見出し画像

『読むミュージアム「肥後古流」』

タイトル:読むミュージアム「肥後古流」
監修:小堀俊夫
ジャンル:茶道、歴史、教養、人物評
発行年月日:2018年5月25日
発行元:有限会社マーズ
備考:

なぜ熊本に利休正統の点前が遺されたのか?
ひたすら変えない、創らない
利休茶の湯を原形伝承し、守り続けたサラリーマン茶人・小堀家の400年!

「肥後古流」は戦国時代、利休切腹後の茶の湯の混乱期に、利休七哲のひとり細川三斎(忠興)が、利休茶の湯をそのまま遺すことを生涯の使命とし、その後、細川忠利が藩主時代の熊本で、小堀家を含む家臣三家に利休茶の湯原形伝承が命じられたことに始まります。そしてその命は400年後の今も熊本で継続中です。
しかし、熊本市民でさえ肥後古流の本当の姿を知っている人は決して多くありません。
その肥後古流400年の千利休、豊臣秀吉、細川三斎、古田織部などの登場人物と歴史、作法、道具、サラリーマン茶人としての小堀家の想い、熊本地震を経た現在の姿までを、肥後古流入門書としてもご覧いただける構成になってます。
「武将の茶」を彷彿とさせる作法「切り柄杓」「右袱紗」なども紹介しており、なぜ熊本に利休の茶の湯の極意が伝承されているのか、そのキーワードだけでも、茶道経験の有無に関係なく、新しい目線で楽しんでいただけると思います。
肥後古流 白水会

有限会社マーズ 公式ホームページ/biblio/本の詳しい紹介 より

感想

 この本の感想を書くにあたって、まず、この書籍を作った有限会社マーズという会社のホームページを覗きました。するとそこには、会社の目的として『全国の博物館や企業ミュージアムのデジタルコンテンツ開発と制作』とありました。コンセプトは『「読むミュージアム」。小さなミュージアムを訪れたように本を読むこと。』だそうです。
 なるほど、最初のページからすべてフルカラー(!)見知らぬ博物館の背景の中に置かれた見出し……これが博物館で言うところのキャプションとなり、1ページずつ、丁寧に展示ケースやパネルの説明文に注目して、私たちはただそれを読んでいく。単純な本のデザインとしても「いかに『読む博物館』を作るか」というところに重きが置かれているように感じますし、とても「デジタルミュージアム」っぽいなと思いました。いや、アナログの本であることに変わりはないんですが(笑)きちんと、アナログの本を現実の、あるいはデジタル上で感じる博物館(美術館)に寄せようと考えたデザイン設計をされているのです。普通に贅沢な本だなと感じます。
 そんな感じの本なので、カラーページに丁寧な解説がぎゅっと詰め込まれた一冊はまさに「肥後古流のミュージアム本」に相応しく、茶道のことは分からずとも受け継がれてきた伝統の素晴らしさ、関わる多くのものは読み取ることができます。肥後古流がどうして他の流派と少し毛色が違うのか? そんなところもしっかり見せてくれます。

閲覧いただき誠に有難うございます。よろしければサポートでの応援よろしくお願いいたします。史跡巡りや資格勉強の資金にさせていただきます。