芸術によって交流する場が設けられたようだ。
横須賀市でも、行政側が中心となってアートや何かしらのコラボ企画などが展開しているが、こうして個人レベルでも面白い仕掛けを見せていこうとする人がいるのは非常に興味深い。行政とはまた違うアプローチで地域と触れ合っていくのだろう。
こんな試み、筆者が無視するわけにはいかない。
すると、ちょうど良くうってつけの企画が舞い込んできた。
それが、
谷戸の夜を照らす光の行進
長谷部勇人アートパフォーマンス
である。
これは、横須賀の代表的な特徴である『谷戸』地区を、大勢の人間でランタンを持ちながら練り歩き、谷戸地区を暖かな光の行進でほんのりと光らせようという企画である。
その行進の先端にいるのが、名古屋を中心に活躍するアーティスト『長谷部勇人』氏である。長谷部氏が蝋蜜で作ったオリジナルギターを手に先陣を切り、多くの参加者がランタンを持ちながら谷戸独特の急な階段や細い道を通り抜け、最後に谷戸地区内にある『手しごとカフェ』へ辿り着くのである。
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筆者が予定していた時刻よりも少しだけ早めに集合場所へ着くと、既にランタンを持った人が何人かいた。一目で企画参加者だと判断し、声をかけた。
この企画は、ランタンの持ち手となる場合は事前予約が必要だったが、筆者は事前予約を入れていなかった。客観的に見たくて参加者ではなく見学者として眺めていようと考えたのだ。
しかし、到着するなり早速企画者の越中正人氏に「よかったら持ってください」と気さくに提案され、ならばとランタンを受け取ることになった。
しばらくすると、続々と参加者が現れた。
MAX30人だったようだが、そこまでは行かなかったらしいが、20人はいただろうか。
話を聞いていると、自分と同じくタウンニュースの記事を見て来た人がチラホラいたようだ。
参加者の年齢は、見た目からして圧倒的に高い。30代以下の参加者は見当たらない。その谷戸地区住人の年配者も参加していた。
この手の地元情報をしっかりとチェックしている人が年齢層高めに多いという表れだろうか。若い層には情報が届かなかったか。年齢関係なく楽しめそうなだけに、もう少し地元の若い方々にも興味を持っていただけると面白くなりそうだが。
情報をいかに広げるか。これは、行政のそれ合わせて横須賀のイベント全体に感じる印象である。
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時間になると、一団はゆったりと前進を始めた。寂しい灯りを届ける頼りない街灯が見下ろす中で。
さすが谷戸地区である。
自然の厳しさをぶつけてくるように、スタートからいきなり階段である。
しかも、階段の後にまた階段。階段でなくても緩やかな坂。階段途中には幾つもの枝分かれした階段。谷戸の山肌を侵食するかのように伸びている。まるで、豚骨ラーメンに山盛りチャーハンまでつけてくるかのようなボリュームに、予想していたはずなのだがたじろいでしまう。
それでも、ふと谷沿いから海方面に目をやると……
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遠くの方で光に浮かび上がる米軍基地の明かりが見え、景色が楽しめた。これは、横須賀ならではの光景と言えるだろう。
筆者は、以前逸見から塚山公園まで登ったことがあり、谷戸の光景を見たつもりではあったが、このあたりはまた趣が違う。別の世界のようだ。
件の通り、階段に次ぐ階段の世界なのだが、他と違うのはその道の細さ。また、まさにゆったりとした谷の山肌を通っているかのような、すぐ脇まで押し迫る舗装された崖のコンクリート壁。
家々が周囲になければ、それこそ厳しい峠を越えている感覚だったのだろう。昔の人は、よくこのような道を通ったものである。
そうこうしている内に、一団はやがて下り坂を進み、更に細い路地の中へと入っていった。
ゴールの手しごとカフェである。
ここで、渡されていたランタンの火をLEDのそれから本物のロウソクに変え、お店の中へと入っていく。イベント第二章の始まりだ。
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参加者には、カフェに入るなり、それぞれに甘酒が振る舞われた。冷え切った体には有り難がった。
そして、今度は長谷部氏によるパフォーマンス。
ヨコスカアートセンターで事前に募集していた人員により、谷戸地区の光景を写真に収めてもらい、その映像を壁に映しながら、ギター演奏を聴かす。
どこか幻想的で、映像を見ながら音楽に耳を傾けていると、なんだか違う世界に入ったかのような感覚になる。
谷戸の日常的な音も入っていたが、それがまた変に騒がしいわけでもなく、むしろ静けさすら感じるために、余計に現実から離されたかのような気分にさせたのだ。
配られたロウソクのほのかな光がまた、我々をどこかへ導いているようだった。
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演奏後、半分くらいの参加者はすぐに会場を後にしていたが、筆者がもう少し話を聞けないかと様子見していると、カフェの中が少し慌ただしくなっていく。
どうやら食事の用意をしているらしい。
様子からして、打ち上げのような雰囲気だ。
これは、もう撤退すべきかと迷っていたところ、別の人から
「どうぞ、食べていってくださいよ」
と暖かい声がかかった。
結局、筆者もその食事会に参加することになった。
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しかし、これが大正解である。
もちろん、ヨコスカアートセンターの越中氏の話を聞けたことも大きいが、何よりも谷戸地区に住んでいる方々の生の声を聞けたのが大きい。もう40年ほど横須賀に住んでいるが、谷戸に住んでいる人の話を聞くのは正直初めてであった。
家は戦前から住んでいることや、自衛隊の人が下宿していた、昔は横須賀駅のホームまで見渡せた、などなど。
やはり、大きな冷蔵庫を搬入していると、業者に対し「かわいそう」という感情になるらしい。
そんな、谷戸の住人ならではの感覚を聞けたし、また、テレビに映っちゃった、など緩い雰囲気で盛り上がることもできた。
こういう空気感に触れ合えたのもまた、このイベントの醍醐味だった。普段、地元の人と接触する機会が少ない人間なだけに、この触れ合いは大変貴重に感じた。
筆者は、今まで横須賀の中でも印象論・推測などで語る場面が多かっただけに、リアルな声を聞く意味は大きい。細かな相違がかなりあるからだ。中に入って見つめる大切さも実感する。
こういう、横須賀住人が改めて横須賀を楽しみながら再確認できるイベントというのは非常に興味深い試みである。
実際、谷戸に住んでいる人までもが「あの道は知らなかった」と驚いている様は印象的であった。近所が故なのか、意外とすぐそこが見えなかったりするものだ。それだけに、外の視線も交えながら地元を再確認するのは意味のあることだ。
ところで、筆者は、この記事において地域交流の点を強調するように表現していたが、越中氏はそこまで難い空気でやるつもりはないと語っていた。
今後、参加する人は別に地域を知ろう、地域住人の仲を深めよう、更には地域を活性化させようと意識高く真剣に考えるまでもないのだろう。
綺麗な、幻想的な時間の中に紛れていること自体を楽しんでいればいいのかもしれない。
その上で、自然と参加者同士が楽しみながら交流を深めていれば。
そう、その時間・空間に酔い楽しめていれば問題ないのだ。
さて、今後はアートによる表現で、どのような時間・空間が生まれるのか。
今後のヨコスカアートセンターの活動に注目していきたい。
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