目に見えないもの、それは〜本のひととき〜
「〈きもち〉はなにをしているの?」文・ティナ・オジェビッツ 絵・アレクサンドラ・ザヨンツ
新聞の書評欄で見つけた絵本。
不思議な生き物がユーモラスに、おどけた表情で表紙に収まっている。
"きもち"たちは、おもてに出てこないとき、何をしているんだろう?
この「おもてに出る」とは態度や表情に現れること?
「出ない」のはその人の内側のイメージ?
そもそも気持ちって目には見えないものだ。
はっきりとした形もない。
名付けられてはいるけれど、それがぴったり当てはまる言葉かどうかは難しい。
ひとことじゃ言い表せない、伝えきれないのが気持ちだと思っている。
この本には、そんな複雑な〈きもち〉が生き物のように動くさまが描かれている。
森絵都さんの訳は、膝を打つような表現が秀逸。
例えば…(色部分は引用です)
〈こうきしん〉はどこまでもよじのぼる
止まることのない好奇心。彼はどこまで行くのかな…
〈よろこび〉はトランポリンでとびはねる
こういう気持ちの時ある!一人の時なんかに脳内でワーッとなるようなテンションが上がる瞬間。
〈やすらぎ〉は、犬をなでる
仕事で疲れたり落ち込んだとき、実家の犬をよくなでていた。ただそれだけなのに心が安らぐ。
そばに犬がいない今は、外で犬に出会うと目を合わせ、撫でさせてくれそうなら片っ端から挨拶して近づいている。
先週はコーギーと柴とゴールデンレトリバーを撫でさせてもらった。
ひとはいろんな〈きもち〉で出来ている。
ポジティブだけじゃない、暗くてジメジメしたきもちも存在する。
にぎやかでさわがしい。
その中に今のきもちが見つかるかもしれない。
感情に振り回された時に、そっとページを開きたい一冊。