かけがえのない、大切な〜本のひととき〜
「あの人の宝物 人生の起点となった大切なもの。16の物語」 大平一枝
あとがきにこうあった。
「人生の指針では大ぐくりすぎて失礼。そこで大切な宝物を尋ねることにした」と。
宝物、と声に出すと口元がほころぶ。
単なるモノをはるかに超えた、自分の大切な何か。
人生と切り離せないそれは、人生そのものかもしれない。
宝物にまつわるエピソードを引き出した著者の手腕も素晴らしかった。
語っているうちに紡ぎ出された糸を、するすると丁寧に巻き取って、手のひらに、心にそっとおさめる。そんなイメージ。
文末の「心のひきだし」はどれも心に響いた。手帳に書き留め、私の宝物に思いを巡らせる機会となった。
始まり。ささえ、よりどころ。帰る場所。
一言では表せない大事な思いがあちこちにつまっている。