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またひとつ消えていく
数日前のことだ。
地元の書店が来月はじめに閉店するというニュースを目にした。
ネットで流れてきた記事だったので半信半疑。
買い物ついでに前を通ると、確かに閉店のお知らせが貼り出されていた。
書店が減少しているのは、ここ数年のことではない。本を気軽にネットで買えるようになった。わざわざ足を運ばなくても自宅に届くし、ポイントだって貰える。欲しい本を好きな時に。
地域の書店が後継者不足で店を閉じ、大手の書店が都市部に集中する。
書店がない街があると聞いた時は心底驚いた。
私が子どもの頃は、街に数軒の書店があったから。大抵個人経営で、ハタキを持った怖いおばちゃんが店先にいたりした。
絵本に雑誌に文庫本。好きなマンガの新刊が出る日は開店が待ち遠しくて。
書店は私の日常に溶け込んでいた。
毎日訪れても飽きない、そんな場所だった。
地元の書店の話に戻る。
この街に引っ越してきた14年前。パン屋と珈琲屋と書店が揃ってるなんて!と狂喜乱舞した。
ビルの3階までが書店。
雑誌に文具に書籍、すべてが揃っている。
用事がなくても棚の間を歩き回れば、気になる1冊が見つかったものだ。
書店の喜びはこれだと思う。
ピンポイントで本を手にするならネットで構わない。でも書店には偶然の出会いがある。
「セレンディピティ」って言うんだっけ?
ふとした出会いが人生を変えることもある。
無意識で選んだものかもしれない。
でも予定調和でない選択は、驚きと喜びを連れてくる。
20代のはじめ、書店員だったことがある。
担当は自然科学とコンピューターだった。
好みの分野ではなかったけれど、本に囲まれる日々は楽しかった。
バックヤードを知れたのも得難い経験だと思っている。
またひとつ好きな場所が消えていく。
後には何のお店が入るんだろう。
これで私の街には書店がなくなった。
隣駅にはある。
自転車で行ける距離だし、行動範囲だ。
でも「用事がなくてもふらりと訪れる書店」とは違う。
さみしくなるな。