化学肥料で育てた野菜は危険で不味い?!
名前は出せませんが「有機肥料で育てた野菜は美味しい、反対に、化学肥料で育てた野菜は美味しくない」というイメージを売りにする農家や自然派食品を扱う店って多いですよね。彼らの主張は本当に正しいのでしょうか?
残念ながら、彼らの主張はウソです。
消費者の中には「有機栽培の野菜=美味しい、化学肥料で育てた野菜=まずい」というイメージを持たれている方が多いようですが、野菜は元気に育った状態で一番おいしくなるように品種改良されています。つまり元気に育った野菜であれば化学肥料・有機肥料を問わず、さらに農薬をかけて育てられたものであっても同じように美味しいのです。
つまり
「化学肥料を使った野菜=まずい野菜」ではないし「有機肥料を使った野菜=美味しい野菜」でもない!元気に育った野菜=美味しいです。
元気な野菜とは
①元気に育つ遺伝的な素質のあるタネ(品種)を使い
②旬(温度・水分・日差しが好適)な時期に
③水分・肥料分などが適切な環境で
④病気や害虫に侵されることなく、育てられた野菜のことです。
その反対の状態にある野菜は不健康で美味しくない野菜と言えます。つまり有機・無農薬栽培であっても美味しい野菜とは限らないのです。
肥料とは何か
肥料とは植物の栄養として利用するために供されたり、土の化学的性質を変えるために施される資材のことであり、野菜を美味しくすることを目的に作られたものではありません。
一部、アミノ酸などの有機物が植物に吸収される事例もありますが、それが野菜の味に与える影響は素人には気付けないほど微細です。究極に美味しい野菜を作る段階では必要な知識かもしれませんが、肥料についての概論を理解する段階では無視していいレベルの話です。
化学肥料や有機肥料を使うのは目的が違うから
化学肥料の特徴
◆値段が安い
◆成分の濃度が高いので少量の散布が十分(高齢者でも作業ができる)
◆成分量が確実なので、生育や収穫量を安定させやすい
◆即効性があるので、効果を微調整しやすい
◆微生物の活動に依存しないので低温期でも確実に効く
◆成分が水に溶けやすいので雨で流れ出して環境負荷の原因となりやすい
有機肥料の特徴
◆値段が高い
◆成分の濃度が低いので多量に撒く必要があり重労働
◆成分が不確実で化学肥料よりも効果が不安定
◆化学肥料では足りない微量成分(鉄・銅・マンガン・モリブデンなど)を補える
◆微生物による分解を経なければ植物に吸収られないので、微生物の活動量(気温・水分量)の影響を受けやすく、効果が不安定
◆ゆっくり効くので散布の回数や手間を省きやすく、乱暴な使い方をしても害が出にくい
◆成分が水に溶け難いので環境負荷の原因となりにくい
このように化学肥料と有機肥料とでは性質に違いがあって、それを理解して適切に使い分ければいいだけなのです。
化学肥料は普段の食事、有機肥料はサプリメント
肥料成分が植物に与える影響の違いは人間の食事に例えることができます。炭水化物・脂質・タンパク質・ミネラルをバランスよく食事からとれていればサプリなんて必要ないですよね。植物も同じです。
化学肥料を中心にあたえて、不足する微量成分を有機肥料で補えば栽培技術としては十分なんです。反対に有機肥料だけで栽培しても栄養が偏ったり過不足があれば植物は元気に育ちません。化学肥料は扱いやすくて即効性があるために使いすぎるが多く、それが原因で病気が出たり味を落としやすいだけなんです。化学肥料も有機肥料も「使い分け」が大事なのであり、正しく使えば化学肥料だからといって味が落ちることはありません。
化学肥料は体に悪いのか?
化学肥料を毛嫌いする人の多くは肥料に含まれる硝酸態窒素を目の敵にしている方が多いようです。なぜなら硝酸態窒素は大量に摂取すると健康被害の原因になることが科学的に証明されているからです。しかも、硝酸態窒素は植物にとって吸収・利用しやすい成分なので化学肥料の成分として広く一般的に配合されています。このことから「化学肥料は体に悪い」と考える人が多いようです。
しかし硝酸態窒素が含まれているのは化学肥料だけではありません。有機肥料が野菜に吸収されるには微生物の働きで【有機物→アンモニア→硝酸態窒素】の順に変換されなければなりません。
つまり有機肥料であっても植物に吸収される物質としては化学肥料と全く同じなんです。大事なことは肥料の種類ではなく肥料の与え方なんです。有機肥料であっても過剰に与えれば硝酸を多量に含んだ危険な野菜になっていしまいますし、反対に化学肥料であっても適切な量を与えていれば硝酸の過剰蓄積した危険な野菜にはならないのです。
硝酸の危険性については、すでに書いた通り肥料の与えすぎが問題なんです。したがって有機肥料だから安全とはいえず、化学肥料で育てられた野菜と危険性は全く変わらないのです。
それでも人工的に作られた肥料や農薬は危険だと思う人へ
化学肥料の他にも、ナチュラル指向な人たちによって農薬・食品添加物・原発などについて健康リスクが色々と指摘されています。
確かに、これらに被爆した場合はリスクが高まることもあるでしょう。しかし「極端に接触しない限りほとんど健康リスクは高まらない」とも言われています。
食品添加物にいたってはカビの発生や酸化を抑えることで安全性が高まったとすら言われています。食品添加物に関して「カビの生えにくい大手メーカーの食パンは危険で、カビの生えやすい町のパン屋が焼く”天然酵母パン”は安全だ」という主張を時々見かけますが、残念ながらこれもウソです。
町中にある小さいパン屋は、狭い作業場でドタバタと職人が動き回ってホコリが舞う中で焼いていて、焼き上がり後もむき出しの状態でショーケースに並べられることが多いですよね。当然ながらカビの胞子が多く舞っていればパンに付着する量も多くなりますよね。つまり、街のパン屋が焼く”天然酵母パン”にカビが生えやすいのは、単に不潔だからなんです。一般家庭で焼かれた手作りパンがカビやすいのも、その家の台所が不潔だからです。
近年のガン患者の増加を「化学肥料や食品添加物の悪影響」として指摘する方もいますが、それらは長寿命化(高齢者ほどガンになりやすい)や乳幼児の死亡率低下、事故死、結核やコレラなどの感染症による死者数が減ったことが影響しているのは明らかで、統計的にも説明が付きます。
「農薬のDDTは危険であり、そのほかの農薬も同じように危険に違いない」という理屈は本当に正しいですか?同じ理屈で「結核やコレラは危険であり、その他の細菌(天然酵母など)も同じように危険である」といえますか?
一度自分に問いかけてみてください。
ついでに言うと、DDTも実はそれほど危険なものではないそうです。少なくとも「貧国においてマラリアの危険が大きい場合」には、安く調達できるDDTが散布されることもあるそうです。
ここまでくれば分かりますよね。人工物でも安全なものはあるし、自然な物でも危険なものもあるのです。人工的な物=不自然=危険に違いない、自然なもの=安全に違いない、という思考停止にならず「自分にとって大きな危険や遭遇する可能性の高い危険は何なのか」を理解してリスクをコントロールすることが大事なのです。
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