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3Dプリンターでつくったものを売るときに知っておくこと

3Dプリンターでつくったものを販売したいんだけど…製造物責任とかってどうなるんだろう。 というご相談をいただいたので、noteにまとめました。


外部データをつかう、自分でデータつくるとき

3Dプリンターでモノをつくろう!とすると、CADがなければ設計データをダウンロードしてつくります。また、CADがあれば自分で設計データを作成してからつくります。そこにかかわる「著作権」について。

  • 3Dプリンターなどでつくるためにデータをダウンロードして作る場合には設計データの著作権に留意。(データの利用範囲の確認が必要)

  • 個人的または家庭内という私的利用目的のために3Dプリンターで作るのは、OK

  • 設計データを第三者に配布したりアップロードは違法。

  • 既存のプロダクトをスキャン、トレースして作るのは私的利用の範囲ならOK、ただしスキャンするもの、トレースするものに意匠権があるとNG

  • 著作と意匠がOKでも、同じプロダクトのデータ販売やモノを販売している人がすでにいたら、不正競争防止の違反になる可能性。確認が必要。

武器はつくってはいけない

  • 私的利用でも 武器などの製造はNG

  • 個人使用でも人の生命や身体に対する安全性が求められる分野は要注意
    建築基準法、食品衛生法 などの対象商品

知的財産に関する権利

3Dプリンターでつくったモノの「意匠権」とか、はじめて考えられた機構で新規性がある!ときの「特許権」「実用新案権」などは?

  • 従来の知的財産権と考え方は同じ

  • 外観のデザインには意匠権での保護が可能。申請・審査・登録が必要。申請費用、権利を維持するのに費用がかかる。

  • 3Dプリンターでつくったもので、「実用品」は著作権では保護されない。

  • 少量生産のファブ商品が、従来通りの意匠権での保護か、著作権でも保護されるかどうかは、基準が不明確。(判断がわかれる)

製造物責任

ここがけっこうハードルがたかい「製造物責任」。つくったもので、怪我をされたとか考えたくないけれど、作り手として責任が発生します。
製造メーカーとして販売するときにPL保険にはいったり手続きがいるのかどうか、判断がわかれるところ。

  • 3プリンターでつくったものでも「製造」とみなされると製造物責任が問われる場合がある

  • 製造物に関する責任:「業として」製造・販売した者が製造物責任を問われる。

  • 「業として」は、無料か有料かどうかが基準ではなく、同じことを繰り返しているかどうかが基準。近所の人にタダで配っても何回もになると製造物責任を問われる可能性がある

  • 1回のみの個人利用でつくって配るなら製造物責任には問われない

  • ブランド名をつけたり、名前をつけたりすると「製造業者」になる

「製造業者等とは」
①業として製造、加工、輸入した者
②製造物に氏名等を表示した者、製造物に製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
③実質的な製造業者と認めることができる氏名等を表示した者

  • 3Dプリンター用のデータ販売は、「製造物」にならず、製造物責任には問われない

  • 3Dプリンターでつくったものが、商品としてのテストするための商品、限定的な使用の場合は、使う人に「β版」「未完成品」「テスト品」とわかるよう表示して配る。事前に事故防止・回避するのに必要な情報を提示するのであれば、製造物責任法上の欠陥とされない場合がある。

品質保証・品質基準に注意

販売するときは、製造物責任に加え、品質保証・品質基準も必要です。

  • 品質保証の性能評価などどこまで必要なのかは未定

  • 法令によって品質基準が必要なものについては、3Dプリンターでつくったものも同様。基準を守らないと販売・流通させることはできない

3Dプリンターでつくったものの保証、検査をしてエビデンスを獲得する。って難しい。法令による品質基準が必要な製品群については…3Dプリンターでつくったものを販売するのは難しい。(と…私は現段階では考えています)

だれかに依頼して作ったものを販売するときの注意

自分の3Dプリンターで作ったものを販売するのではなくて、だれかに(有償でも無償でも)3Dプリンターで作ってもらったものを販売するとき

  • 製造先が製造物責任がかかる可能性がある。販売用だということを製造先に伝える。

  • モデル製作会社は「試作品」を依頼れたと考える。品質管理も違うので、注意が必要。

小ロットだからモデル屋さんだよね! と、モデル会社に依頼すると、「試作品」として作っているので「製造物責任」の範囲外ですよ。と思われていることもあります。お互いの意識にズレがある場合もあり確認が必要です。
つくった人は、無償で配布するのでもたくさん配れば「製造物責任」を負うことになります。販売したい。配布したい。と考えているときは、製造先にそのことを必ず伝えることを忘れずに。
以前、試作会社さんに「これ、販売しないですよね!配布しないですよね!」ときかれたことがあり…垣根がとけてきているなー。を実感。

まとめ

まだまだ、権利や製造物責任などは、実世界の「小ロット」「FAB社会」に法整備がついていけてない。というか議論が進んでいないな。と思います。
自分でデザインしてつくったものを販売する。って とても楽しいことです。喜ばれたときの笑顔は、何物にも代えがたい!
そして、その「商品」がながいあいだ「使われる」そして、最後は「廃棄」される。ことまで考えてモノをつくっていければ、素敵ですよね。


詳しい内容は
平成27年(2015年)に総務省が ファブ社会に向けての 法・社会制度に 関する手引きへ

https://www.soumu.go.jp/main_content/000361196.pdf

https://www.soumu.go.jp/main_content/000361195.pdf

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黒田弥生/プロダクトデザイナー
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